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『あなたが居れば大丈夫!』 (その5)

【(三)○○○姉さんに花束を♡】


『あなたが居れば大丈夫!』

(その5)


5、


ここは『八百八狸の隠れ里』から少々離れた山奥の森の中。

おそらくこの場所が『あやかし』の封印されている地点なのだろう。

直径20m程度の大きな深い穴が掘られ、その奥底では30人ほどの隠れ里の住人(全員人の姿をしている)がスコップで掘り返す作業をしていた。

その様を見ると、男女や高齢者など関係なく全員泥だらけでヨレヨレの酷い有り様だ。


側には『鎌鼬』本態の姿を現して監視をしている者が3人(3匹?)立ち、目を光らせている。

そして作業の手を休める者には容赦無く斬りつけている。

『鎌鼬』の鎌で斬りつけられると当然ながら傷口から出血するが、しかし瞬時にその傷口は跡形も無く治癒してしまい、流れ出た血も出血した分だけ回復するという不思議な特徴がある。つまり、斬りつけられた者は「痛みと出血」を何度も味わいながら作業を続けなければいけない事になる。


しかし、どんなに傷口や出血が回復しようと、削られて行く体力までは回復しない。

穴底の片隅には、そうして動けなくなった住人が数人うずくまっていた。彼らは『あやかし』である特性上、時間が経過すると体力が回復する。そしてまた、作業に回される事になるワケだ。


こういった状況は、彼ら『鎌鼬』が隠れ里に侵入して来てから既に10日続いている。


穴の上には切り倒した木材で簡易な建物が造られ、住人たちはそこで質素な食事を与えられ寝泊まりさせられていた。

「貴重な労働力なので殺してしまう様な事はしない」という理由なのかも知れないが、全ての作業が完了した後に住人たちがどう扱われる事になるかは判らない。


その建物の横には住人たちの寝処とは比べられない程しっかりとした小屋が建っている。

これは元々この場所に住んでいた住人の家だ(もちろんこの家の住人も今は穴掘り作業に回されている)


家の中では、この『鎌鼬』集団のリーダーと数名の幹部たちがふんぞり返って談笑していた。


彼らは通常時、人間の姿で生活しており『あやかし』本態で居る事は滅多に無い。それは人間世界に潜み暗躍活動するためであるのだが、しかし、ここ八百八狸の隠れ里ではその必要が無いためか全員『鎌鼬』本態の姿を見せていた。


そこへ、小屋の扉を開け穴底の監視をしていた部下が飛び込んで来た。


「リーダー、どうやら目当てのブツを掘り当てた様ですぜ。確認してくだせい!」


しかし、リーダーは動かない。


「おお、そうか!それは何よりだな!………で、お前さんはどこの誰さんなのかな?」


リーダーの言葉を聞いた瞬間、幹部たちは一斉にその部下を取り囲み、鎌の切っ先を向けた。


「あらまぁ、やっぱり判っちゃいましたか♪」


部下の姿は一瞬で 『化け狸状態のたぬ』 の正体を現した。


「ふん、判るも何も、お前さん始めから正体を隠す気も無かったじゃねえか。なんだその『化け狸』の妖力全開なのはよ!」


リーダーは立ち上がり たぬ に近づいて部下たちと同じ様に鎌の切っ先を向けた。

が、彼女は全く動じる事も無くリーダーの目を見つめていた。


「あなたたちがこの隠れ里に住む人たちにどれ程の恨みを感じているのかは知りませんし、理解しようとも思いません。ですが、あなたたちがこの隠れ里で行なった行為を私は許す事は出来ません!」


「ほう、なかなか気が強いお嬢ちゃんじゃねえか。で、どうやって許さないんだい?」


「はい、こうします!」


彼女がそう言った瞬間、リーダーの背後の空間に亀裂が入り白狐モードのここのつが飛び出し取り囲んでいた幹部全員を打ち倒した。

もちろん殺しはしていない。彼女は器用に全員の急所に当て身攻撃をしただけだった。


「なんだ、もっと手強いのかと思ったが大した事も無かったな。どうやら全力モードが無駄になった様だ。やはり『鎌鼬』は突風に乗って不意打ちするぐらいしか出来ないらしいね」


ここのつ は美しい9本の尻尾をリーダーに見せつけている。


「言ってくれるな。ではご希望に応えてやるとするかなっ!」


突然、リーダーの周囲に突風が巻き起こり、ここのつ と たぬ の身体が小屋の扉ごと外に投げ出された。しかし、そこに立っていた 砂かけ が咄嗟に柔らかい砂のクッションを造り難なく二人を受け止めていた。


