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哭島列車と五骸童子 ―死者を悼む歌の見立て殺人―  作者: 神谷利休|アコンプリス


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第七章 普通に推理したら犯人になる

 九条が目を覚ましたのは、久我山の部屋の現場確認が一段落した後だった。

 真壁が食堂へ戻ろうとした時、廊下の奥から八尋美緒の声がした。

「九条先生が……」

 その声には、安堵と恐怖が半分ずつ混じっていた。

 真壁と二階堂は、ほとんど同時に振り返った。

 九条の部屋の扉は開いたままだった。入口には八尋が立っている。顔色は悪いが、さっきまでのような狼狽はない。彼女の肩越しに、ベッドの上の九条が見えた。

 九条雅紀は、上体を起こそうとしていた。

「動くな」

 真壁が言うと、九条は目だけをこちらへ向けた。

「命令が多い」

「起きたばかりの人間が言う台詞じゃない」

 二階堂が部屋に入り、九条の肩を押さえた。

「寝てろ。お前、さっきまで完全に落ちてたんだぞ」

「死んでいない」

「基準をそこに置くな」

 九条は顔色が悪かった。唇の色も薄い。額には汗が残っている。だが、目は戻っていた。眠りの底から浮き上がってきたばかりの人間の目ではない。見ようとしている目だった。

 真壁はベッド脇に立った。

「何を覚えてる」

「鍵を閉めたところまでは」

「その後は」

「頭が重かった。水を飲んだ」

 二階堂の表情が変わる。

「飲むなって言っただろ」

「言われたのは覚えている」

「なら飲むな」

「飲んだ記憶が、少し変だ」

 真壁は机の上を見た。

 ペットボトルは、トレイに載せたままだった。誰も触れていない。中身は半分ほど減っている。キャップは、ボトルの右側に置かれていた。

 九条も、それを見た。

「右にあるな」

「何が」

「キャップ」

 二階堂が机に近づき、触れないように覗き込んだ。

「確かに右だな。それが?」

 九条は少し眉を寄せた。

「俺は、開けたキャップを右には置かない」

「左利きだからか」

 真壁が聞く。

「癖だ。左手で開けて、そのまま左側に置く。考えて置いているわけじゃない。いつもそうなる」

 二階堂は息を止めた。

「つまり、誰かが置いた?」

「少なくとも、俺が普段通りに開けたなら、そこには置かない」

「寝ぼけてた可能性は」

「ある」

 九条は即答した。

「薬を盛られていたなら、いつもと違うことをした可能性はある。だから、これだけでは証拠にならない」

「でも、違和感にはなる」

 真壁が言うと、九条は頷いた。

「なる」

 二階堂は、トレイの周囲を見た。

「ボトルの位置は?」

「覚えていない」

「誰かが部屋に入った記憶は」

「ない」

「本当に?」

「ない」

 九条は少し息を吸った。胸の奥で、かすかな音がした。乾いた、細い音だった。

 真壁は目を細める。

「呼吸は」

「問題ない」

「問題ある時の返事だ」

 二階堂がすぐに言った。

「吸入薬は?」

「使った」

「いつ」

「昨夜。部屋に入ってから一度。水を飲む前か後かは曖昧だ」

「曖昧が多いな」

「だから盛られたんだろう」

 九条はそう言って、少しだけ顔をしかめた。

 悔しそうだった。

 自分が眠らされたことより、記憶が曖昧になっていることに腹を立てている顔だった。

 真壁は、机の下を見た。

 床には水滴がいくつか残っている。ベッドから机までの間。九条が夜中に起きて水を飲みに行ったなら、説明はつく。だが、誰かが水を持って近づいたとしても、同じように説明できる。

