6.あなたのお家はどこですか?
初ブクマ! 嬉しいですありがとうございます〜!
⋯これ、誤タップだったら恥ずかしいな⋯
「ちょっと待ってください」
わずかな不安を滲ませて、橙色の髪の少女が眉を顰める。
「さっきから、少しおかしくありません? まさかその子、言葉を話せませんの?」
「「「「え?」」」」
きょとんとしていたのは、束の間。
ウサギ頭の少年は、慌てて目線を合わせて屈み込む。
「あれ!? もしかして、言葉通じてなかった!?」
「んーん」
「⋯⋯通じてるんだ」
「ん!」
首の動きで会話してみせる白い幼子に、ウサギ頭の少年はがっくりと肩を落とす。
桃色の髪の女性は、抱っこしていた幼子を降ろし、改めて検分した。
「ええっと⋯⋯意外と体格いいな? うんと発育が良くて、七、八歳⋯⋯多分、十歳くらい? 下手したら、十二歳でもこんな子いるね」
「それはさすがに⋯⋯」
「ちょっといいですか?」
不意に青い髪の少女が手を伸ばし、白い幼子の両目を塞いだ。
「う?」
「私の声が聞こえますか?」
「う!」
「何を話しているかも、分かるんですね?」
「あい!」
思わず、その場にいた全員が顔を見合わせる。
青い髪の少女はそっと掌を退かし、白い双眸を覗き込んだ。
「喋れますか?」
「あい?」
白い幼子は首を傾げた。
「お名前は?」
「うー?」
幼子は首を捻る。
「ご家族は?」
「かーさま!」
ぺちぺちと、床を叩く。
「⋯⋯あなたのお家は?」
「にゃ」
藍色の髪の男性を指差す。
「私の名前は、ブルーです。ブルーブルー・ブルー。⋯⋯呼んでもらえますか?」
「るー!」
幼子は、元気よく手を挙げた。
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
青い髪の少女は、額を押さえた。
紫色の髪の少女は、両手で口元を覆った。
橙色の髪の少女は、顔を背けた。
桃色の髪の女性は、天を仰いだ。
ウサギ頭の少年は、頭を抱えた。
「「「インディゴ様!!」」」
「うおっ。なんだ?」
団子になって押し寄せた一同に、緑色の髪の男性が慄く。
その正面でしおしおになっている藍色の髪の男性は、恨みがましい眼差しを返した。
「⋯⋯なんだ。助けてくれる気になったか?」
「助けません!」
「それより、どういう事なんですか!?」
「この子、片言しか喋れないみたいなんですけど!」
「こっちの話は理解できているのに!」
「「は?」」
緑色と銀色の目が、点になる。
橙色の髪の少女がこれ以上もない渋面で、藍色の髪の男性に訊ねた。
「ものすごく発育のいい三歳児とか、ですの⋯⋯?」
「いや。野生化しとった」
「「「「はあ!?」」」」
「大変だったんだぞー。最初は完全に、懐かない野良猫状態だったからな」
飄々と語り、一月かけてここまで慣らしたのだから褒めろ。と胸を張る、藍色の髪の男性。
その胸倉を、銀髪の青年が掴んだ。
「聞いてませんよ!! なんですかそれは!? どう見ても十歳くらいでしょう!? それが会話もできないって、どういう事ですか!?」
「わしが知るかい」
「威張るな!!」
間抜けな遣り取りに長い溜息をつきながら、緑髪の男性がぐりぐりと眉間をほぐす。
「おい、スカタン⋯⋯それだと大分話が変わってくるぞ。白の一族が落ち延びたとして、二十年かそこらで人語を忘れる訳がないだろうが。その子供、親を知らん可能性が高いぞ?」
「わしもそう思うから連れて来たんだ。少しは信用しろ」
「たわけ」
藍色の髪の男性が不平をならすのを一蹴し、緑髪の男性は少年少女たちに向き直る。
「このアホはほっとくとして⋯⋯。すぐに親元に帰すのは難しそうだな。上に報告して、気長に捜索してもらうしかあるまい」
「でもこの子、お母さんはいるみたいですよ?」
「何?」
「あ、それウチの猫」
桃色の髪の女性の懸念に、信じ難い台詞が放たれた。
無言で見つめる一同に対し、藍色の髪の男性は、ひらひらと片手を振る。
「“かーさま”だろ? なんか、わしよりウチの猫の方に懐いてなー。いつの間にかそう呼んどった」
端的な説明に、青い髪の少女が頭を振る。
「いつの間にかって⋯⋯インディゴ様が教えていないなら、この子が元々“母様”という言葉を知っていた事になりますけど?」
「ん?そういやそうだな」
藍色の髪の男性が、呑気に首を捻った瞬間。
緑髪の男性の無言の拳が、そのみぞおちにめり込んでいた。
うずくまる藍色の髪の男性を視界から振り切り、緑色の髪の男性は宣言する。
「これ以上、この阿呆には任せられん。その子をどうするか、今日中に決めるぞ」
「「「はーい」」」
「⋯⋯ひどくね?」
「どの口で」
独りぼやく藍色の髪の男性を、銀髪の青年が睨み付けていた。




