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第20話 改造人間、地上3階へ挑む。

「うし! 今日でコウリャクすんぞ~!」


「油断は禁物だからな、まり」


「わかってるし! あーしは日々シンポしてんだからね~!」


 時刻は午前9時。

俺とまりは、『ガリーファロ拝山』の地上3階に足を踏み入れた。

目の前には……広大な、100均ショップエリアが広がっている。

まるで100均だけのショッピングモールだな。


「この階層で出る魔物は?」


「ホネと盾ホネとゴブリン、あとチャンピオン!」


 ……まあ、いいか。


 この階層には、スケルトン・ソルジャーにガーディアン。

それから、ゴブリン・ソルジャーとチャンピオンだ。

今までとは異なり、稀にごちゃまぜの布陣で登場する、らしい。


 終点は、屋上へと続く階段になる。

その先……屋上にはここの『コア』があり、それを破壊するとダンジョンは元に戻るが……前にも言ったようにそれは重罪。

階段までたどり着けば、すなわちクリアとなる。


「100均持ち帰りホーダイだね~」


「買った方が早いぞ、前にも言ったが」


 それに100均じゃないか……そんなにいるか?

まだホームセンターがダンジョンになった方が魅力があるぞ。



「ふにゅん!」


「――ギャガガ!?!?」


 気の抜ける掛け声だが、放たれるボルトはまっすぐ飛び――ゴブリン・ソルジャーの目を貫いた。


「はぁッ!!」


「――ゲブゥウ!?!?」


 味方が死んだことに気を取られたチャンピオン。

そいつの喉に、ピックが突き刺さる。

さして力も入れていない一撃は、チャンピオンの喉を大きく抉った。

噴水のように血が噴き出て、チャンピオンは後ろ向きに倒れ込む。

100均の食器棚が巻き込まれ、盛大な音を立てた。


「くろー!」


「わかってる! 新手が来る……そこにいろ!!」


 倒れた棚の向こうから、隊列を組んでこちらへ走ってくる……ゴブリン・ソルジャー!

さすがは地上3階、魔物の数が多い……!


「……丁度いいな、案外役に立つじゃないか100均」


 床に散らばる食器類の中に混じる……金属製のカップたち。

その一つを掴んで、投げる!


「――バッ!?」


 メジャーリーガーを凌駕する速度で投げられたカップは、ゴブリン・ソルジャーの顔面に直撃。

半分以上が顔の内部へとめり込み、そいつを吹き飛ばす。

連中は慌てて弓の用意を始めたが、その1匹にまりの放ったボルトが命中。

さらにパニックになった連中に向け、俺も次々とカップを投げる。

全てが頭に当たるわけではないが、それでも威力は十分だ!


「――せいっや!!」


 手近にコップがなくなったので、フロアを仕切る柱を蹴り砕く。

高速の散弾と化したコンクリート片が、ゴブリン・ソルジャー集団を蹂躙していく。


 他に何か投げるものは……と、思った時には連中は全滅していた。


「すっごいし! くろーってばやっぱ超強いし~!」


「まりの狙撃も腕が上がったな、力も強くなったからもっと強力なクロスボウにしてもいいかもしれん」


「うぇへへ……あ、シゴトシゴト~!」


 走り込んで来たまりは少し喜び、すぐにナイフを握ってゴブリンの耳を削ぎ始めた。

俺もチャンピオンの宝玉を回収しよう。

なんせ、あれだけで5万5千円だからな。


「あー! オンチョーヒン!!」


「おお、やったな!」


 ここに踏み込んで1時間も経っていないが、『初級』とはいえ最終階層だけはあるな……



「むぐむぐ……甘くてうまうま……」


 地上3階のセーフゾーンは、ゲームセンターだった。

アレだ、前の地球にもあったお菓子を取るクレーンゲームやプリクラの筐体が少し並んでいる。

小さい子供用の、アニメキャラを模したライド系の遊具なんかもあるな……ぬ?


「すまん……まり、あそこのキャラは何だ?」


 カロリーバー(女性用、パイン味)を齧っていたまりに聞く。


「んぐ……へ? くろーしんないの? 『みょうがマン』じゃん、キッズに大人気のヒーローだよ? テレビで見たことない?」


「ああ……うん、そうだったな……」


 どうやらこの世界では、アンパンの化身マンではなく……その立ち位置に薬味の化身マンがいるらしい。

何故、よりによってミョウガをチョイスするんだ……?

