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第十一話: 再び山へ

廃墟での熊の怪異との戦いを終え、尊は決断した。

責められるばかりでは防御はいつか必ず突破される。

尊は敵地に向かい攻め込むことを決めた。

尊は琥珀のことは鏡花に託すことにした。


「鏡花、頼む。私が戻るまで琥珀を見ていて」

「ちょっと、尊、本当に一人で行く気!?」

「私も独り立ちできるようにならないといけないんだ。今がそれを証明する時かもしれない」

「…わかった。私はあなたを信じる。早く帰ってきてね。」

鏡花は尊の手をギュッと握り、祈願するように目をギュッとつぶった。


そして尊は刀を背負い、かつて琥珀となったあの石を拾った山へと向かった。

山を進むにつれて、以前とは違い空気は重く、湿った怪しい妖気を感じる。

今回は尊のことを山が招いていないようだった。

尊はそれを感じつつも、妖気が強くなる方向へ感覚的に進んでいった。


一方で、尊のアパートでは琥珀と鏡花が居心地の悪い沈黙の中にいた。

「…お腹、空いたわね。何か買ってくるわ」

鏡花は立ち上がる。

「何か食べたいものある?」

「姉様を待ってますから…」

と尊は答えるだけだった。

「健気ねぇ。わかった二人分適当に買ってくる」

鏡花が玄関の扉を開けた。

そこには待ち構えていた猿と蛙の怪異がいた。

「あっ」

鏡花は虚をつかれ声をあげた。

一瞬遅れて胸元のお札を取り出そうとしたが、すでに妖気が二人を飲み込んでいた。


尊がたどり着いたのは山の奥深く。そこには朽ちた社と雨をはらんだ黒い雲が渦巻く不気味な広場があった。

黒い霧の中から現れたのは大木のような太さの強大な蛇が現れた。


「よくぞここまで参った。しかし贄は返してもらうぞ」

社の足元にぐったりと横たわる琥珀と鏡花の姿があった。

「鏡花!琥珀!」

駆け寄ろうとする尊を大蛇の鋭い眼光が制した。

「動くな。近寄ればこのものたちの命をすぐに吸い尽くしてくれよう」

尊はたちの柄を握る手に血が滲むほどの力を込めた。

人質を取られている以上、軽率な一歩は許されない。


「取引をしよう。贄の子を解放して欲しくば別のものを献上せよ」

「別のものって、私では代わりにならないのか?」

「お前からは反吐が出るほど忌々しい匂いがする。

かつて我が肉を焼き、この地に封じたあの男の血だ。お前など食らえるものではない」

尊の先祖とこの山の神はかつて何らかの関係があったようだった。


「この女はどうだ。こちらも嫌な匂いがするが、実に芳醇で美味しそうだ」

大蛇の長い舌がが鏡花をなぞる。

「っひ」と怯える鏡花、鏡花は意識を取り戻しているようだったが、

恐怖で震えている。


「やめろっ!」

「どうだ、この女を置いて立ち去れ」

「…断る。そんな取引できるわけない。その子は大切な人だ。私は二人を連れて帰る。」

その言葉に鏡花の瞼がかすかに震えた。尊の言葉が鏡花の奥底に深く響く。


「お前が双方を救おうというなら仕方がない。お前を亡き者にし、双方ともに我が地肉にしてくれるわ!」

大蛇が咆哮した。それは衝撃波のようだった。

尊は全力で踏み込み、太刀を振り上げた。しかし相手は熊や猿とは次元の違う存在。

このレベルの相手と尊は対峙した経験はなかった。

大蛇が強大な尾を一閃させる。

その羽ばたきのような動作が生み出した突風が尊の体を木の葉のように吹き飛ばす。

背中から大木に叩きつけられ、肺の空気が全て吐き出され。

(…動け…私はまだ…)

薄れゆく意識の中で、太刀が手から滑り落ち、膝から崩れて、深い闇へと沈んでいった。

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