「鍵は」

 九条が言った。

「扉の鍵か」

「開ける時、どうだった」

 二階堂が答えた。

「内側からかかっていた。扉を押した時、内側で鍵が落ちたような音がした」

「予備鍵は?」

「消えていた」

「なら、誰かが外から開けて、内側に鍵を残した可能性がある」

「そんなことができるのか」

 真壁が聞く。

「古い鍵ならできる場合がある。鍵をかけた後、細い道具で落とす。あるいは、扉の下に何かを差し込む。見せかけの内鍵は、そこまで難しくない」

 二階堂が低く息を吐く。

「お前、起き抜けから嫌なこと言うな」

「起きてすぐ見えるものは、大抵嫌なものだ」

 九条は、そこで久我山の部屋の方へ目を向けた。

「久我山さんは」

 真壁は一瞬だけ黙った。

 九条はその沈黙で察した。

「死んだのか」

「ああ」

「眼か」

 真壁は答えなかった。

 九条は目を伏せた。

「そうか」

 その声には驚きがなかった。

 予想していたのだろう。童歌の順番を。犯人が次に何を置くかを。

 二階堂が言った。

「久我山さんの部屋と、お前の部屋が繋がっていた」

 九条の目が少しだけ動いた。

「通気口か」

「点検通路だ。クローゼットの奥にあった。人一人なら通れる」

「それなら通れるな」

 九条は淡々と言った。

 二階堂の表情が歪む。

「自分で言うな」

「事実だ」

「お前な」

「通った痕跡は」

「ある。埃を掃いたような跡が」

 九条はそこで黙った。

 何かを言いかけたようにも見えた。

 だが、言わなかった。

 真壁は、そのわずかな沈黙を見た。

 九条の中では、もう何かが引っかかっているのだろう。だが九条は、自分でそれを言わない。言えば、自己弁護になる。自分に都合のいい理屈を、自分で提示したことになる。

 それを避けた。

 そう見えた。

「これから見る」

 真壁は言った。

「お前はここにいろ」

「行く」

「無理だ」

「無理かどうかは」

「無理だ」

 真壁の声が強くなった。

 九条は少しだけ黙った。

 二階堂が椅子を引き寄せる。

「座ってろ。俺たちが見る。お前が通ったかどうかも含めてな」

 九条は二階堂を見た。

「俺を疑っているのか」

 二階堂はすぐには答えなかった。

 その沈黙に、嘘はなかった。

「疑ってる」

 九条は、わずかに目を細めた。

 二階堂は続けた。

「疑いたくはない。でも疑ってる。お前の部屋と久我山さんの部屋が繋がっていた。お前は眠っていた。水もある。キャップの位置もある。鍵もおかしい。全部、お前に向いてる」

「正しい」

 九条は言った。

「俺を外すな」

 真壁は九条を見た。

「外さない」

「ならいい」

「ただし、お前だけを見もしない」

 九条は、ほんの少しだけ息を吐いた。

「それでいい」

 真壁は机の上のボトルを見た。

 右側に置かれたキャップ。

 九条の癖なら、そこには置かれないもの。

 証拠ではない。

 だが、誰かの手が部屋に入った可能性を示す小さな違和感ではある。

 犯人は大きな血文字で人の視線を支配する。

 しかし、本当のほころびは、こういう小さな位置に出る。

 キャップの右と左。

 開いたはずのない鍵。

 そして、これから見ることになる埃。

 真壁はそれらを頭の中に置いた。

「九条」

「何だ」

「まだ寝てろ」

「また命令か」

「そうだ」

「不愉快だ」

「なら起きて見ていろ。ただし、ここから動くな」

 九条は、目を閉じるでもなく、起き上がるでもなく、枕に背を預けた。

「早く見てこい」

「言われなくても」

 二階堂が扉の外へ出る。

 真壁も続いた。

 部屋を出る直前、九条が言った。

「真壁」

 振り返る。

「何だ」

「通路の埃を見ろ。あと、床だけじゃなく壁も見ろ。肩や袖が擦れていれば、埃が落ちる」

「わかった」

「それと」

「まだあるのか」

「吸入薬のケースの残量も見ろ。昨夜使った分以外に減っているなら、夜中に発作が起きた可能性がある」

 真壁は頷いた。

「わかった」

 九条はそれ以上何も言わなかった。

 真壁は廊下へ出た。

 久我山の部屋の前で、二階堂が待っている。

 二人は一度だけ目を合わせた。

 疑う。

 疑った上で、潰す。

 それが、今できる唯一の誠実さだった。

 真壁が久我山の部屋へ向かおうとした時、階段の下から常盤怜の声がした。

「すみません」

 常盤は階段の途中まで上がってきていた。顔色は悪く、片手で手すりを掴んでいる。夜の間に何度も見た、鍵のない腰へ手をやる癖はもう出ていない。代わりに、何かを決めかねているような目をしていた。

「何ですか」

 二階堂が聞いた。

「一度、食堂に集まりませんか」

「今ですか」

「はい。皆さん、かなり動揺しています。由良さんも宗像さんも、九条先生が目を覚ましたことをまだ知りません。久我山さんの部屋と九条先生の部屋が繋がっているかもしれないという話も、噂のように広まり始めています」

 二階堂は眉を寄せた。

「誰が話したんです」

「麻生さんが、廊下で少し……いえ、悪気があったわけではないと思います。ただ、皆さんもう限界です。このまま二階で何かを調べれば、九条先生が犯人だと決めつける人が出ます」

