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『初めて見た、思わぬ一面』

 旦那様様達のいる部屋に戻ると、早速感想を言われた。


「エミリア、とても似合ってるよ。素敵だ。」

「もう立派なレディね。」


 少々照れくさかったが、褒められて嫌な気分になる人なんていないだろう。私は「ありがとうございます」と素直にお礼を言った。


 ただ、一つ言いたいことがあるとすれば、まだ三歳の幼女にレディは早いと思う。

 そして宝石の件も私はまだ諦めていない。せめてもっと安そうなものに交換してほしいのだ。


 その旨をそのまま伝えると、返ってきた答えはこうだった。


「だめだよ。親が子に物をあげるのは当たり前だからね。」

「そうよ、エミリアちゃん。私達が子供にあげる初めての贈り物はその宝石って決めてるの。」


 わかるよ。わからないけど分かるよ。

 私は二人の言葉に心の中でなんとなく同意する。


 もちろん贈り物は高いほうがいいとは思う。人によっては贈り物は値段ではなく気持ちとか言う人もいるかもしれないが、私は断然値段派だ。

 だって値段が高ければ、壊れにくく長く使えるし、見た目も良いものが多い。その他にオプションもいっぱいあるだろう。


 だが、それが我が身となれば別の話である。

 

「私は、こんなに高い贈り物は受け取れません。」


 だから私ははっきりきっぱりと拒否の言葉を口にした。

 

 それが相手にどれだけの衝撃を与えるかも理解せずに―

 


 私は拾われた子供。旦那様とも、奥様とも血が繋っていない。私をなぜ養女にしたのか分からないし、聞くのすら怖いが、それは誰もが知る事実だ。

 そして今更だが、旦那様の経営しているのはデスモス商会というこの国きっての大商会。そこではもちろん多くの人が働いていて、私も仕事場への行き来の自由を許されているのだが、興味のなかった私は今までそこを訪れたことはなかった。だが教会へ行った翌日、なんとなく気が向いた私は初めてそこを訪れ、そして聞いてしまったのだ。


『ねぇ知ってる?旦那様が新しく養子に迎えたのって女の子らしいわよ。しかもまだ三歳だって。』

『えっ、それ本当?確かここの旦那様って働けない人はそれが例え子供だろうと追い出すって話じゃなかった?』

『私もそう聞いてたんだけど、流石の旦那様もまだ赤ちゃんって言ってもいいぐらいの子供には甘かったってことでしょ。』

『ええー。なんかそれ嫌だなあ。旦那様も誰かに甘い所があったのね、本当。』

『まあ、だとしても私達下っ端には関係ないでしょ。』

『それもそうねぇ。っといけないいけない。そろそろ仕事戻ろうか。』


 休憩時間だったのか、しばらくおしゃべりをしていた女性二人はそのまま仕事に戻っていった。

 その会話を廊下を曲がった場所で聞いていた私は、二人が離れていく足音を聞きながらも、ショックでしばらくその場から動くことができなかった。 


 考えればわかることなのだ。なんの見返りもなく、それが例え子供だろうと養子になんてできるわけがない。彼女達の言うように、旦那様が使えないやつはいらないとう主義の人なら、私がここにいられるのは何か利益があるからだ。

 でも、もし。もし、私が役立たずと判断されたら?そしたらどうなる?

 彼女達のおしゃべりの内容を真に受けるのは間違いだって分かってる。分かってるけど、それでも全てが嘘ではないのだ。




「貰えません。ごめんなさい。」


 ただ施しを受けるだけでは、いつ捨てられてしまうか分からない。

 そんな恐怖がこの時の私の心を占めていた。 



「どうしてもかい?これはエミリアの為に作らせたものだ。……君、これを買わなかったらどうなる?」


 旦那様が困った表情で私を諭す。それでも首を横に振る私を見て、今度は店員に話の矛先を変えた。


「はい。こちらは特注品となりますので、作成費のお代をお返し頂き、石の方は取り外させて頂くことになりますね。」

「そうか……。エミリア、本当にいらないのかい?」


 もう一度そう聞かれて、私は今度は首を横に振ることができなかった。


 い、意地が悪いっ!そんな話されていらないとか言えないでしょ!


 私は顔が引つらないようにするだけで精一杯だった。

 普通の子供相手にはこの方法は有効ではない。そんなこと旦那様もわかっているはずで、なのに私にはこの対応。やっぱり普通の子供とは思われていない証拠である。


「う、受け取らせていただきます。」


 私は渋々、本当に渋々、そう言った。

 結局、私には選択肢なんて残されていなかったのだ。

 というか、養子に贈り物をどうしても受け取って欲しかったからって、普通ここまでするか?

 

 私はその日、初めて旦那様達の思わぬ一面を垣間見てしまい、心底呆れ果てたのだった。

 

このあとリアルが忙しくなるので、2月か3月まで更新ストップします。もし息抜きで書き上がったら、数話ぐらいは上げるかもしれませんが、あまり期待せずにお願いしますね。

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