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『夢見の朝は最悪だってよく言われる』

「―――、ここで何してるの?」


 誰?誰なの?

 私は夢の中とわかっていながら、その声に必死で問いかける。今を逃したらもう二度と会えないような気がして。


「花の蕾を見てるのよ!――!」


 またどこかから声が聞こえてきた。今度は別の声だ。


「楽しいの?」

「もちろん!――もこっちに来て一緒に見ましょう!」


 二つの声は会話を始めた。やっぱり私はこの声を知っている。

 一体どこで?

 私は正体を突き止めようと、声の聞こえてくる方向へ歩き出した。

 





 ダメだ。

 私は立ち止まった。どこまで行っても何も見えない。私がどこにいるかすらも分からなくなってくる。ここはそんな空間だった。

 私は段々精神的に辛くなってきて、その場に座り込んだ。

 誰の声かは知りたい。でも、ここにいてもわかるような気がしない。


 私は大きくため息をつく。

 今更だが、ここは何処なのだろう。私はここが夢の中だと最初から分かって、いや、知っていた。

 

「この花はいつ咲くんだ?」 

「さあ?でも元気に咲いてくれればいつでもいいの!これが咲いたら、ここで一緒に食事をしましょ!」 

「ああ。そうだな。」


 心温まるような平和な会話。

 でもなぜだろう。私にとっては悲しい会話に聞こえた。


「あ!――、私、――に呼ばれてるの!忘れてたわ!」

「――様に?それは急いだ方がいい。早く行ってきなよ。」

「うん!ごめんね。じゃあまた後でね!」


 あ、声が、音が消えていく。

 私は咄嗟に立ち上がり、もう一度声を追いかけようとした。

 だが誰かがそれを止めるように、突然身体から力が抜ける。私はそれに驚いて、それでも無理やり立ち上がろうとする。

 すると、それすらも防ごうとするように、今度は物凄い眠気が私を襲った。私はどうしてと心の中で叫ぶ。

 しかしそれで現状が変わる訳がなく、結局私は眠気に負けた。既に消えてしまった声を思い出しながら、そのまま深い眠りに落ちていった。

 



____________________





 気づいたら朝。

 そういう事は良くあるだろう。そして熱があるというのもよく聞く話だ。


 うん。自分で言ってて意味わからん。

 どうやら私は混乱しているらしい。取り敢えず何が言いたいのかというと、変な夢を見て朝起きたら熱が出ていたということだ。

 前回からまだ何日も経っていない。これでまた、アレクの過保護で一週間は外に出られない事が決定した。いや、今回はもっと長くなるかも?

 私はそんな嫌な想像にため息をつく。

 今はアレクが寝ているからいいけど、起きたら大変になる。私は割と元気なのに、熱があるというだけで簡単には布団からも出してもらえなくなる。あれは軽く軟禁だろう。

 私は前回のことを思い出して、またもやため息をついた。


 何とか言いくるめられないものか…。


 私がそうやってどう言い訳しようかと考えていると、アレクが身じろぐのが分かった。

 私は咄嗟に目を瞑る。

 だって言い訳が思いつかないから、時間稼ぎに狸寝入りをするしかないのだ。もしかしたら熱があるって気づかれないかもしれないし。


「ぅ…ん。…もう朝か…」


 アレクは目を覚ますと、直ぐに起き上がった。いや、見えてないからそんな気配がしてるってだけなんだけどね。

 そしてアレクはそのまま布団から抜け出して、ゴソゴソと何かを始める。多分、着替えかな?

 

 暫くしてその音が止むと、今度はアレクがこちらに近づく足音が聞こえてきた。

 私はそれに慌てて、息を潜めながら耳を澄ます。

 お願いだから、向こうに行ってー!!

 心の中でそう叫ぶのも忘れない。



 だが私の願いも虚しく、アレクの足音は何故か私の目の前で止まった。更に、その場に座り込む音まで聞こえる。


 私はそれに心の中で悲鳴を上げた。

 どうしてそこに座るの!起きてることがバレたの!?そうなの!?


 私はパニック寸前だ。

 こういう時、どうすれば良いのかわからない。冷や汗が出そう。


 

 私は息を潜めて狸寝入り。アレクはただ座って沈黙。

 そんな状況が暫く続いた頃。

 アレクが極々小さい声で独り言を言った。


「んー?やっぱり、何か違うな。」


 私はその言葉にドキッとする。

 まさか、本当にバレた?


「起きちゃうよね。でも熱だったら?どうしようか。」


 私のドキドキを知らないアレクは、独り言を続けた。私はその言葉にびっくりする。

 え、そっち!?起きてる事じゃなくて、熱があるって事がバレてるの!?

  

 私はアレクの万能さに震え上がる。

 見ただけで人の体調が分かるなんて、もう超人でしょ!いや、もしかしたら子供は風引いてるって見た目でわかるだけ?それならまだ分かる。うん。絶対そうに決まってるよね。


 私はそんな事を考えて現実逃避をする。でもいつまでもそうしてはいられない。

 私は覚悟を決める。

 もうバレてるなら、狸寝入りは意味ないよね。私はそう考えると、そこで寝たふりをやめる事にした。

 

 うん。仕方ないから今回は諦める。

 だけど、お願いだから軟禁から進化して、監禁とかやめてよねー!!

 



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