『展開が早すぎてついていけない』
「収穫が止まった!皆、これで寝れるぞ!最後だ!踏ん張れぇ!」
「「おぉぉぉ!!」」
グレイが感極まったように叫ぶ。周りはその声に喜びの雄叫びを上げた。
私はそれを聞きながら、目を点にする。
え?収穫が止まった?え、さっき神様に叫んだやつのせい?……いやいやいや。本当に神様がいるとかありえないでしょ。え?ないよね?
私は顔を引き攣らせて、ゆっくり首を横に振った。
有り得ないだろう。そんなこと。
そう思いながらも、どこかで原因はそれだと言っている自分がいた。
もし私のせいなら、収穫量足りないかも……。
余りにも信じられない現実に、現実逃避をした私は今回の事を忘れることにした。
うん。私は何もしてないし、何も考えてないぞ。
「エミリー?どうしたの?」
考え込んでいた私は、突然かけられた声に顔を上げる。
「ほぇ!?グ、グレイくん!?」
私の目の前にはグレイがいて、私は驚きで奇声を上げて飛び上がった。
そんな私の様子に、グレイはクスクスと笑う。
「驚かせてごめん。エミリーがここで何してるのかなと思ってね。」
「え?ここ?」
私はグレイの言葉に意味が分からなくて首を傾げる。
私はアレクに言われた通り、木陰に向かってたはずだけど?
そう思いながら周りを見渡した。
「あれ?」
私がいたのは畑の目の前だった。何故自分がこんな所にいるのか分からなくて、私は目を丸くする。
「で、何でここに?」
「……分かんない。」
グレイに聞かれて、私は自分でも分からないと首を横に振った。
いや、私は本当に何で畑に近寄ったんだ!?
「そうなのか?……まあ、それならここは少し危ない。最近はないけど、ゴキャブリが出ないとも限らないからね。」
「えっ……。」
私はグレイが苦笑しながら言った言葉に固まる。
ゴキャブリ!?まだ出るの!?
私は初めてそれを見た時のことを思い出して、鳥肌が立つのを感じた。
「じ、じゃあ私は戻るね!」
私はそう言うと、その場から去る為にグレイに背を向けようとして「あっ!」と、一つ聞きたかったことを思い出す。
「そう言えばグレイくん。本当に収穫止まったの?」
「うん。そうだよ。」
「…えっと。なら、収穫量みたいなのは……足りて、る?」
私はグレイの顔色を伺いながら恐る恐る聞く。グレイはその質問に一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、直ぐに笑顔になると思いっきり頷いた。
「ああ。もちろんだよ。今までが凄かったからね。有り過ぎなくらいだ。」
「そっかあ。」
私はそれを聞いて安堵の表情を浮かべる。
良かった。ちゃんと皆に配れそうだ。飢えを無くす為に作ったのに、収穫量が足りないとかなったら大変だからね。
「ありがとう!グレイくん!じゃあ今度こそ行くね!また後で!」
「あ、うん。気をつけるんだよ!」
「わかったー!」
そうして私は今度こそ、その場を離れたのだった。
「エミリー、帰ろうか。」
「うん。」
そう言って抱き上げられ、私は首に腕を回す。
結局あの後、木陰に戻った私は収穫が終わるまでそれを眺めて過ごした。
一度シュリエ達がこちらに来ようとしていたようなのだが、グレイに注意されてすごすごと離れていっていた。多分グレイは病み上がりの私に気を遣ったのだろう。まあ正直有り難かったので、その後に向けられた視線も気づかないふりで無視した。
……私って性格悪いかも?
「エミリー?どうしたの?」
「うんうん。何でもないよ。」
考え込んでいた私は、アレクに声をかけられて笑顔を向ける。
何だかんだ言っても、私はやっぱりアレクとの二人の時間が一番落ち着くな。
「あ、そう言えばエミリー。」
「なに?」
話しかけられて、私は首を傾げた。
「家から…あ、僕の生まれた家と連絡が繋がったから、一週間後に迎えが来るよ。エミリーも一緒に行こうね。」
アレクはニコニコと爆弾発言をする。私はそれに困惑の表情で聞き返す。
「えっと。どういう事?」
アレクって孤児じゃなかったの?何で迎え?
私の頭の中は大混乱だ。
そんな私を理解した様子のアレクは、詳しい説明を始めた。
「言ってなかったけど、僕はスラムの生まれではないんだ。誘拐されて、奴隷として売られそうになったんだよ。そこでエミリーと会ったよね。でも奴隷船が沈没して二人でスラムに流れ着いた。それからずっと家に連絡しようとしていたんだけど、やっと繋がったんだ。」
「そ、そうなんだあ。」
私はアレクの身の上話に笑顔を引き攣らせる。
アレク。貴方は軽く話してるけど、それは結構残酷な話ではないかな。笑いながら話すことではないよ。
「それで三ヶ月後に迎えが来るって昨夜連絡があったんだ。だから一緒に行こうね。」
アレクはそう言って話を締めくくった。
「うん。分かったよ。」
私はまだ完全に理解していないながらも、取り敢えず頷く。まあこの先どうなるにしろ、アレクと離れる気はないからどうなっても良いいけどね。そう思いながら。