 真壁は黙った。

 常盤の言うことは正しかった。

 今ここで二人だけが久我山の部屋に入り、通路を調べ、その間に食堂で不安だけが膨らめば、九条への疑いは勝手に形を持つ。形を持った疑いは、あとから崩すのが難しい。

 二階堂が短く息を吐いた。

「わかりました。一度、全員を食堂へ」

「九条も連れていく」

 真壁が言った。

 二階堂が振り向く。

「歩けるかな」

「歩けなければ支える」

「本人は嫌がるぞ」

「嫌がる元気があるなら連れていける」

 二階堂は少しだけ苦い顔をした。

「それはそうだな」

 九条の部屋へ戻ると、九条はまだベッドに背を預けていた。目は開いている。机の上のペットボトルを見ているようで、実際にはもっと別のものを見ている顔だった。

「食堂へ行く」

 真壁が言うと、九条は目だけを動かした。

「通路は」

「その前に全員を落ち着かせる」

「落ち着くと思うか」

「思わない。だが、放っておくよりはましだ」

「合理性が低い」

「お前をこのまま二階に残しておく方が低い」

 九条は黙った。

 二階堂が近づき、九条の腕を取る。

「九条、立てる?」

「立てる」

「倒れるなよ」

「倒れる時は言う」

「倒れる前に言え」

「難しい注文だ」

 真壁は反対側から九条を支えた。

 九条は不満そうに眉を寄せたが、振り払わなかった。立ち上がった瞬間、わずかに膝が揺れる。真壁が腕に力を込めると、九条は小さく息を吐いた。

「重病人扱いするな」

「重病人みたいな顔をするな」

「顔は生まれつきだ」

「今それを言う余裕はあるんだな」

 二階堂が呆れたように言った。

「じゃあ歩け」

 三人で廊下へ出る。

 久我山の部屋の扉は、半開きのまま静かにこちらを見ているようだった。そこに血の匂いが残っている。九条は一瞬だけそちらへ視線を向けたが、何も言わなかった。

 階段を下りる時、食堂の方から人の気配がした。

 声はしない。

 だが、誰もが何かを待っている空気が、階段の下まで滲み出していた。

 真壁は九条の腕を支えながら思った。

 疑いは、もう始まっている。

 ならば、隠すより先に、見せた方がいい。

 九条が生きていること。

 九条が弱っていること。

 そして、九条を疑うことを、こちらが避けていないこと。

 その全部を、同じ場所に置く必要があった。

 食堂には、雨が弱まる音だけが残っていた。

 朝から続いていた豪雨は、昼を過ぎる頃になってようやく細くなった。窓ガラスを叩く音が小さくなり、そのぶん、旧迎賓館の内側にある音が目立ちはじめる。ストーブの低い唸り。誰かが紙コップを置く音。椅子の脚が床を擦る音。息を呑む音。言いかけた言葉を飲み込む音。

 人間は、静かになるほど多くの音を立てる。

 真壁彰は、食堂の隅に立ったまま、その全部を聞いていた。

 四人が死んだ。

 汐崎千広。

 牧野奏子。

 深町静真。

 久我山峻介。

 切り取られたのは、舌、耳、右手、右目。

 壁や布に残された血文字は、どれも童歌の一節に沿っていた。

 ――嘘を吐いた舌は海へ

 ――聞こえなかった耳は灯へ

 ――押した手は崖へ

 ――見た眼は祠へ

 そして、そのたびに怪人名が添えられていた。

 五骸童子。

 だが真壁の中で、すでに一つの感覚は揺らぎ始めていた。

 これは、童歌どおりに殺している事件ではない。

 童歌どおりに見つけさせている事件だ。

 その違いは大きい。

 人は死体を見つけた順番に、事件を考える。最初に見つけた死体を第一の殺人と呼び、次に見つけた死体を第二の殺人と呼ぶ。そこに順番があると、それがまるで犯人の手順であるかのように信じてしまう。

 だが、死体は必ずしもそう言っていない。

 汐崎の死体は、血の流れが浅すぎた。

 牧野の死体は、発見直前に殺されたものではなかった。

 深町の死体は、崖から落ちたものとしては損傷が偏っていた。

 久我山の死体も、今朝死んだものとは限らない。

 正しい。

 おそらく、九条雅紀ならそう言う。

 正しいからこそ、九条は疑われている。

 真壁は、九条を食堂の奥に座らせたうえで改めて観察した。

 九条は長いテーブルの端で、目を伏せていた。水にも食事にも手をつけない。顔色はまだ悪い。今朝、九条の部屋で見つかった水には、何かが入れられていた可能性が高い。少なくとも九条自身は、ボトルのキャップを机の右側に置いた記憶がないと言った。左利きの九条は、普段なら無意識に左側へ置く。

