『仲間はずれはいけないこと』
昼過ぎ、私達は畑予定地にやってきていた。今はアレクと二人だけで、他の皆の到着を待っている状態だ。そして私は何故か、今日も抱きかかえられている。
どうしていきなりこんな行動を取り始めたのかは分からないが、言っても華麗にスルーされるだけなのでもう諦めた。
私が若干悟りを開いていると、ようやく昨日のメンバーが集まり始めた。
まず最初に来たのはリグルスとフック。昨日の夕食でアレクから聞いて驚いたのだが、この二人は兄弟らしい。言われてみればだが、髪も目も色が違うから全然気づかなかった。
次に来たのはジーン、レージ、リリスの三人だ。この三人は一緒に働いて、一緒に暮らしているとアレクが言っていた。働くと言っても、スリとかはしていなくて、普通にスラムで日雇いバイトをして暮らしているらしい。
それはリグルスとフックも同じで、そうじゃなかったら選ばなかっただろうって、アレクは断言していた。
まあそこは私も同意する。
生きる為には仕方ないとも思うが、やっぱり犯罪は犯罪。同情や施しはしても、信用はしない。
そして信用とは、一緒に仕事をする上で最も大事なものだと言っても過言ではない。少なくとも私はそう思っている。
私は心の中でそんな事を語りながら、偉そうに少し胸を反らそうとして、止めた。
独り言で偉ぶるって、自分がやばい奴のようだと思ったからだ。
私は心の声だから誰も聞いていないとわかっていながら、それでも少し恥ずかしくなって目を伏せた。
そして私が一人でそんな事をしている間に、グレイが到着する。
その後ろには見覚えのある子供三人がいた。
「グレイくん、おはよう。今日は他の子も連れて来たの?」
私はアレクにグレイへと近づいてもらい、そう挨拶をする。
「うん、そうだよ。未来への投資をしてくれたエミリーに、少しでもお返しをしていくことにしたんだ。」
「え、」
ま、まさかあの小っ恥ずかしい台詞を覚えてたの!?
私は動揺を隠しきれず顔を引き攣らせる。これで黒歴史が一つ増えた。
私ははあ、とため息をつく。
今日は厄日かもしれない。
「ではエミリーのこと、お願いしますね。グレイ君。」
「はい、分かりました。アレクさん、お気をつけて。」
私が一人鬱々と考え込んでいる間に話しが進んで、終わっていた。
子供達を紹介してもらおうと思ったのに、機会を逃した!
少し残念だが、まあ今はそのことは後でもいい。それより、昨日聞いていたので知ってはいたが、どうやらここでアレクとは一時のお別れらしい。
「アレクくん、お仕事頑張ってね!行ってらっしゃい!!」
「うん、行ってきます。」
地面に降ろしてもらい、私はアレクと行ってらっしゃいの挨拶を交わす。
その後アレクが仕事に向かうのを見届けると、今日は早速畑作りに取り掛かる事になった。
今回育てるのは、『ジャモ』という野菜。これはじゃがいものような見た目で、味も同じだった。
他の野菜も見せてもらったが、見覚えのないものばかりだったのでこれは苦肉の策。育て方も同じだと予想して、今回挑戦してみることにした。
じゃがいもは春と秋の二回栽培できる。今は体感的に春の始まり頃だと思うので、時期も丁度いい。
で、最初は一番大事な土作りから。今回は腐葉土しか見つからなかったので、それを土に馴染ませて、数週間置く。
この間に、種芋の下準備を進める。だがここで問題発生。
ジャモの種芋が何処にあるのかわからない。販売されている食べれるジャモは、病気を持っている可能性が高いので使えないのだ。
困った私はアレクに相談した。翌日にはリグルスが場所を知っているとの事で、買ってきてもらった。
え?お金?あー何も聞こえなーい。きーこーえーなーいー。
と言うことで、下準備を始める。(どういうことだ!)
まず、雨がかからず、弱い光が当たる涼しい場所に、ジャモを2週間ほど並べて芽出しをする。イモの表面がやや青くなり、新芽が出てくれば終了。(種芋が大きすぎる場合は切った方がいいが、今回は全部小さいのでいらない作業である。)
今回は上の二つの作業はもう既に終わらせている。私が家にいる間に、アレクが私の話を覚えていて、作業を進めてくれていたらしい。
やばい。アレク、まじ有能。
さて、ここからが畑作りの本格的なスタート。まず、畑は深さ25cm〜30cmに耕し、株間30cm、畝幅50cmを確保して畝を立てる。
ここの畑は水はけがいいので、そこは気にしなくていいから楽だ。しかし、pHは5.5〜6.0は必要なのに、ここにそれを調べる道具なんてないので、願う事しかできない。それが少し悔しい。
次は肥料投入だ。これは何処からかアレクが持ってきた。しかも、ジャモ専用だと言うのだから驚きだ。
それから肥料を撒き終わると、植え付けをする。
ここで注意だが、土が雨などで湿っている場合は乾くまで待たなくては駄目。今回は乾いているのでいい。というか、この世界に来てから雨なんて見たことないけど。
私は新たな事実に密かに驚きながらも、今はそのことは横において作業に集中する。
と言っても、この後は程よい長さに育って間引く作業をするまで暇なので、その間は日替わりで誰が様子を見にくるのかを決める話し合いをするだけだが。
あ、もう一つ言っておく。
私は今まで偉そうにじゃがいも作りの説明をしてきたが、作業には一切加わっておりません!三歳、いや二歳?…まあとにかく、児には誰も手伝わせてくれませんでした!ジャジャジャジャーン!!!
って!酷くね!?別に悲しくて涙が出そうとか、そんな事は思ってないけど、酷くね!?
私が一人、畑の隅で土を弄りながら拗ねていると、隣に誰かがきて私と同じようにしゃがみ込んだ。
いきなりのことで驚いて顔を上げると、そこでは見覚えのある銀髪少女がこちらを見つめていた。
あれ、この子って確か私と同じ理由で仕事してなかった女の子…?
私は思わず無言で見つめる。
「………」
それを黙って見返す少女。
シュールである。
私は何処かからか湧いてきた恥じらいを必死に取り外すと、ぎこちないだろう笑顔を向けた。




