『あなたが居れば大丈夫!』 (その7)
【(三)○○○姉さんに花束を♡】
『あなたが居れば大丈夫!』
(その7)
7、
「それにしてもこの異常なデカさは何なの?『野槌』なんて大きくたって精々 5、6メートル ぐらいじゃなかったっけ?」
ななつ が『野槌』から距離をとり観察しながら語る。
ここのつ も廻り込みながら思考していた。
「大昔から八百八狸の住人たちが常に強力な妖力で封じていた。と言っていたな。もしかすると、その妖力を吸収して巨大化している可能性もあるな」
「それはありそうだわ。物事には加減ってものがあるのよ。何でもかんでも全力でやりゃあ良いってもんじゃ無いのよねえ」
私は高台になっている岩の上に飛び乗り、巨大な体躯全体を見渡してみた。
ここのつさん が、小手調べに軽く右手から光弾をぶち当ててみると貫通する事なく弾いてしまった。
「なるほど、体躯のヌメリが光系の攻撃は弾いてしまう様だな」
結果を想像していたらしく特に動揺もなく観察を続けた。
「ならば、これかな?」
私は、『野槌』が居る地面から砂混じりの風を巻き上げて体躯のヌメリを削り落とした。それを見ていた ななつ が姉ゆずりの光弾をその場所に叩き込んだ。
コレは成功して体躯の表面に裂傷をつける事は出来たものの、貫通まではしなかった。
怒った『野槌』がドシンドシンとバウンドしながらこちらに体躯を叩きつけて来たので、余裕で回避。
行動が鈍い。素早く動き回るのは苦手なのか、或いは目覚めたばかりなのでまだ動きが緩慢なのか…。
さて、決定的なウィークポイントが判らない。どう料理してやろうかと考える。ん?料理?……良し、コレならどうかしら?
私は砂を薄い鋭利な板状態にして(つまり、包丁よね)胴体に突っ込ませた。良し!表面に喰い込んだ!しかし、内部までは到達しなかった。
どうやら、表皮の下の硬さは尋常では無い強度があるらしい。
それにしても、先ほどから見てるとやはり動きが鈍い。
『野槌』の攻撃で警戒すべきは、体躯を使った叩きつけと、前部の巨大な口による噛み付き及び飲み込みなのだが、今のところまださほど動きが活発化していない印象がする。
先ほど鎌鼬のリーダーが放った魔薬とやらの効果は発揮されていないのでは無いだろうか?
そもそも、その魔薬って何なのだ?そんな物を彼はドコから持って来たのだろうか?!
私たちが対応を考えるため一箇所に集まった時だった。『野槌』の動きが止まり背中に亀裂が走り光が溢れ出したのだ!
それは、先ほど鎌鼬のリーダーが放ったモノからほとばしった『おぞましい光』だった!!
そして大絶叫をあげながら『野槌』の割れた背中から突如『巨大な何か』が現れた!!
驚いてそれを見つめた私たち3人の目に映ったソレは、
「『鬼神』だとっ!?何でそんな者がこんな場所に封印されていたのだ?」
ここのつさん が声を荒らげるのも無理はないわよね。
『鬼神』それは本来、こんな地上に存在するはずが無い怪物だもの。天空か、或いは地獄に棲む荒神様なのよね。ただし、一応『神』扱いではあるけど、その粗暴さから確か『妖怪』や『あやかし』に近い者とされているはず。
とはいえ、神を名乗るだけあってそのチカラは凄まじい。私たち3人で勝てるかどうかは判らない。
「なるほど、八百八狸が封印していたのはコッチだったわけね。『野槌』は地下深くで封印されていたアイツを餌として腹の中に入れていただけ。つまり、だから動きが妙だったという事か…」
しかも、今私たちの前に居るそいつは『野槌』の体内で八百八狸の妖力を浴び続けていたためか、通常よりも巨大で体躯が10メートル近くもある変異種だ。
「砂かけ姉さん、やたら落ちついてますけど、コレはもの凄くマズい状況なのでは!」
ななつ は動揺しまくってるね。強い敵を前にして動揺するなんて、まだまだ甘いわねえ。
と、3人で話しているそこへ『鬼神』が奇声をあげながら踊り込んできた。
私たちは余裕で3方向に飛んで『鬼神』の攻撃から逃れた。
「確か『鬼神』って神に近い『あやかし』なんですよね?何でこんな力まかせで単調な攻撃してきたのでしょうか?」
ななつ の指摘には私も同意だ。
アイツの動きは何か可怪しい。
現に今も『鬼神』は狙った相手が視界から突然消えた事に理解が追いつかいのか左右を首を振って探している。
「これは勝機かも知れない。どうやら鎌鼬リーダーの放った魔薬は『野槌』では無く、アイツが喰らった様です。つまり今のアイツは『鬼神』本来のチカラを出せずに暴走状態なのでしょう」
あの魔薬とやらの効力がどの程度のあいだ続くのか判らない。
ここのつさん の言う通り、今がチャンスという事ね!
私は以前『がしゃどくろ』に使った強固な鎖を出現させて『鬼神』の両腕と両足を拘束した!
「ここのつさん!ななつ!二人で一箇所に最大パワーの光弾をぶつけてみて!」
二人は目で合図して右腕を突き出し光弾攻撃を連射し始めた。
背中から攻撃を受けた『鬼神』は絶叫をあげながら両腕の拘束を外そうともがく。
「やらせないわ!」
私は両腕を突き出し白狐姉妹の攻撃と同じ位置に全力パワーの砂ツブテを叩き込んだ!
3人の集中攻撃を受け続けた『鬼神』の身体が徐々に真っ赤になっていく。…しかし、なかなか倒しきれない。
これだけの攻撃を受けても、まだ耐えるの?どれだけタフなのよ!!
そして遂に両腕を拘束していた土の鎖が弾け飛んだ。
続いて両足の拘束も破壊されてしまった!マズいっ!!
「き、さ、ま、ら、ああぁ!」
たどたどしい発音ながら『鬼神』は明確な言葉を発してコチラを振り向いた。
しかし、身体にはかなりのダメージを受けた様で瀕死状態だった。
あとひと息で倒せるはず!!
だが、私も白狐姉妹も全力パワーで攻撃していたのでエネルギー切れ寸前で、その『あとひと息の攻撃』が出来ない…。
あぁ、コレは駄目かも知れない。
と、思ったその時だった!