 それでも、周囲にとってそれは決定的ではない。

 九条が自作自演したと言われれば、それまでだ。

 自分で眠ったふりをした。

 自分でキャップの位置をずらした。

 自分で隠し通路を使った。

 自分で久我山を殺した。

 それを完全に否定する材料は、まだ揃っていない。

 二階堂壮也が、食堂の入口から真壁を呼んだ。

「やっぱり、俺は通路を見たい。証拠になるものを隠滅されてからじゃ遅い」

 真壁は頷いた。

「九条は」

「ここに置く」

 二階堂は九条を見た。

「動くなよ」

 九条は目を上げた。

「動けるように見えるか」

「見えない。だから言ってる」

「矛盾している」

「お前には言っておかないと不安なんだよ」

 九条は返事をしなかった。

 その沈黙に、疲労が滲んでいる。薬の影響は抜けきっていない。呼吸は安定しているが、深くはない。時折、胸の奥で乾いた音がする。本人は気づかれていないつもりなのだろうが、真壁にはわかった。

 九条は、まだ無理をしている。

 それでも彼は顔を上げた。

「ほこ……」

 二階堂が眉を寄せる。

「ほこ? 祠?」

「いや、なんでもない」

 九条はそこで口を閉じた。

 真壁はそれを見ていた。

 いま九条が言いかけたのは、祠ではない。

 埃だ。

 そう直感した。

 九条は、点検通路という言葉を聞いた時点で気づいている。自分が通ったならどうなるかを。埃を吸えば咳が出る。昨夜の状態なら、隠しきれるはずがない。そのことに、誰よりも早く気づいている。

 だが、あえて言わなかった。

 自分で言えば、都合のいい自己弁護になるからだ。

 真壁は九条の顔を見た。

 九条は何も言わない。

 言わないことで、こちらが気づくのを待っている。

 相変わらず、面倒な男だった。

 食堂の空気が変わる。

 由良一華が顔を上げ、すぐに俯いた。宗像恵は唇を噛んでいる。麻生郁馬は、見てはいけない場面を見るような顔をしていた。常盤怜は鍵束のない腰に手をやり、白井透子は表情を変えなかった。

 二階堂は一瞬だけ苦い顔をした。

 真壁は、九条の前に立った。

「お前を容疑者から外して考えない。いいな?」

 九条は凪いだ目で、ひとつ頷いた。

 久我山の部屋は、まだ血の匂いが残っていた。

 現場には二階堂が最低限の記録を残している。警察が到着するまで、できるだけ触らない。それでも、見なければならない場所がある。

 クローゼットの奥。

 久我山の上着と鞄をどかさず、隙間から覗くようにして、真壁は奥の板を見た。昨日まではただの壁に見えたはずの場所に、継ぎ目がある。古い板の縁に沿って、細い埃の線が切れていた。

 二階堂が懐中電灯を向ける。

「開けるぞ」

「ああ」

 板を押すと、重い音を立てて奥へ動いた。

 暗い空間が口を開ける。

 人一人が身をかがめれば、どうにか通れるほどの幅だった。天井は低く、壁の内側に古い配管が走っている。床板には長年の埃が積もり、ところどころ湿気で固まっていた。

 空気が悪い。

 湿っているのに、粉っぽい。

 二階堂が袖口で口元を押さえた。

「これはきついな」

 真壁は懐中電灯で床を照らした。

 埃は乱れていた。

 中央に、細く擦れた跡がある。

 誰かが通った。

 あるいは、何かを通した。

 だが、足跡としてははっきりしない。身をかがめ、手をつきながら通れば、膝や掌の跡が残るはずだ。そこにはそうした明確な形はなかった。代わりに、布か何かを引きずったような、長い擦過が続いている。

「誰かが通った形跡はある」

 二階堂が言った。

「あるな」

「九条なら?」

 真壁は懐中電灯の光を通路の奥へ向けた。

 奥は九条の部屋側へ続いている。数メートルほどだろう。距離だけなら短い。九条の体格なら、通れる。久我山のような大柄な男では厳しいが、九条なら通れる。

 だからこそ、疑いは成立する。

 真壁はそれを認めた。

「通るだけなら、できる」

 二階堂は唇を噛んだ。

「言いたくない答えだな」

「ああ」

 真壁は通路の入口に膝をついた。

 中へ入る。

 埃の匂いが、一気に鼻を刺した。

 狭い。

 肩が壁に触れる。

 配管の錆が袖を擦る。

 床板の埃が膝に移る。

 ほんの少し進んだだけで、喉の奥がざらついた。

「真壁、無理するな」

「見るだけだ」

 真壁はさらに奥へ進んだ。

 通路は、途中で少しだけ折れている。そこに古い換気用の格子があった。おそらく、客室の空気を逃がすためのものだろう。格子には埃がびっしりとついている。その一部が、最近触れられたように落ちていた。

 誰かがここを通った。

 それは間違いない。

 問題は、それが誰かだ。

 真壁は、九条の部屋側の出口まで行った。

 そこにも同じような板がある。内側から押せば、九条の部屋のクローゼットに出る構造らしい。板の縁に、細い新しい傷がある。何度も使われた形跡ではない。最近、力を入れて開けられた跡だ。

