『子供の行動力はすごい』
えっ?アレクがなんでここにいるの?仕事に行ってたんじゃないの?どういうこと!?
私予想外の事態に狼狽える。
「アレっ……」
「シーッ。大きな声を出してはいけないよ、エミリー。」
アレクは口に人差し指に当てる仕草をする。
私はそれにぐっと押し黙った。
確かにあの男がいなくても、扉の前には見張りがいるかもしれない。
私はそう考え、できるだけ小さな声で質問する。
「アレクくんがどうしてここにいるの?」
「もちろん、エミリーを迎えに来たんだよ。」
え、そんな女装姿で?
笑顔でそんなことを言うアレクに、一瞬そんな考えが頭の中に浮かんだが、辛うじて声には出さなかった。
私はなんと言えばいいか分からず、取り敢えず曖昧な表情でお礼を言う。
「あ、ありがとう…。」
「うん。じゃあ時間もないし、ここからの脱出方法を説明しようか。」
「あ、うん。」
サクサク進んでいく話においていかれないように、必死で食らいつく。
って、そういえばシュリエは?
私はやっとその存在を思い出して、話を聞く前にアレクに問いかけた。
「アレクくん。そこでシュリエが寝てるんだけど、聞かせた方がいいよね?」
「ああ……うん。…いや、あの子にはやめておこう。恐らく怯えのせいで話してもその通りに動けないと思う。」
「…あ、そうだよね。」
私はアレクに言われて確かにと納得する。
さっきまで、怯えて震えていたシュリエの姿を見ていたはずなのに、どうやら少し配慮にかけていたらしい。
「今のうちに話をしよう。シュリエが目を覚ます前にね。」
私がそう提案すると、アレクも同意する。
「なら簡単に脱出作戦の説明をするよ。まず、ここから少し離れた所にグレイ達が待機している。僕達の合図に合わせて、皆が注意を引きつけてくれるから、そのすきに僕達は逃げるよ。わかったかい?」
「うん。」
私はアレクの問いに即座に頷く。
シンプルだからこそわかりやすい作戦。子供がいる時はこういう作戦の方がいい。
「合図はどうするの?」
私は一つだけ疑問に思ったことを聞いた。
どうやって注意をそらすのかとか、そういうのも知りたいけど、どうしてか教えてくれないような気がする。だから聞かない。
「合図は……」
アレクが一瞬言い淀む。
どうしたのだろうと思いながらも、静かに答えを待った。
「……魔法を使うんだよ。」
「えっ!?まほっ…ぶっ。」
私はついつい大声で叫びかけて、アレクの手で口を抑えられる。
「静かに!」
アレクにそう言われて、私は何度も頷いた。
そっか、私の反応が分かってたからいい淀んでたのか。
「落ち着いたかい?」
「うん、もう大丈夫よ。ごめんね。今度からは気をつける。」
私は素直に謝る。
正直ちょっと痛かったけど、今のは私が悪かったから仕方ない。
「さっきの続きをお願いします。」
「ああ、分かった。」
私が話しの続きを促すと、アレクは一つ頷いて説明を再開した。
「魔法の合図は、僕が水魔法で一瞬雨を降らせる。すぐにやむから、そうしたら皆が騒ぎを起こす手はずになっている。」
「雨?そんな事できるの?」
天候を操るなんて、レベルの高い魔法じゃないの?
私は疑問に思って質問した。
「いや、一瞬だけで、ここら辺一帯のみなら失敗する事はないから安心して。」
「え、ああ。うん!分かった!」
私はそういう意味で質問したんじゃないんだけど、と心の中で思いながらも返事を返す
はっきり言って、アレクが失敗するとは少しも思っていなかった。その可能性すら思い浮かばなかったほどだ。
「じゃあもう脱出する?シュリエ起こす?」
まあ訂正するほどのことでもないし、このままでいいかと、私は話題を変えた。
「……いや、もうしばらく待機するよ。マルクとガレンがどこに行ったのか分かってないからね。」
あ!確かに!
私はアレクの言葉に納得する。
マルクとガレンが無事じゃないと逃げてもいみないよね。
「ってあれ?どうやって場所探すの?」
二人が見つからなくちゃ脱出できないって事は、一生できないのでは?
私はそう不安に思ってアレクを見た。
「…ああ。それは大丈夫。今探してるから。」
アレクの言葉に首を傾げる。
今探してる?誰が?アレクが?
「探索魔法を使ってるんだ。」
どうやら顔に出ていたらしい。
私の疑問を正確に読み取ったアレクが、微笑みながら教えてくれる。
「そんなものがあるんだ。便利だね。」
私も使ってみたいな。
危うく出かかったその言葉は、何とか心の中に押し留めた。
アレクの前で魔法使いたい話は厳禁だ。今機嫌が悪くなられても困る。
そこまで考えた時、私はふと思った。
ってか私って探索の邪魔じゃね?話しかけすぎたかも。黙っとこ。
私はアレクを探索に集中させるため、それからは静かに待つ事にした。
それから暫くして、アレクがふと呟いた。
「………あ。見つけた。」
「え!どこ!?」
私はその言葉を聞くと、直ぐにアレクに詰め寄った。
「ここから五十メートル離れた小屋にいるみたいだよ。」
私は安堵のため息をついた。
それなら助けられそう。良かった。
そう思って。




