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第十話: 襲撃者再び

その日、尊は大学の授業が遅くまで続く日だった。

こういった日は琥珀が一人で夕ご飯の買い物に行ってくれていた。

しかし猿や蛙の追手からも次は別の追手が来るのではないかという不安が尊に張り付いていた。


一方の琥珀はスーパーの帰り道を急いでいた。

夕陽でまだ明るい時間帯だが、日陰の暗い道を通る時に琥珀は少し怖くなる。

尊から渡された護身セットのお札と塩と非常ブザー、

鏡花からいざとなったら押し当てるようにと渡されたスタンガンを握りしめながら歩いていた。


(あともう少しでお家。大丈夫、私は強い子)

自分に言い聞かせるように歩く琥珀。しかし背後から響く地鳴りのような唸り声が聞こえた。

「…贄よ、主様の元へ帰るのだ」

振り返るとそこには二メートルをゆうに超える巨体の熊の怪異が立っていた。


「ひっ…」

琥珀は本能のままに走り出した。しかし相手は巨体にも関わらず俊敏だ。

琥珀はお札を投げつけ、塩を撒き、隙を作りながら必死に逃げる。

住宅街を抜けて、廃墟へと逃げ込んだ。

埃の舞う廃墟の一室。琥珀は息を殺し、室内に身を潜めた。

しかし相手は嗅覚の鋭い獣だ。


ドスン、ドスン

重い足音が近づき、部屋のドアがなぎ倒される。

心臓の音が高鳴り恐怖に震える琥珀が絶望に瞳を閉じたその瞬間。


「私が相手だ。この化け物め」

聞き慣れた低く凛とした声。

琥珀が目を開けると、そこには静かな怒りに震える尊が立っていた。

有事の時に備えて琥珀の持つスマートファンのGPS情報を、尊は常に自身の端末で監視していたのだった。

そしてその日の怪しい動きを見て、すぐに駆けつけた。授業はサボってしまった。


現れた熊は見るからに皮膚は硬く、波の攻撃は通じないことが見て取れる。

短刀程度では皮を通さないだろう。

目玉など柔らかい部分に差し込めればだが、長爪に切り裂かれそうで近寄れない。


(間合いが足りないなら、これを使うしかない)

尊は背中から長い刀を取り出す。

「…姉様、どこにそんなものを」

唖然とする琥珀。

「護身用の特注品。もしもの時の最終手段に持ってきた」

尊が刀を正眼に構えた瞬間、空気の密度が変わった。

熊の怪異が本能的に恐怖に一歩退くが、恐怖を怯えながらも尊に向かって突進する。

尊は負けじと前に踏み込み、突進を避け、横一線に銀の閃光が走った。

熊の巨漢は真っ二つに両断され、怪異は声も上げられず、黒い霧となって霧散した。


廃墟からの帰り道、尊が背中にお大きな刀を背負っていると、警察官に呼び止められた。

「ちょっと君、銃刀法違反の疑いがある。その背中のものはなんだ?」

「…これですか、これは演劇用の模造刀です。」

「いや、雰囲気が怪しすぎる。中を見せてもらおう。」

「危ないので触らないでください。」

「やっぱり本物の刀じゃないのか? 署まで来てもらおうか」

万事休す、オドオドする琥珀を横目に尊は考える。

実家に連絡して、裏の手を使ってもらうしかないか、と尊が諦めかけたその時。


「あーら、尊じゃん。また変なことに巻き込まれてるわね」

ひらひらと手を振りながら鏡花が現れた。

「お巡りさん、ちょっといいかしら?」

鏡花は警察官に歩み寄り、自身のスマホ画面を見せながら、何か耳打ちすると警察官は深々と頭を下げて去っていった。

「一体何を言ったんだ?」

「まあね、色々あるのですよ。」

鏡花はいたずらっぽく笑ったが、その瞳は尊のことを全て見通しているかのようだった。

不思議に思いながらも助かったので尊は感謝を伝えた。


琥珀と尊は部屋に戻る。琥珀はひどく落ち込んでいた。

「ごめんない、姉様、私が一人外に出たばっかりに」

「琥珀は悪くない。私のために買い出しに行ってくれたんだよね。

悪いのは私たちの平穏を邪魔するあいつらだ」

尊はそっと琥珀を抱きしめる。琥珀も尊の温もりを確かめるように強く抱きしめ返した。


このまま追手が来続けるなら、尊がずっとそばにいられるわけではなく、いつかは琥珀がさらわれてしまうことは明らかだった。

攻め込まないといけない、尊は思った。

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