 真壁は戻った。

 通路から出ると、喉に引っかかっていた埃が一気に出た。

 咳が出る。

 一度。

 二度。

 それだけで済んだ。

 だが真壁は、その二度の咳で九条の顔を思い出した。

 中学の体育館裏。

 乾いた風の日。

 グラウンドの砂埃が舞ったあと、九条は平気な顔をしていた。平気だと言っていた。だが、そのあと三十分、咳が止まらなかった。本人は最後まで「問題ない」と言い張った。真壁は保健室に連れていこうとして、九条と喧嘩になった。

 数か月前もそうだった。

 古い資料室で埃を吸い、九条は口数を減らした。平然としているようで、呼吸の間隔だけが狭くなった。本人は気づかれていないつもりだったが、真壁にはわかった。九条は苦しい時ほど、余計なことを言わなくなる。

 あの通路を通ったなら。

 昨夜の状態で。

 薬を盛られ、呼吸が浅くなり、吸入薬を使っていたあの状態で。

 何事もなかったようにベッドに戻れるはずがない。

 咳が止まらない。

 昨晩の扉越しの会話を思い出す。

 会話ですら聞こえたのだ。咳の音となると、漏れ出て廊下の見張りに気づかれる。

 胸が鳴る。

 呼吸が乱れる。

 眠ったふりなどできない。

 真壁は通路を見た。

 答えはそこにあった。

 埃ではない。

 九条の身体の方に。

 二階堂が真壁の顔を見た。

「どうした」

「埃がひどい」

「だろうな」

「俺でこれだ」

 二階堂は、一瞬で意味を理解した。

 表情が変わる。

「九条なら」

「無理だ」

 真壁は言った。

「通るだけならできる。だが、あの埃の中を、身をかがめて通って、何事もなかったようにベッドへ戻るのは無理だ」

 二階堂は通路の奥を見た。

「喘息か」

「ああ」

 九条は喘息がある。

 普段はコントロールしている。大きな発作を頻繁に起こすわけではない。だが、埃、湿気、冷え、疲労、薬の影響。それらが重なった状態で、あの通路を通ればどうなるか。

 咳が止まらない。

 呼吸が乱れる。

 眠ったふりどころではない。

 真壁は、九条が昨夜、吸入薬を使っていたことを思い出した。あの時点で呼吸は狭くなっていた。そんな状態で、埃だらけの通路を往復するのは自殺に近い。

「九条が通ったなら、部屋に咳の痕跡が残る」

 二階堂が言った。

「水を大量に飲んだ跡とか、吸入薬を何度も使った跡とか」

「それに、本人が隠せない」

 真壁は続けた。

「九条は我慢する。だが、発作は我慢で消えない。あの状態で戻ってベッドに横になれば、呼吸音でわかる。俺たちが扉を壊して入った時、九条は浅く眠っていた。咳き込んだ後の呼吸じゃなかった」

「なら、九条は通っていない」

「おそらくな」

 二階堂は小さく息を吐いた。

 安堵ではない。

 安堵したいのに、まだできない息だった。

「問題は、誰が通ったかだ」

「ああ」

 真壁は、もう一度通路の入口を見た。

 誰かが通った形跡はある。

 だが、その形跡は「九条が通った」と見せるには十分で、「九条が本当に通った」と言うには足りない。

 犯人は、九条の体格を利用した。

 隣室。

 隠し通路。

 消えた予備鍵。

 開けられた水。

 眠る九条。

 左手風の血文字。

 それらを並べれば、九条犯人説は成立する。

 成立しすぎる。

「真壁」

 二階堂が低く言った。

「これ、誰かに言うか」

「言う」

「九条は無理だと?」

「違う」

 真壁は首を振った。

「九条は疑える。だが、その疑いは崩せる。そう言う」

 二階堂は少しだけ笑った。

「嫌な言い方だな」

「九条ならそう言う」

「だろうな」

 二人は久我山の部屋を出た。

 廊下には常盤怜が立っていた。顔色が悪い。隠し通路の存在を思い出したことを、自分の失態だと思っているのだろう。

「中は」

 常盤が聞いた。

 二階堂が答える。

「通路はあります。誰かが通った形跡もある」

 常盤の喉が動いた。

「九条先生が」

「まだ決めていません」

 二階堂は言った。

「決めるには早い」

 真壁は常盤を見た。

「この通路を知っていた人間は?」

「昔の管理者なら」

「今の人間では?」

「私は、話として聞いた程度です。実際に開くとは思っていませんでした」

「白井さんは知っていたと思いますか」

 常盤は答えるまでに、少し時間がかかった。

「知っていたかもしれません」

「なぜ」

「資料館で、旧迎賓館の改修記録を調べていたことがあったので」

「いつ」

「今年の春頃です。哭島再生プロジェクトの展示準備で」

 春。

 白井が宗像を訪ねた時期も、今年の春だった。

 真壁はその一致を覚えた。

 食堂へ戻ると、全員の視線が集まった。

 九条は同じ席にいた。背筋を伸ばしているが、顔色は悪い。左手は膝の上に置かれている。わざと見えるようにしているのかもしれない。隠せば疑われる。出せば、左利きだと思われる。犯人は、九条の身体の置き方まで縛っている。

