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第十四話: 毒

尊は自身の体についた毒液と琥珀についた蛇の粘液を川の水で落とした。

そして琥珀をその腕にだき、意識が飛びそうになるのを必死に耐えて山を降りてゆく。

洗い流したとはいえ、毒気はすでに全身を蝕み、視界は激しく揺れている。

「あと少し…」

街の明かりが見え、病院の白い建物を前にして、尊の糸が切れた。

「姉様!?」

琥珀の叫び声が響く中、尊はアスファルトの上に崩れ落ちた。


そこへ、後を追ってきていた鏡花が駆け寄った。

「尊…よくやったけどなんて無茶を…」

鏡花は尊を病院へ運び込むと同時に事情を説明し、別室へと隔離させた。


何時間が経とうとも尊は目を覚まさなかった。顔色は青白く、呼吸は浅い。

医師たちにとっては原因不明の症状だった。

蛇の強烈な呪いを含んだ毒は現代医学でも魔の術でも回復させることはできない。


涙を流す鏡花の横で、琥珀はかつて生きていた時代の記憶を手繰り寄せる。

「…伝説で聴いたことがあります。山神様の毒は生けるもの全てをからし尽くしますが、

その毒を吸ってなお咲き続ける花があると。そしてその花を煎じて飲ませれば毒気を無くすことができると…

私もう一度あの山に行きます」

「…それ本当なの?その花を飲ませれば尊は助かるのね?」

「はい、おそらくは…」

「可能性があるならそれに賭けるしかない。あんたがいくなら私もいくしかないでしょ。」

鏡花は涙を拭った。


鏡花と尊は再び山へと向かった。向かうは二人が捕えられた場所から、

尊が毒気を当てられた場所へ向かう。

「あんたあの蛇から見逃されたんでしょ。自由になれたのにわざわざこの山に戻るなんてどうかしてる。」

「姉様をお助けしたいのです。」

「…あんたのそういう真っ直ぐなところ、嫌いじゃない。だからついてきた。」

「それに姉様を助けて、あんなことやこんなことをしないといけませんし」

「ちょ、ちょっと!あんなことってどんなことよ!それは許さないからね!」

「ふふ、姉様は私のものですから」

緊迫した空気の中、二人の間には奇妙な絆が芽生え始めていた。


尊が毒気を当てられた場所に到着すると、まだそこには毒気が渦巻いているようで

付近の草木は枯れていた。しかし一箇所だけ鮮やかに紫色の花を咲かせている場所があった。

「ありました! あの花です、枯れていません!」

琥珀と鏡花は手分けして、夢中でその花を摘み取る。


「これだけあればいいでしょう、急いで帰ろう。尊が待ってー」

鏡花の声が凍りついた。二人の背後に巨大な影が落ちる。

ゆっくりと振り返るとそこには半身を失った山神が二人を見下ろしていた。


逃げ出そうとするも大蛇は素早く二人を包囲するように回り込む。

二人の前に逃げ場のない絶望が立ち塞がっていた。

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