「なるほどな、まだ仲間が居たのか」


小屋から出て来たリーダーが周囲を見渡すと、底部で住人を監視していた部下たちが全員穴の横に気絶した状態で寝かされていた。

その住人たちも全員穴底から引き上げられ、ユウキと貉の二人に介抱されている。

そして、その前では ななつ が仁王立ちをしてこちらを睨んでいた。もちろん彼女も白狐モードで7本の美しい尻尾を拡げている。


「ちっ、揃いも揃って使えねえ部下どもばかりか。仕方ねえな、まだ状態の確認はしてないがもうイケるだろう。ほらよっ!」


リーダーは何かを懐から取り出して地面に叩きつけた。

すると、その叩きつけられ砕けた物体からおぞましい光がほとばしり、その光はまるで生き物の様に動き穴の中へと消えて行った。


やがて辺りに静かに、そして徐々に大きく鳴動が響き渡る。

地上に居る全員が「何事か?」と顔を見合わせる。さらに鳴動が不気味に激しくなり、そして、そして!遂にその正体を現した!!


その穴から全身を震わせながら這い出て来たのは、全長30mを越す長く太い体躯の考えられない【超巨大サイズの『野槌のづち』】であった!!!


住人たちから悲鳴があがった。

自分たちが封印していたモノが、まさかこんな化け物だとは思いもしなかったのだ。


「これは『野槌』なのか!?しかし、こんな巨大な怪物が居るワケが無い!」


これには『九尾の狐』である ここのつ も驚愕するしか無かった。


「はっ!コイツは凄えや!まさかこんな怪物が出て来るとは想像もしてなかったぜ!さっきの光は『あやかし』の精神を狂わせ暴走させる魔薬ってヤツさ!ま、せいぜい頑張って遊んでくれよな!あばよ!!」


そう言って逃げ出そうとしていたリーダーの前に たぬ が立ち塞がった。


「言ったはずですよ?私はあなたを許しません!」


彼女が右手を天空に上げるとリーダーの真横の空間に亀裂が走った。そして彼の抵抗も虚しく中へ引っ張り込まれてしまったのだった。



ーーーーーー


彼が気がつくと、自分の周囲は剣の切っ先を向けた烏天狗に囲まれていた。それは先程自分たちが化け狸の彼女にした事と同じ状況であった。

そう、彼女がリーダーを送り込んだ場所は『天狗族の隠れ里』!

もちろん、大天狗が座する部屋のど真ん中だ。


そして、リーダーに続き次々と気絶している鎌鼬の部下たちも送り込まれて来た。(たぬちゃん、容赦無し)


「大天狗様、我らも八百八狸の隠れ里へと急ぎ応援に駆けつけなければ!」


八百八狸の隠れ里での出来事は、隠れ里に突入する際に たぬ が開けた結界の穴から密かに侵入させていた偵察用のカラスの目を通して天狗族も確認していたのだ。


しかし、大天狗は「待て」と止めた。烏天狗の討伐の職務は『あやかし』が人間に害を及ぼす場合に限られるのだ。

これはかつて天空の神々と天狗族との間で交わされた約束事。

今回は、言ってみれば『あやかし同士の抗争』なので、天狗族が介入する理由にならない。


無論、大天狗としても見過ごせない事態ではある。あんな規格外の怪物が存在していて良いワケが無い。が、一つだけ光明をも感じていた。


現場に居るのは、あの『砂かけと白狐の姉妹』なのだ。烏天狗の大部隊より遥かに強力な実力を持った存在が対峙しているのだ!


大天狗は彼女たちに全てを託す(苦渋の)決断をした。


「頼むっ!何とか無事に収めて欲しいっ!!」


大天狗は、かつて神々と交わした約束事を呪うのだった。


ーーーーーー


「あらまあ。想像を超えたヤツがお出まししたわねえ。ま、何が出て来ようと初めっから放置して帰るつもりは無いけどね!

とりあえず、私たち3人居れば何とかなるでしょう!」


私がそう言うと、白狐の姉妹も笑みを浮かべて「当然!」と返して来た。


「たぬちゃん!早く皆んなを子どもたちの処へ連れて行ってあげて!ユウキ、そして、貉の二人も一緒に行って皆んなをサポートしてあげてちょうだい!」


「お姉様!……判りました。ここのつさん!ななつ!ご武運を」


「安心してください、ユウキ嬢。デカいだけでは、私たちに傷一つ負わす事など出来ません故に」


「ユウキ、後でいっぱいゴメンするから少し待っててね!」


皆んなが、たぬちゃんの構築した「どこでもドア」を使い避難して行く。そして最後に たぬちゃん が心配そうにこちらを見るから私は軽く手を振った。


そして、ドアが消えた。

良し!いっちょ、やりますか♪





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