『物事を深く考えないことも時には大切だ』
新事実が発覚しました!
どうやら私は魔力のこもった食べ物は食べれないようです!
ガビーン!
「ちゃんと聞いてるのかな?エミリー?」
「はいっ!聞いてます!」
別のことを考えていた私は、慌てて元気よく返事をする。
結局あの後、グレイに介抱されている間に誰かがアレクを呼びに行ったらしい。
ギリギリ私の尊厳は保たれたのだが、体力がなくなって寝ていたからその後の事はよく分からない。
目が覚めた時にアレクがいて本当に驚いた。
そして現在は、アレクに抱えられて帰宅中。
ついでに私が倒れた原因も知っているというので、その説明を受けながら帰っている。
「エミリーは、後天的魔力摂取拒絶症っていう病気だと思う。」
私はアレクの口から出た、聞き慣れない病名に首を傾げた。
「それはどんな病気なの?」
魔力摂取拒絶症。
そんなものは知識にない。前世に魔力があったかも不明だし、こっち特有の病気だろうか。
「…魔力摂取拒絶症というのは、食物に含まれる魔力を身体が受け付けなくて、体調を崩してしまう病気だよ。普通、食べ物には大なり小なり魔力が含まれている。でもその魔力を微量だろうと受け付けないこの病気は、極めて珍しいものと言えるだろう。症状としては、魔力を含む食べ物を食べると嘔吐したり、お腹を壊したり、熱が出たりする。酷い時には、突然意識を失って倒れてしまう事もある。直接的な死の危険はないが、危ない病気ではある。」
「えっと、その病気を私が持ってるの?」
アレクのどう考えても子供向けではない説明に、私はバレないように顔を引きつらせた。
これを理解するのは不自然だが、わかったふりも良くない。それに、どうしても自分の事だとは信じられない。
私は「まさか自分が……」という思いのまま聞き返した。
「そうだよ。この病気は普通、生まれつき持っているものの筈なんだけど、エミリーは後天的に発症した。覚えてないと思うけど、エミリーがこの病気を発症したのは、ここに来てからすぐの事なんだ。」
アレクは私の頭を撫でながら、少し暗い声で説明を続ける。
「どうして私がその、魔力摂取拒絶症?っていう病気を発症したかわかったの?」
私はもっと詳しい話を聞きたくて、更に質問した。
もうここまで来るとヤケだ。アレクも薄々私が普通の幼女ではないと分かってるから、子供にとっては難しすぎる説明をしてくるんだろうし。
「それは今回こうなるまで、僕も確信はなかったんだ。でも前兆はあった。エミリーは、最近よく熱を出していただろ?短い期間に熱を出す回数が流石に多いから、おかしいと思って秘かに調べていたんだ。」
「えぇ!?」
発熱ってこの身体が弱いからじゃなかったの!?まさかの病気のせい!?
「それは治る病気なの!?」
私は震える声で聞く。持病持ちなんて嫌だよ!
しかし緊張して答えを待っていた私のそんな思いとは裏腹に、アレクはあっけらかんと言い切った。
「うん。治るよ。」
その言い方の簡単さに、きょとんとした表情で私はもう一度聞き返した。
「え、治るの?」
「うん。治る。」
またしてもアレクはあっけらかんと答えた。私は拍子抜けする。
え?…治るのかよ!一瞬深刻に考えた自分が馬鹿みたいじゃないか!じゃあ早く治療しないと!
「どうすれば治るの?」
早く治したい一心で、私はそうアレクに聞いていた。
「えっと、教会の治療院っていう所で真光術師に治して貰えばい………。」
「?」
アレクは言葉の途中で不自然に言葉を途切れさせる。
私はそれを不思議に思いながらも、複数出てきた新たなワードが気になって意識はすべてそちらに向いた。
真光術って魔法!?魔法なの!?というかこの世界にも教会があるんだ!治療院も!ってことは、真光術師は病気を治す医者みたいな存在ってこと!?
私は興奮して色々と考えを巡らせる。そしてその勢いのまま、アレクに視線を向けた。
「教会に行けば治るんだよね!?なら行こう!すぐ行こう!」
私は鼻息を荒くして言い募る。
アレクが若干引いているように見えるが、それは気にしないことが重要だ。
いや、本当は気にしなくてはダメだと思うよ。今回は仕方ないと言うこことで!見逃して!
「いつなら行ける?明日?明後日?」
私は期待に目を輝かせて、黙ったままのアレクを見た。
「……無理、だね。ごめんね。」
アレクは私の視線に耐えきれなくなったのか、申し訳なさそうに謝る。
「え!?な、何で!?どうして!」
行けないってどういうこと!?真光術っていうのは見れないの!?
「うーん。教会の真光術師っていうのは、怪我を治すだけでも平民が一生かかっても払えないようなお金を要求してくるんだ。それが病気ともなると、もっと必要だ。」
私はアレクの言葉に、なるほどと納得する。
「それなら見に行くのもダメなの?」
まあ納得しても、行きたい心が変わるわけではない。私は真光術を見たいのだ。今後の参考プラス、半ば趣味みたいなものも最近は含まれてきている。まあ魔法をそんなにいっぱい見たわけでもないのに、趣味っていうのもおかしな話かもしれないが。
「無理だね。ここから一番近い教会は風の都の中心地だ。僕達二人だけで辿り着ける距離ではないんだよ。」
「……そっかあ。」
私はアレクの言葉に、残念だと肩を落とした。
本当は行きたいけど、これ以上我が儘を言ってアレクを困らせたくはない。いつか独り立ちした時にでも行くことにしよう。
「なら、せめて教会のことについてもっと教えて?特に真光術師について!」
なので私は頭を切り替えて、情報収集に勤しむ事にした。