 二階堂が全員に言った。

「久我山さんの部屋と九条の部屋の間に、古い点検通路がありました」

 食堂がざわめく。

 由良が両手で口を押さえた。

 麻生は目を見開いた。

 白井透子は、ほんの少しだけ目を伏せた。

 宗像恵は、九条を見ていない。窓の外を見ている。

「誰かが通った形跡もあります」

 二階堂は続けた。

 ざわめきが強くなる。

 九条は動かなかった。

 真壁は、九条の横に立った。

「普通に推理したら、九条が犯人になる」

 食堂が静まり返った。

 二階堂が真壁を見る。

 九条も、わずかに顔を上げた。

 真壁は続けた。

「九条の部屋と久我山さんの部屋は隠し通路で繋がっていた。九条は朝、起きてこなかった。部屋は内側から施錠され、予備鍵は消えていた。久我山さんは隣室で死んでいた。血文字は左手で書いたように見える。九条は左利きだ。九条の水には何かが入っていた可能性があるが、自作自演とも読める」

 九条は黙って聞いていた。

 責められている顔ではない。

 自分を含めて、事件を眺めている顔だった。

「だから、九条犯人説は成立する」

 由良が小さく泣いた。

 麻生が何か言いかけて、飲み込む。

 常盤は目を伏せた。

 白井は動かない。

 真壁はそこで言葉を切った。

「だが、成立しすぎている」

 二階堂の表情がわずかに変わった。

 真壁は通路の方を指した。

「通路は埃だらけだった。人一人が通るだけで、喉に入る。俺でも咳が出た。九条は喘息がある。昨夜の時点で呼吸が悪く、吸入薬を使っている。あの状態で埃だらけの通路を往復し、久我山さんを殺し、右目を奪い、血文字を書き、自室へ戻って眠ったふりをする。無理だ」

 久我山の死後、初めて食堂に別の沈黙が生まれた。

 疑いが消えた沈黙ではない。

 疑いの形が変わった沈黙だった。

 九条は真壁を見た。

 真壁も見返した。

「お前を疑った」

 九条は目を伏せない。

「正しい」

「普通に推理したら、お前が犯人になった」

「だろうな」

「だから潰した」

 九条の口元が、ほんのわずかに動いた。

 笑ったのではない。

 けれど、少しだけうれしそうに見えた。

 九条はそういう顔を、滅多にしない。

 誉められても、助けられても、礼を言われても、ほとんど表情を動かさない。だが今の顔は違った。真壁が自分を信じたからではない。自分を疑った上で、きちんと潰したからだ。

