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第九話: ショッピングモールでデート

週末、尊たちは市内でも最大級のショッピングモールへと繰り出した。

表向きは気分転換や琥珀の社会学習だが、本音を言えば奇妙な縁で結ばれた三人で遊びたかったからである。


「見て尊、この新作のアクセ、私に似合うと思わない?」

鏡花はツインテールを揺らし、流行のショート丈のトップスで周囲の視線を独占していた。

通り過ぎる人たちが思わず振り返るほどの美少女ぶりだが、本人は尊の反応以外には興味がない様子だ。

「えっ、ああ、うん、似合ってる。」

「反応薄っ!…もういい、やめとく」

尊の素っ気ない返事に鏡花は拗ねたようにアクセサリーを棚に戻した。


一方で、清楚なワンピースを纏った琥珀は、膨大なお店の数と品物の数に圧倒されて、

口を開けて感嘆の声を漏らしている。

尊は微笑ましく見えていると、ふと周りを見ると他に数人の客が同じように琥珀に見惚れていた。

変な輩に絡まれないように尊は自然な動作で琥珀の小さな手を握った。

「…琥珀、はぐれないようにね」

「あっ、はい、姉様!」

琥珀が嬉しそうに顔を赤らめた瞬間、尊の逆側に強い衝撃が走った。

「ちょっと、私を置いてけぼりにしないでよ!」

鏡花がムッとした顔で、尊の空いている方の手を力一杯握りしめてきた。

結局、尊を真ん中にして三人は手を繋いで並んでお店を見て回ることになった。


「見て、あの三人すごく可愛い。撮影か何かかな」

周囲のひそひそ声が聞こえてくるが尊は気にせずに前だけを見て歩く。

しかし両手から伝わる二人の体温に心臓の鼓動は少しだけ早くなるのを感じていた。


一通りお店を見て周り、買い物を終えた三人はテラス席のあるカフェで休憩することにした。

「ねぇ、尊、あんたパフェなら何味が好きなの?チョコ?それともベリー?」

鏡花が身を乗り出して聞いてくる。

「強いて言うならチョコかな」

「ふーん、チョコね。覚えておくわ。」

鏡花はそういうと真っ先にレジに走り、特大のチョコパフェを買って戻ってきた。

「ほら、これあんたにプレゼント。…別に深い意味なんてないんだからね。」

「え、うん、ありがとう」

尊がスプーンを手に取ると、隣で琥珀が目に見えてシュンと肩を落とした。

「…ずるいです。鏡花ちゃんだけ。私も姉様に何か差し上げたかったのに…」

「琥珀、気にしなくていいよ。一緒にパフェ食べよう」

尊がパフェをスプーンで取り、琥珀に差し出そうとした。

鏡花はそれを手を出して止める。

「ちょっと!私が尊にあげたパフェなのに、なんでいきなり食べさせてあげるのよ。」

鏡花は頬を膨らませて怒り出した。

尊はやれやれとばかりに二つの皿にパフェを分けて、鏡花と琥珀に差し出した。

「…あむっ、美味しいです。姉様」

琥珀はぱあっと顔を輝かせた。

「鏡花もありがとう、こんな美味しいパフェを三人で食べれて嬉しい」

「…ふんっ、どういたしまして」

鏡花は照れくさそうに顔を背けた。

尊はそんな鏡花のために、こっそり席を立って、

近くの菓子店で焼きたてのクッキーを二袋買ってきた。


「はい、これは鏡花にプレゼント。鏡花も琥珀も一緒に食べよう」

「…ありがとう…私このクッキー大好きなの」

「わぁ、ありがとうございます!」

三人は賑やかにお菓子を囲み、夕陽を眺めながら穏やかで楽しいティータイムを過ごした。


帰り道、街はすっかり暗くなっていた。

薄暗い路地裏を通る時に、街灯の届かない暗がりから、ひたひたと濡れた音が聞こえた。

尊がそちらに目を向けるとそこにはボロボロの古着をまとう

不自然に足回りが細く腹回りが太い体躯の怪しいものが立っていた。

顔はフードで隠されていて見れない。

尊は琥珀、鏡花を守るように二人の前にたった。


「返せ…贄を…」

そう言うやいなや、そのものはすごい跳躍力で飛び上がり、こちらに向かってくる。

跳躍でフードが取れて、顔が見えた、それは蛙のようだった。

尊は二人を背にかばい、飛び込んできた蛙の腹部に渾身の正拳突きを叩き込む。


ヌチャ

(…手応えがない!)

尊の拳は柔らかい皮膚に深く沈み込み、衝撃を吸収されてしまった。

「キシャァァァ」

蛙の口が開き、中から赤く長い舌が獲物を絡め取ろうと尊の首筋に伸びる。


尊は瞬時に腰元から家計に伝わる短刀を抜き去ると、空中で閃く一筋の銀光


スパッ

「ギ、ギェェェェ」

鋭い刀が伸びた舌を根本から切り裂いた。

尊は短刀を構え直し、蛙を睨みつける。

その瞳にはいつもの優しいものではなく、冷徹な殺気が宿っていた。

一言も発さず、獲物を見据える。


「ヒィ、ヒィッ!」

蛇に睨まれた蛙。蛙は恐怖に体を硬直させて動けない。

尊は相手に戦意がなくなったことがわかると短刀を納めた。

「立ち去れ」

その瞬間に蛙は動き出せるようになり、一目散に闇の中へ逃げ去っていった。


「姉様…」

「尊…」

「大丈夫、二人とも?」

振り返った尊の瞳からは先ほどの恐ろしい殺気は跡形もなく消えていた。

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