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『あなたが居れば大丈夫!』 (その6)

【(三)○○○姉さんに花束を♡】


『あなたが居れば大丈夫!』

(その6)


6、


★(時は『鎌鼬』の拠点に皆んなが突入する前まで遡る)


『貉』に案内されてやって来たのは、この集落の里長の家らしい。


私たちが家に入ると二人の『化け狸の少女』が出迎えて来た。


「ムジ兄ちゃん、ユウキお姉ちゃんお帰り〜。あれ、お客さん?」


人間で言うと中学生くらいかな?

たぬちゃんを少し幼くした感じの小柄な女の子たちだ。


「あ、このお姉ちゃんたちって、ユウキお姉ちゃんと一緒にあの公園に居た人たちかな?」


ん?私たちの事を知っている?

…あぁ!もしかすると、あの時、最後に現れてユウキの両腕を掴んで消えて行った二つの影の正体がこの娘たちだったの?


そうか。ユウキが無理やりに腕をほどこうとしなかったのは、自分の腕を掴んでいるのが小柄で細い腕の少女だって気がついていたのね!……まぁ、その辺のアレコレはこうして無事にユウキと再会できたから良いか。


で、私が彼に詳しい話しを聞こうと改めて顔を向けると、それより早く たぬちゃん が彼に大声で詰め寄った。


「ムジ兄さん!!これはいったいどういう事なのですかっ!あの公園での『黒い影姿の妙な小芝居』は何だったのですっ?!」


やっぱり たぬちゃん 、彼と面識があったのね。頑なに『彼』呼ばわりしていたから、変だな?とは思っていたのよ。


「えと、とりあえず落ちついてくれるかな、たぬちゃん。全部順を追って説明していくから、ほら、子どもたちもビックリしてるからね!」


たぬちゃん が振り向くと、子だぬきちゃんたちも二人の少女もポカンとしていた。

かく言う私も、いつも落ちついて居るたぬちゃんが珍しく感情的になっているのに、チョイびっくりですわ。


「ねぇ、たぬちゃん。あなたとその貉の彼、…ムジさんって言うの?とはどういう関係なの?単なる顔見知りって感じゃないわね」


「ええ実はそうなの。この人は砂かけちゃんが私たちと暮らしていた森を出て行った少し後くらいに、弟さんと二人で移住して来たの。でも、人間たちが土地開発で森にやって来る様になった頃に直ぐ出て行っちゃったから会ったのは久しぶりなんだけどね」


「僕と弟は大の人間嫌いなんだよ。たぬちゃんが暮らしていた森に来る前に住んでいた山も、人間たちの土地開発で追い出されたからね。で、あの森を出た後に僕と弟が辿り着いたのが、この八百八狸の隠れ里だったんだ」


で、ここからが説明だと前置きしてから話し始める。


「今この場所で起きている事件を解決するために仕組んだのが、あの公園での出来事なんだよ。

僕の幻術では力不足だったんだ。

だからチカラの強い『あやかし』の協力が欲しくて誰か居ないものかと調べると、僕の弟を捕らえた強い『あやかし』の白狐の妹さんが、珍しくアパートに定住している事が判った。兄の僕が言うのも変だが、弟は凄腕の幻術使いだ。その弟を捕らえられる白狐がチカラを貸してくれれば心強いと思いました」


ここで彼はチラッと ここのつさん を見る。彼は、本当は妹では無くて彼女に頼みたかったのかも知れない。つまり、事件の真相はここのつさん の予測とは真逆だったわけね。

いや、結果的にこうして ここのつさん が今この場に居るのだから、全て彼の思惑通りになった事になるのか…。


「たぬちゃん も使いこなしている異空間を繋ぐチカラで監視の目を欺き、隠れ里から出て協力を頼みに住んでいるアパートに赴くと、ちょうど彼女はユウキさんと出掛けるタイミングだった。

後を追いかけて座っていた出先の公園で話しかけようとしたのだけど、人間がやたら多く居たからね。ちょっと脅かして出ていってもらおうと大掛かりな幻影を見せたんだ。頃合いを見て落ちついて話せる様に公園を結界で囲ったんだけど、予想外に逃げ遅れた人間が残ってしまっていた。

だから、公園でのあの黒い影や小芝居は人間に姿を隠すためにした苦肉の策だったんだよ」


チラッと たぬちゃん を伺うと、明らかに呆れているわね…。


「しかし、僕がモタモタしている内に たぬちゃんや皆さんが来てしまった。落ちついて話す状況では無くなってしまったので、かなり強引ですがユウキさんを連れて来てしまいました。そうすれば必ず追い掛けてこの場所まで来ていただけると考えたのです。