 そのことが、少しだけうれしかったのだろう。

 真壁は、それに気づいて顔をしかめた。

「お前、埃の話を聞いた時点で真っ先に気づいてただろ。なんで最初から自分で言わなかった」

 九条は、わずかに視線を逸らした。

「俺が言うより、第三者が気づくほうが、強度が高い」

「お前なぁ……」

 真壁は、呆れて声を失いかけた。

 二階堂が額を押さえた。

「九条は九条だよ……」

 九条は淡々と言った。

「自分に都合のいい推理を、自分で提示するのは弱い」

「それは正しいけどな」

 二階堂が言う。

「正しいけど、具合悪い時くらい自分で弁護しろよ」

「弁護ではなく検証だ」

「そういうところだよ」

 真壁は小さく息を吐いた。

「礼は言わない」

 九条が言った。

「いらない」

「疑えと言ったのは俺だ」

「だから疑った」

「それでいい」

 二階堂が二人を見て、肩の力を抜いた。

「お前ら、こういう時だけ会話が通じるな」

 九条は答えなかった。

 真壁も答えなかった。

 まだ終わっていないからだ。

 九条が犯人ではない可能性は高くなった。

 だが、犯人が誰かはわかっていない。

 その時、宗像恵が立ち上がった。

「次は、私ですね」

 全員が宗像を見る。

 宗像は窓の外を見ていた。

 雨は細くなっている。だが、雲はまだ低く、海は灰色に荒れている。旧迎賓館の中庭の向こうに、土蔵の屋根が見えた。黒ずんだ瓦。湿った漆喰。使われていない収蔵庫。

 土。

 童歌の最後の言葉が、全員の中に浮かんだ。

 いつつ、祈らぬ心を土へ。

「宗像さん」

 二階堂が言った。

「今は座ってください」

「私は、祈れなかったんです」

 宗像の声は、驚くほど静かだった。

「兄が消えた夜、私は見ました。兄たちは海へ行っていなかった。防空壕の方へ行った。そして、小さな女の子が後を追っていた」

 白井透子の指が、膝の上で強く握られた。

 真壁はそれを見逃さなかった。

 宗像は続けた。

「夜中、その子に会いました。泥だらけで、泣いていました。お兄ちゃんたちは海へ行ってない。防空壕にいる。助けて、って」

 由良が息を呑んだ。

「でも、私は逃げました。怖かったから。大人の声がしたから。あの子がこっちへ来ようとしたのに、私は逃げた」

 食堂は沈黙した。

 九条が目を細める。

 真壁は宗像から目を離さなかった。

「その子の名前は」

 宗像は、ゆっくり口を開いた。

「佐久良心春」

 白井の肩が、小さく震えた。

 その反応は、あまりに小さかった。

 だが、真壁には十分だった。

「白井さん」

 真壁が呼ぶ。

 白井は顔を上げた。

「あなたは、その名前を知っていますね」

 白井は答えなかった。

 答えないことで、知っていると認めているようなものだった。

 宗像は、声を絞り出すように続けた。

「今年の春、白井さんが私を訪ねてきました。心春ちゃんを見たかと聞かれました。私は、知らないと言いました」

「なぜ」

 二階堂が聞いた。

「怖かったからです。十七年前も黙った。大人になってからも黙った。兄が事故ではないと認めることも、心春ちゃんを見捨てたと認めることも、できませんでした」

 宗像は自分の胸に手を当てた。

「だから、私は祈れなかったんです。あの子のために、ずっと」

 誰も言葉を返せなかった。

 罪ではない。

 少なくとも、死で裁かれるような罪ではない。

 だが、宗像の中では十七年間、それは罪だったのだろう。

 犯人は、その罪悪感を知っている。

 真壁は白井を見た。

 白井透子は、宗像を見ていた。

 怒っているようには見えなかった。

 泣いているようにも見えなかった。

 ただ、ひどく遠いものを見ている顔だった。

「二階堂」

 真壁は低く言った。

「ああ」

 二階堂はすぐに頷いた。

 説明する必要はなかった。

 次は宗像だ。

 少なくとも、犯人はそう見せたいはずだ。

 童歌の順番は、まだ一つ残っている。

 祈らぬ心を土へ。

 土蔵。

 中庭の向こうに見える黒い屋根。

 犯人は、そう思わせたい。

 ならば、こちらが先に動く。

「全員、ここから動かないでください」

 二階堂の声が、食堂に響いた。

 その声は先ほどまでとは違っていた。

 お願いではなかった。

 命令だった。

「トイレも水も、一人では行かせません。食堂の出入口は私と真壁で見る。窓も開けない。土蔵、資料室、廊下、二階、倉庫、どこにも行かせません」

 由良が震える声で言った。

「でも、次は……」

「だからです」

 二階堂は遮った。

「次を起こさせないためです」

 真壁は宗像を見た。

「宗像さん。あなたは俺たちの見える場所にいてください」

「私を、餌にするんですか」

 宗像の声は弱かった。

 だが、その問いには刃があった。

 真壁は首を振った。

「違います。あなたを、被害者にさせない」

 宗像の顔が歪んだ。

 それは恐怖ではなかった。

 自分が死ぬかもしれないと受け入れかけていた人間が、急にそこから引き戻された顔だった。

「被害者に……」

「させない」

 真壁は繰り返した。

「あなたが何を見て、何から逃げたのかは、後で聞く。今は生きて話してください」

 宗像は、何も言えなかった。

 由良が彼女の手を握った。

 八尋が椅子を引き寄せる。

「ここに。私もそばにいます」

 白井透子は動かなかった。

 その顔を、真壁は見ていた。

 白井は、宗像を見ている。

 感情は読めない。

 けれど、ほんのわずかに、予定が狂った人間の沈黙があった。

 大きな乱れではない。

 だが、白井の静けさの奥で、何かが立ち止まった。

 真壁はそれを見逃さなかった。

 九条が、低く言った。

「犯人は、次を置けなくなった」

 食堂の空気が、また変わった。

 二階堂が九条を見る。

「置けなくなった?」

「順番を作るには、次の点が必要だ。舌、耳、手、眼。残りは心。宗像さんを土の場所へ置けば、五つは完成する」

「それを阻止する」

 真壁が言った。

「置かせない」

 九条は真壁を見た。

 その目に、わずかな光が戻っていた。

 二階堂が二人の間に割って入るように言った。

「今から配置を決める。真壁、食堂の出入口。俺は中庭側の窓と廊下。常盤さん、鍵束を全部ここへ。八尋さん、女性陣のそばに。麻生さん、スマホとカメラはテーブルに置く。白井さん」

