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第9話 改造人間、ギャルと買い物に行く。

「お待たせしました、こちらが鑑定書になります」


 なんか、いつでも対応されている気がする戸河内さん。

彼女はパーテーションで区切られたブースで、俺達の前に盾と紙を置く。


「ありがと、ミドちゃん!」


「みどり、です」


 いつも通りのまりに顔をしかめている戸河内さん。

それを横目に、鑑定書に手を伸ばす。

安置されている盾は、地下1階で手に入れた恩寵品だ。


 あれからスケルトンの群れを難なく突破し、俺達は地上1階の入口まで到達した。

そして、その横にある非常用階段を使用して地上へ帰還したというわけだ。

何故かあのダンジョンは、地上1階部分にある本来の自動ドアから入ることはできない。

まあ、ダンジョンがわけのわからないルールで縛られているのは今に始まったことじゃないらしい。

ともかく、これで次からは地上1階に直にアタックできるようになったというわけだ。


「『衝撃反転(小)』に『高耐久』か……いいな」


 鑑定書に書かれていたスキルを読む。

相手の攻撃をある程度跳ね返し、盾そのものの耐久力も高い。

これは当たりの恩寵品だな……純粋に使いやすい。

持った感じも重くなかったし、大きさも手首から肘の先を完全に隠せる……まりに丁度いいな。


「戸河内さん、これはこちらで使います……なんだ?」


 気付けば、まりがコートの裾を引っ張っている。


「う、売らなくてほんとにいいのぉ……? これ、30万って書いてあんだけど……」


「いい。お前の戦力強化の方が重要だろう?」


 それに、ゴブリンとスケルトンの時点で結局合計15万円以上を稼いでいる。

恩寵品は狙ったものが出るわけじゃないので、これでいいんだ。


 俺は生きていくだけならさほど金はかからんし……まりもそうだ。

俺の目的は『まりの手助け』、まりの目的は『薬系の恩寵品』と『エリクサー』

それならどんどん攻略していく方がいい。

どちらも金でどうこうなるものではない。


「ううう……あんがと! あーし一生大事にするし~!」


「むしろバンバン使うほうがいい」


 大事にしすぎて大怪我でもされたらたまらん。

この世界、ポーションも回復魔法もあるが両方貴重だし。


「わかりました、それではそのように。しかし、お2人ともかなり早いペースで地下1階を抜けましたね……」


 眼鏡の位置を直す戸河内さんに、まりがサムズアップ。


「くろーがもう、めっちゃ強いし! エグい! ヤバい!!」


 語彙力が壊滅している……もっと国語を勉強してくれ。


「そうですね、南門原さんはソロでも平気で地下2階を巡回していましたし……本当にスキル検査、受けませんか?」


「断る。必要ない」


 戸河内さんには世話になっているが、それだけはできん。

罪や嘘を看破するスキル持ちがいる世界なんだ、俺の『改造人間』っぷりも一瞬でバレるだろう。

しかもパラレルワールド出身でもあるし。

絶対に研究材料にされる。

探索者のスキルは一応……開示する意思がないと調べられないことになっている。

少なくとも、俺から許可を出すことは絶対にない。


「それ以外のことなら世話になっているから協力しようとは思うが、それだけは御免だ」


「……まあ、いいでしょう」


 役所的には強キャラらしい俺のことを把握しておきたいんだろうな……

自慢じゃないが、俺は『話の通じる側の』探索者でもあるし。

さすがにハッキリと認識してはいないだろうが……チンピラを始末しているのも感づかれているかもしれん。

評判の悪い連中が俺と似た時間帯にダンジョンに入って、全員未帰還になっているんだからな。


「お2人には我々も注目しています。これからの練達を期待しております……では、これで失礼します」


 深々と頭を下げ、戸河内さんが退出していく。


「今日1日でめっさ稼いだし! コンビニバイトなんか目じゃないね! くろー!」


「危険度が段違いだからな」


 この世界はダンジョンのお陰で景気がいいし、前の世界程少子高齢化も進んでいない。

よって、一般的なコンビニの時給は2千円程度だ。

それでも探索者の方が稼ぎはいいがな。

俺は戸籍カードさえあれば安全な肉体労働で稼ぎたいもんだが……無理だからダンジョンに潜るしかない。とても切ない。


「明日は休日にしよう。一気に2階層を踏破して疲れているだろうし……地上1階からは今まで程甘くない。しっかり休んで英気を養っておけ」


「わかった! んじゃ、明日はオフだね、くろー! ……あ!」


 どうした、急に大声を出して……


「んじゃ、あーしと一緒に買い物いこ! 買い物!!」


「……買い物?」


 日用品の買い物は済んでいるから必要はないが……


「そそそ、『迷宮商会』のビル! くろー、行ったことないって言ってたじゃん!」


「ああ、それはいいな。確かに興味はある」


 そう言うと、まりは両目をキラキラと輝かせた。


「決まり~! んじゃ、明日の10時にここの駅で街合わせにしよ!」


「わかった、10時だな」


 『迷宮商会』……まあ、早い話がダンジョンに潜る探索者用の商品を扱う会社だ。

ダンジョン発生黎明期から手広く商売をしている……らしい。

今までは稼ぐことしか考えてなかったからな、ここらで行っておくか。


「JKとウィンドウショッピングだよ? アガるっしょ~?」


「ダンジョン用品の店はワクワクはするな、確かに」


