7.メシがマズくなる話
⚠トイレネタ注意!
「わたくしはね。白の御方は、神殿でお預りするのが一番だと思うの」
てんでに弁当を広げた車座の一席で。紫色の髪の少女が、ゆったりと微笑む。
桃色の髪の女性は自分の膝に肘をつき、溜息を一つ落とした。
「言うと思った」
紫色の髪の少女は口に運ぼうとしていたカップを止めて、心底不思議そうにまばたきをする。
「ダメかしら?」
「アタシは、何も分からない子供を祀り上げるのには反対だよ。おやっさんはどう思います?」
「そうさな⋯⋯」
桃色の髪の女性に話を振られ、肉を挟んだパンをがぶりと噛み切り、緑髪の男性は顎をさする。
「神殿が保護するのはかまわん。だが、公表すべきではないだろうな。パレット教の連中がどう出るかが読めん。危険過ぎる」
その意見に、橙色の髪の少女が身を乗り出す。
「そもそも、色派なんてまだいますの? あのような邪教を信仰する人がいるだなんて、信じられませんわ!」
「これ、滅多な事を言うものじゃあないぞ」
藍色の髪の男性が、軽く窘めた。
「あれも、一部の連中が白色が邪悪だなんだと騒ぎ立てた事から始まったんだ⋯⋯なあ、橙の嬢ちゃん? 色派はな、こういう物を作る工房から生まれたんだぞ」
こういう、と艷やかな黒に彩られた石のカップを掲げて、藍色の髪の男性は得意げに笑う。
「元は、もっと良い物を作りたい。その祈りを捧げる為だけの、大人しい宗派だ。頭のおかしな連中ばかりじゃあない」
「⋯⋯お詳しいんですのね」
「誰にでも、色派の友人の一人や二人はいたもんだよ。昔はな」
皮肉っぽい返しに、藍色の髪の男性は、さらりと答える。
橙色の髪の少女は小さく唇を噛み締めていたが、やがて、プイッと顔を背けた。
そこにてくてくと寄ってきた白い幼子が、少女の頭を撫でる。
「なんですの!?」
「なんの。いーこ、いーこよ」
「何を言っているのか分かりませんわ!!」
慌てて距離を取る橙色の髪の少女に、取り残された白い幼子が、口を尖らせる。
「⋯⋯いじめられたと思われてない?」
「余計なお世話ですわ!」
「わしの評価がひどい」
半眼になる桃色の髪の女性に、いきり立つ橙色の髪の少女。
ぶつくさ言っている藍色の髪の男性に、青い瞳が冷たく向けられる。
「私としては、あの惨劇を知りながら同じ信仰を持ち続ける事には、それなりの責任が伴うと思いますけど」
「今はその議論はいいだろう。現状問題は、この子にとっての最善が何かだ」
「むー?」
軌道修正する緑髪の男性に、この子、と指差されて、白い幼子が振り返る。
「白、こっちへ来い。メシ食うぞ」
「あーい」
ぞんざいな呼び掛けに、白い幼子はポテポテと、藍色の髪の男性の傍らへと戻っていく。
「⋯⋯本当に、聞き取りは全く問題ないんだな」
「び!?」
だが、その途中で銀髪の青年が視線を向けた途端、全速力で物陰へ逃げ込んだ。
「だからなんで俺だけ!!」
「落ち着け、銀の」
「顔が恐いの自覚した方がいいですよ」
「第一印象が悪過ぎたものねぇ⋯⋯」
ちょっと涙目になっている銀髪の青年を、緑髪の男性がなだめ、青い髪の少女が突き放す。
挙句に紫色の髪の少女に溜息をつかれて、銀髪の青年は肩を震わせた。
「だ、大丈夫だよー?シルバーさん、顔は恐いけどいい人だから。ほんのちょっと、目付きと口と態度が悪いだけで⋯⋯」
「悪いのは性格もじゃね?」
「本能で危険を察知しているかもしれませんわ」
「⋯⋯てめーら。」
フォローに行く体で言いたい放題のウサギ頭の少年、興味なさそうにスープをすする桃色の髪の女性、追い討ちをかける橙色の髪の少女に、銀髪の青年がとうとう立ち上がる。
「いい加減にしねぇとトイレ閉鎖するぞ!!マイ・尿瓶でお持ち帰りしたくなかったら、黙れ!!」
「「「「「ごめんなさい」」」」」
管理人最恐の切り札に、一同はひとたまりもなく降参した。




