36.宿命
シバ一行が深海の悪魔討伐に向かい船を進める頃、とある空の上で二つの影が出会いを果たしていた。
その一つは白いローブに身を包み、顔には模様のついた布が揺らめいている。
もう一つは巨大な体躯、人の形を模してはいるが実情は炎の塊である。
【探したぞ。】
【ふん、忌々しい。貴様の顔など見たくもないわ!
ああああーーー!どうしてくれようかこの怒り!まだ足りぬ!まだ足りぬわ!】
【そう連れないことを申すな。
儂がそなたを探してどれ程の時を費やしたと思っている。
この長きに渡る鬼ごっこがようやく終わったのだ。
褒めてくれてもいいだろうに。】
【黙れ!黙れ黙れ黙れえええーー!
貴様の姿!声!佇まい!その存在全てが許せない!
俺はまだ終わるわけにはいかん!終わらせるわけにはいかんのだ!】
【ここに来るまでそなたの足跡を見させてもらってきた。
随分な進化を遂げたものよ。
確かに外でお主たちを探すのは容易なことではない。
だがそれほどの力をつけながら、こうまで存在を隠してきたとは誠に信じられないことだ。
外で成長を遂げたことも原因なのだろうが。
その能力、知性、感情。真にイーダの如しか。】
【ふざけるな!あんな老いぼれと一緒にするな!
俺は!俺の怒りは!まだまだこんなものではないぞ!
すべて!そう全てだ!人も!魔物も!写魔も!この世界も!そして己さえも!
一つ残らず怒りの対象だ!全てを滅ぼさん限り俺が解を得ることなどないわ!】
(我ながら随分と恐ろしい者を生み出したものだな。
どうやら見つけるのが遅すぎたようだ。
残念だ。誠に残念だ。)
【存在を嗅ぎ付けられたのは気に入らないが、もはや貴様など恐れるに足りん!
まだまだ滅ぼさねばならんモノがいくらでもある!
貴様にそれを止められると思うなよ!】
【確かにそなた自身は既に儂を超えた存在であるな。
そこには同感だ。だがそれ以外に関しては儂でも干渉できよう。
それにそなたの足跡を辿っていた途中にあるものを見つけてな。
どうやら時が動き出したようだ。
我らの宿命然り、一族と写魔の宿命然りじゃ。】
【何を訳の分からんことを。
どのみち俺がやることは変わらん!】
その言葉を残して炎の塊は物凄い速さで飛んで行った。
「誠鬼ごっこが好きなやつだな。
だが鬼に居場所が分かってしまう鬼ごっこなど遊びにもなるまいに。
だがもう終わりも近い。せめて最後まで遊びに付き合うとしよう。
そうすることでしかそなたに報いることができない出来の悪い母を許しておくれ。」




