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『謎が謎を呼ぶのはよくあること』

 教会とは神々をお招きする場所。年に一度、奇跡の花が咲く日にご降臨なさる神々を歓迎する場所。神々とまみえる事ができるのは、その年に選ばれた聖職者と純粋な心を持つ子供達のみ。神々に選ばれるため、人々は子供達に礼節を教え、聖職者は善行に日々励んでいる。


 治療院とは、そんな教会の中にあり、聖職者が善行を行うための場所の一つ。真光術という数千人中一人という割合でしか見つからない、特別な癒やしの力――神の御力と呼ばれるものを扱える人々が、病気や怪我で苦しんでいる人々を救う場所である。

 尚、真光術師と断定された者はどんな人間だろうと教会に入る規則がある。それが例え王族・貴族・平民。又は犯罪者だろうと。

 



 以上が、アレクの説明。


 まあ分かったような分からなかったような?

 意味は分かる。でも、神がご降臨とかどこの中二病だよっ!っていうね。

 以前から薄々感づいてはいたけど、この世界には本当に神様がいるらしい。いや、いると信じられているというべきかな?

 ただ、前世と違ってこの世界では実際に目撃されている。まあでもそれが聖職者と子供だけだから、どこまで信じていいかは分からないけど。


 取り敢えずは、知識としては持っておいてその内確認できたらいいな程度の認識でいいだろう。



 今はそんなことよりも、真光術のほうが気になる。

 真光術=治癒術っていうのは分かった。でも、何で使える人が少ないんだろう?何で教会に所属する規則が?真光術は生まれ持ったもの?それとも後天的なもの?

 私の疑問は尽きない。

 

 だが今はその疑問をぶつける相手がいない。

 

 あ、実は既に家に帰ってきているのだ。でもアレクは私を家に送ると仕事に戻った。というより戻した。

 幾ら何でも、私のせいでこう仕事を何度も休ませるわけには行かない。アレクは何も言わないから分からないが、仕事の休み過ぎでクビになられたら私が困るのだ。 


「あ、そういえばアレクが出発直前に渡してきたものがあったよね。」 


 私はそこでやっと、アレクに渡されてそのまま床の上に放置していたものを思い出す。

 

「これは、本?」


 手に取ってみると、それは茶色い表紙の少し薄汚れた一冊の本だった。でも見た目は今まで読んでいた絵本とは違い、前世の小説に似ていた。


(え?何で今になってこれを?今まで文章だけの本は避けてるフシがあったのに。)


 私は怪訝な顔で首を傾げた。

 今までは私が小さな幼女だからだと思っていたけど、このタイミングでこういう本を渡してくるってことは違ったの?


「………まあでもせっかくの機会だし、読んでみようかな。」

 

 暫く考えて、でも答えが出なかった私は、気を取り直すように誰ともなくそう宣言すると早速ページをめくり始めた。



【失われた神についての私の考察】


 一ページ目には、真ん中に一文だけそう書かれていた。不思議な文章だが、これはおそらくタイトルだろう。

 私は次のページをめくった。


『これを読んでいるということは、君は私と同じように失われた神についての記憶を持っているのだろう。まず最初に釘を指しておくが、この本の存在は誰にも明かさない事だ。君がこの本を誰かから借りたのだとしても、その相手がこれを読んでいる可能性は低い。この本を読めるのは、失われた神についての記憶を持つ者のみ。なので君がこの本について話した場合、嘘つきと思われる確率が高い。一般の者には、神話の絵本に見えているのだから。』


 そこまで読んで、私は一旦顔を上げた。


(そうか……。だからアレクは私にこの本を渡したの。絵本だと思っていたから。)


 私は深く納得し、続きが気になって更に読み進めた。

 

『ここからは私の知っている失われた神の記憶を記そう。この本を読んで君がどう思うかはわからないが、どうか最後まで読み切ってほしい。例えどんな真実があったとしても。』


 そこでそのページは終わっており、私は軽く息を吐いた。

 よく分からないが、この書き方だ。この先を読むには勇気がいるということだろう。

 そして気になるのは最初から出てきた失われた神という言葉。

 この本の著者の言っていることが本当なら、これを読んでいる私も持っているというのか?この世界の神の記憶を?異世界人の私が?


 そこまで考えると、私は緊張で軽く震える指先で次のページをめくった。


『失われた神。それは希望。』


 私はその文を読んで、目を見張る。

 そのページにはその一文だけしか書かれていなかったから。


(どういうこと?希望って何の?)


 意味不明な言葉。私はそれが理解できず、眉間にシワを寄せた。


(というかこれで終わり?他になにか書いてないの?)


 私は次のページにヒントがないかと思い、ページをめくった。


「………。」

パラッパラ――

「え、終わった?」


 私は最後のページを開いた時、その結果に呆然とした。

 最後までページをめくって分かったことは、他には何も書いてないということだけだった。

 

 え?失われた神についての記録が『希望』だけって、どういうこと!?


 私はそのあんまりな結果に頭を抱える。見逃しがないかと思って暫くはページを何度もめくり続けたが、結局は新しい情報は何も見つからなかった。





 本を読んで分かったことは、謎が増えたということだけ。私は盛大はため息をついて、その本を閉じたのだった。

 

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