 白井が顔を上げる。

「あなたも、ここから動かないでください」

「資料を確認しなくてもよろしいんですか」

「今は人命が先です」

「資料が、人命を守ることもあります」

「今は違います」

 二階堂の声は揺れなかった。

 白井は、しばらく二階堂を見ていた。

 それから、静かに頷いた。

「わかりました」

 犯人が次を置けないなら、次に何をするか。

 それを考えなければならない。

 五つ目を諦めるのか。

 別の形で置くのか。

 あるいは、すでに置いてあるのか。

 真壁は、宗像の顔を見た。

 宗像はまだ震えている。

 だが、生きている。

 その事実が、この場で初めて犯人の順番を乱した。

 時間が過ぎた。

 誰も動かなかった。

 雨はさらに弱まり、やがて窓を叩く音が消えた。代わりに、海の音が遠くから聞こえてきた。潮が動いている。旧連絡橋は、まだ海の下だろう。だが、島を閉ざしていた水は、少しずつ引き始めているはずだった。

 由良は宗像のそばにいた。

 八尋はその隣で、何度も中庭を見た。

 常盤は鍵束をテーブルの中央に置き、両手を膝に置いて座っていた。

 麻生はスマホとカメラをテーブルに置き、視線だけをあちこちに動かしている。

 白井は、まっすぐ前を見ていた。

 九条は、時折浅く咳をした。

 そのたびに二階堂がこちらを見る。

 九条は鬱陶しそうに顔を背ける。

 真壁は食堂の入口に立ち続けた。

 誰も死なない。

 誰も消えない。

 何も起きない。

 それは、奇妙な緊張だった。

 事件の中で「何も起きない」ことが、これほど重いとは思わなかった。

 犯人は、死体で順番を作ってきた。

 ならば、何も起きない時間は、その順番に初めて入った空白だった。

 空白は、ときに死体より雄弁だ。

 二階堂が小声で言った。

「真壁」

「何だ」

「このまま朝まで何も起きなかったら」

「それが勝ちだ」

 二階堂は、少しだけ目を細めた。

「そうだな」

 九条が、聞こえるか聞こえないかの声で言った。

「勝ちというより、順番の破壊だ」

 二階堂が呆れたように振り返る。

「言い方」

「正確だ」

「はいはい」

 真壁は窓の外を見た。

 土蔵の黒い屋根は、雨上がりの空の下で沈黙していた。

 扉は閉まっている。

 誰もそこへ向かわない。

 誰もそこに置かれない。

 真壁は思った。

 犯人の作った物語は、ここで一度止まった。

 止めたのは、推理ではない。

 警戒だ。

 疑いを隠さず、守るべき人間を守り、全員の視線を一か所に集めた。それだけのことだ。

 だが、それだけで救えるものがある。

 少なくとも今、この瞬間は。

 夜が近づいても、誰も死ななかった。

 童歌の五つ目は、置かれなかった。

 その未完成こそが、犯人の最初の失敗だった。

 真壁は、食堂の中央に置かれた鍵束を見た。

 金属の束は、弱い照明の下で鈍く光っている。

 鍵は、人を閉じ込めるためにある。

 だが今夜だけは、人を守るためにそこにあった。

 九条が静かに言った。

「明日、深町さんの現場をもう一度見るべきだ」

 真壁は振り返る。

「なぜ」

「五つ目が置けなかったなら、犯人はすでに置いた四つで勝負するしかない。なら、崩すべきは四つ目じゃない。三つ目だ」

「それで深町さんか」

「そうだ」

 九条は少しだけ息を整えた。

「深町さんの死体だけ、位置がおかしい。誰が犯人でも現場へ往復するのは無理だ。なら、死体は人間が運んでいない」

 二階堂が眉を寄せた。

「死体が勝手に歩いたとでも?」

 真壁は窓の外の海を見た。

 雨の後の海。

 旧連絡橋を沈めた潮。

 島の周囲を回る水。

 まだ答えではない。

 だが、明日見るべき場所は決まった。

「わかった」

 真壁は言った。

「夜が明けたら、深町さんの現場へ行く」

「俺も行く」

 九条が言った。

 二階堂が即座に言う。

「駄目だ」

「行く」

「お前な」

「見なければ、間違える」

 二階堂は何か言いかけ、やめた。

 真壁は短く言った。

「明日の体調次第だ」

「体調で真実は変わらない」

「体調でお前は倒れる」

 九条は不満そうに黙った。

 二階堂が小さく笑った。

 それは、久しぶりに食堂に生まれた、人間らしい音だった。

 外では、雨が完全に止んでいた。

 誰も死ななかった夜が、ゆっくりと島に降りてきた。


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