「うぇ~?」


 そう返すと、まりはジト目になった。

いや、ここでJK大好き! とか言う方が25歳としてはヤバいだろう。



・・☆・・



「あっこだよ、あっこ!」


「分かりやすい」


 日曜日。

10時に駅でまりと合流し、電車に揺られること半時間ほど。

駅から外に出た俺達の前に、『迷宮商会』と大きい横断幕のかかったビルがある。

5階建てのビルは、全てがダンジョン系の製品で占められている。


「昼にもなってないのに混んでるね~」


「日曜だからな」


 駅から出た人々の内、ガタイがいい連中は真っ直ぐビルへと向かっていく。

同業者か……ここら辺は大小様々なダンジョンが乱立しているからな。


「くろーは何見んの? あーしはプロテクターだけど」


「そうだな……武器が見たい」


 防御力には現状全く苦労していない。

なので、俺の改造された力に耐えきれるような武器があればいいんだが。

一応、現金で20万程は持って来たが……

戸籍がない俺はクレジットカードを持てないんだ。

まず銀行口座がな……世知辛い。


「そっかそっか、それじゃ先に武器エリア行っちゃお! 5階だかんね!」


「そうか、助かる」


「いーのいーの! 行こ行こ~!」


 ダンジョンに行く時とは違い、シャツにパンツルックのまりが楽しそうに歩き出す。

スタイルがいいから、シンプルな格好でもよく似合うな。

俺はいつもの格好なので、少し気後れする……



「いらっしゃいませ~。向かって右が刃物ゾーン、左が鈍器ゾーンとなっております~!」


 『迷宮商会』の前掛けをした店員の女性が、にこやかに微笑んでいる。


「くろー、ドンキっしょ」


「ああ、鈍器だな」


 改造されているとはいえ、俺に剣道の経験はない。

それに力が強すぎる……繊細な刃物は扱える気がしない。

そして、偏見だが刃物は手入れが面倒臭そうだ。


「ドンキ最強だし! 手入れ簡単で硬くて強いし!」


「同感だ」


 案内表示に従って、左のエリアへ行く。

ああ……あれだ、前の世界で言う所のエアガンショップに似ている。

もっと大規模だが。


 ガラスケースの中に武器が陳列され、壁の方にも同じようなケースが設置されている。

なんとも、物騒な場所だな。


 先程の店員とは違う男性店員が……所々に配置されている。

体つきからしてお仲間……探索者だな。

なるほど、警備員も兼ねているわけか。

いいなあ、給料高いんだろうなあ。


「こーいうの、難しそうだよね」


「わかる」


 まりが見ているのは鎖鉄球付きの武器……たしか、フレイルだったか?

遠心力で鉄球をぶつけるんだから威力はありそうだが……扱いは難しい。

俺の力でぶん回すと接合部が壊れそうだ。


「あ、あっちがコンボ―だよ」


 流し見しながら歩いて行った先に……棍棒エリアが。

短いのから長いのまでよりどりみどりだな。


 俺の戦闘スタイルは近接戦に寄っている。

『エア・バレット』と『エア・ストライク』という飛び道具もあるが……それでも精々中距離だ。

脳内のスペック表によれば、『バレット』の方は変身しなくても使えるから、咄嗟の時の為に片手は空けておきたい。

となると……片手用の鈍器が好ましいな。


「ふむ……」


 やはり、使われている素材によって値段が変わるようだ。

安いものは木の棍棒に金属パーツを接合したものだな、これはナシ。

すぐにぶっ壊れる気がする。


「くろー! これよくね? むっちゃいかちーよ!」


「長すぎる」


 まりが楽しそうに指差した所には、全長2メートルほどの……金棒だ。

先端から中ごろまでに、殺傷能力が高そうな棘がズラリと配置されている。

確かに強力で、俺なら扱えるだろうが……


「でもさあ、これが8万とか安くね?」


「よく見ろ、桁が違う」


「うひゃ!? マジじゃん!?」


 ダンジョン産の金属で構成されたという金棒……これは明らかに予算オーバーだ。


「広いダンジョンばかりじゃない。この先を考えると厳しいな」


「あーね、ほいじゃやっぱ短めのがいいか~」


 まりは片手用の棚に歩いて行く。


「まりはいいのか?」


「今使ってんの、けっこーいいヤツだからあーしは今いらない。こないだのゴブリンに壊されちゃったプロテクターの方がセンケツだし」


 なるほど、確かにあの棍棒は丈夫そうだった。


「あ! これいんじゃね? 長さもちょうどいいし!」


「長さはいいな」


 まりが持っている棍棒よりも少し長いな。

分厚く黒光りする金属で構成された、先端が金槌になっている棍棒だ。

ほう……これはいいかもしれんな。

ツルハシのような部分なら、本気で振らなくてもかなり強いダメージになりそうだ。

値段は……10万か。

紹介文には、重いが頑丈で長持ち! という言葉が躍っている。

……この大きさで、50キロ? なるほど、比重の重い金属で作られているのか。


「気に入ったっぽいね? 店員サーン、これちょっと試したいし~!」


「はーい、少々お持ちを~!」


 フットワークが軽いまりを、少し頼もしく思ったのだった。

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― 新着の感想 ―
片手でも両手でも握れるサイズのが色々いいんじゃないかなー リーチと威力を適宜変えれるし
ハンマーは説明不要に強いですからね!(・∀・*)←ハンマー好き
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