そして、頭部がデフォルメされたミョウガのヒーローが何故市民権を得るんだ。

この分だと、四次元ポッケから素敵な道具を出す青狸型ロボもいない可能性があるな……今まで見ていないし。


「あーし、子供の頃結構好きだったんよね。みょうがモノワスレパンチ~! ってみんな真似してたな~……」


 ……なんと地味に恐ろしい攻撃をするヒーローなんだ。

こっちの世界では実際に物忘れの副作用があるかもしれんな……


「くろーは子供ん時どうだったん? 何見てた?」


「……アレだ、メタルスーツを着込んだ宇宙の刑事シリーズ」


「あーね! 小学校の時、男子が蛍光灯でチャンバラして超怒られてたっけ~……なっつかし!」


 ああ、こっちの世界の小学生男子も前の世界と同じくらいのバカさ加減だったのはわかった。

そして、まりを見ればわかるように……小学生女子はそんな男子を虫でも見るように観察していたハズだ。


「あーしは魔法少女モノかな~。アイテム欲しかったケド、ウチってばクソ親父のせいでド貧乏だったし」


「そうか……」


 家族関係では俺より大分苦労しているのに、真っ直ぐ育ったもんだな。

会ったことはないが、母親の教育がよほど優れていたんだろう。


「だからさ、妹にバンバン買ってやってんの! この前の稼ぎでソッコー買って帰ったし、『マジカルアンチマテリアルライフル』! むっちゃ喜んでたよ!」


「……そうか」


 この世界の魔法少女は、どうやら重火器で武装しているらしい。

今度見てみるか……宿泊所にはテレビもあるからな。


「そいえばさ、オンチョーヒンどうする?」


 まりの視線の先には、恩寵品の箱。

蓋の開いた中身は……真っ赤な金属で構成された、手斧だ。

消防士が使うやつを短くしたように見えるな。

例によって呪いがかかっていることがあるので、今は放置している。


「支所でカンテーしたらさ、またあのハゲが出てくるんじゃないの?」


 間違いなく、そうなるだろうな。

俺達の出入りは監視されているだろうし、すぐに話が伝わるだろう。


「問題ない、隣の『朱門(しゅもん)』区画まで行く」


「えぇ~? 電車で6駅くらいあんじゃん? どうすんの? こっそり素材隠してく?」


 特別な場合を除き、魔物素材を持って公共交通機関を利用することは原則禁止されている。

生物汚染というか、疫病を回避するためだという。

ここ10年は大丈夫だが、以前に外国で大規模なバイオハザードが起こったかららしい。


「簡単だ、担いでいく。距離は精々10キロくらいだ」


「くろーってば超力持ちだったもんね……」


 ダンジョンの物品は、『俺達』の身分ならどこの支所で売っても問題がない。

問題になるのは、各支所の『紐付き』だけだ。

現在、俺達はあのハゲの話には乗っていないので……電車やバスさえ使わなければ移動に制限はない。


「ハイツ拝山に潜る時は、瀬戸に代行してもらうしな。もうあのハゲに会うこともなかろう」


「ミドちゃんだけ心配だね~?」


 それはそうだが、俺達と違って向こうは公務員だ。

なんとでもなるというような言い方をしていたし……内部告発の準備でも進めているのかもしれんな。


「気にしてもしょうがないな……もう10分ほど休憩したら行くか?」


「はーい! ばっちりトーハするし、今日は!」


 やる気満々なまり。

ダンジョンの規模は元になった建造物よりも広大だが、ガリーファロのような『初級』は、フロアの大きさは一定。

1階から3階まで、広さが変わることはない。

もっと難易度のあるダンジョンなら、上に行くほど広くなる所もあるらしいが……滅茶苦茶だな。



・・☆・・



「まり、大丈夫か?」


「だいじょぶ! ボルトはまだ100本以上あるし!」


 セーフゾーンを出発し、階段を目指す。

途中でスケルトン・ガーディアンとゴブリン・ソルジャーの混成集団に襲撃されたが、危なげなく撃退した。

ガーディアンから盾を捥ぎ取って殴り飛ばし、それで矢を防ぎながらソルジャーを蹴散らした。

盾がなくとも、俺の体はゴブリンの矢程度では傷を受けないが……プロテクターに傷がついても困るしな。

俺も、カモフラージュの為に片手用の盾でも調達した方がいいかもしれん。


 まりの方も、時には狙撃して時には棍棒を振るって活躍していた。

初めて助けた時から、『身体強化』もかなり成長しているようだ。

それに、戦闘の勘や経験と言うべきものも育ってきている。

……この女子高生、あまりにも殺伐としているな。

探索者にとってはいいことだが。


「クロスボウの調子はどうだ?」


「もーまんたい! んでも、なんか最近ガシャコンが軽い気がすんだよね~?」


 弦のコッキングのことか?

やはり、レベルアップしているようだな。

ゲームと違って数値で確認できないのは地味に不便だな。

どこかにそういったスキル持ちはいないものか。

……いたとして、その場合は俺はうんと離れた所にいた方がいいな。


 ――耳に、異音。

地面を踏む、重い音……


「来るぞまり、これは……チャンピオンが複数だ!」


「マージ!? オオモノじゃん……! がってんだし! エンゴ任せて~!」


 周囲を確認し、まりは後方へ走り出す。


 100均エリアはとうに過ぎ去り、今の周囲は寝具エリアが連なっている。

高級羽毛布団の向こうに……影が見えた。

思った通り……ゴブリン・チャンピオンがいる。

その数、4匹。


「急に増えたな……」


 こちらを視認した先頭のチャンピオンが、大剣を握って走り出す。

それを見ながら――息を吐き、構えを取る。

変身の、構えを。



「――着甲ッ!!」



 プロテクターを、装甲板がさらに覆う。

以前より厚みが増えたような気がするのは、下に着込んだものが多いからか。


 そう考えながら――握った右拳を突き出す。


『エア・ストライクッ!!』


「――ベェウッ!?!?」


 圧縮空気弾に顔面を撃ち抜かれたチャンピオンが、痛みに叫んで後ろへ倒れる。

この距離なら頭は抜けないか……まあ、問題あるまい!

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― 新着の感想 ―
蛍光灯でスターウォーズごっこやったな〜♪ヤッケ着てフード頭から被ってw まぁ自分がガラスまみれにならないだけで、付近には割れた蛍光灯が散乱。むちゃくちゃ怒られた記憶が(笑)
くろーさんがゆるキャラ的な着ぐるみを着て変身すれば愉快なシロモノが出現するかも?
ふにゅんてw (ただし殺意マシマシ)
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