ちなみに、追い掛けて来た天狗族の方には、僕たちがこの隠れ里に逃げ込む姿を意図的にお見せしました。そうでないと行き先が判らないですからね」


なんか、色々とやり方を間違えてるなあ。と思ったのはたぶん私だけじゃ無いよね。

ななつ に用事があるなら普通に一言声をかければ良かったのに。

おそらくだけど、この人は極度の人間嫌いを含めて、他人と接触するのが凄く下手くそなんだろうな。

だから、こんな大げさな事態になっているわけか。


「色々と事情がある様だが妹の事はともかく、先に私たち白狐の協力が必要だと言う現状についてお聞きしたい。

今、この隠れ里では何が起きているんだ?何故子どもしか居ないのか?そして、先程の「鎌鼬」についても説明してもらえるかな」


ここのつさん が会話に割って入った。そうだね、公園での云々を追及するより、今は先に片付けるべきはこの隠れ里で起きている事よね。


「この隠れ里の地下深くには凶暴な『あやかし』が封印されているのです。遠いむかしに四国から渡って来た八百八狸たちが、当時この森に出現し猛威を振るったソイツを、全員がチカラを合わせた強力な妖力でもって地下深くに封印し、再び目覚め無い様に今現在も妖力を注ぎ封印を続けているのです。この隠れ里はそのために築いた場所なんだそうです」


ここのつさん の顔色が変わった。


「ちょっと待ってくれ。なぜ遠い四国の地から渡って来た八百八狸が、自分らと関わりの無い場所でそんな事をしているのか判らない。しかもその封印を現在も続けているのは何故なのか?」


「八百八狸たちが渡って来た当時、この場所には小さな村があったそうです。八百八狸たちは『あやかし』である事を隠し人間としてその村を訪れ、そして村民として受け入れられ共に仲良く暮らしていたらしいのですが、そんな村を突然襲って全滅させてしまったのが現在も封印され続けているソイツです」


村一つを全滅させるほどの『あやかし』って何者なの!?

まるで「がしゃどくろ」レベルじゃないの!


「もちろん、八百八狸たちは『あやかし』の妖力を使い応戦したらしいのですが、ご存知の通り化け狸のチカラは相手を化かす術なのでトドメを指す事までは出来ずに、何とか封印するのが精一杯だったという事です。そして、多くの村人や八百八狸の犠牲者が眠るこの地を離れずに今も封印を続けているのは、そのためです」


「それで『鎌鼬』はこの隠れ里に入り込んで何をやっている?」


「奴らは、その凶暴な『あやかし』の封印を解いてこの隠れ里を壊滅させようとしています。そのため強制的に里の住人たちを使い発掘作業をさせているのです」


「仮にも八百八狸であろう?『鎌鼬』は厄介な連中ではあるが、八百八狸の幻術ならば撃退するのは易いと思うのだが?」


「それが、常に封印に膨大な妖力を使っているので『鎌鼬』の撃退に回すほどの余力が無いらしいのです。そのうえ、今ここに居る子どもたちを監視して従わなければ一人ずつ始末する。と脅している様ですね。…まぁ、その監視役は今さっき処理していただきましたが」


「あの、一つ疑問があるのですが、何で『鎌鼬』はこの隠れ里を壊滅させようとしているのです?」


たぬちゃん が質問する。


「むかし、八百八狸は四国に居る敵対勢力を幻術を駆使して追い出してしまうという事をやりました。きつね種族との抗争が最も有名ですが『鎌鼬』もその中に居たそうです。

現在は八百八狸ときつね種族とは和解していると聞いていますが、『鎌鼬』は未だに恨んでいてその矛先をこの隠れ里の住人に向けたワケです。ちなみに、この隠れ里に住む住人たちは、他種族との抗争を嫌い四国を出て来た者たちなのだそうで、つまり本当の意味では無関係な存在なのです」


「う〜ん、色々めんどくさい事になってるわねぇ。

他種族間での争い事に首を突っ込むつもりは無いけど、こんな可愛い子どもたちに辛い想いをさせるのは私個人としてはちょっと、…いや、かなり許せないかな」


私は自分の素直な感情を口にした。私と目を合わせた たぬちゃん も同じ気持ちらしい。


「ねえユウキおねえちゃん、ママやパパが帰ってこれるの?」


それまで黙って聞いていた子だぬきのひとりがユウキに聞いた。

ユウキはその子の前にしゃがみ目線を合わせてこう言った。


「うん、このお姉ちゃんたちは凄く強いからね。悪い人たちを懲らしめてママもパパも帰れる様にしてくれるわよ」


はい!決まりました!

私たち、凄く強いお姉ちゃんたちは悪い人たちを懲らしめてやりましょう!


ここのつさん、ななつ、たぬちゃん、皆んな良い顔でうなづいた。





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