35.長として
出航当日、港に着いたシバ達の前には巨大な船が何隻も並んでいた。
「これは壮観だな。これほどとは。」
「うん。俺も驚いた。」
「海の一族は内地の文化の先を行ってる。こんなの持ってんのはコイツらだけだろうな。」
3人が船の前で話をしていると、船から降りてきたキースが近づいてきた。
「ディスト。殺す!」
「ふざけんな。せめて理由くらいつけやがれ。」
「出航はいつ頃になるのだ?」
「あと2時間後を予定している。
お前たちも船に乗れ。お嬢から作戦についての説明がある。」
「キースさん。こっちの樽は3号鑑でいいんですかい?」
「ああ、あと例のブツは6号艦に積んでおけ。」
「例のブツとは何なのだ?」
「海には海の戦闘というものがある。楽しみにしているがいい。」
「キースさん。そろそろ薬の時間です。」
「なんだ?お前どっか悪いのか?」
「この前作業中にかすり傷を作っただけだ。
すぐに行く。お前たちもさっさと行け。」
予定通り船は出航した。
シバとエシャロットは初めて体験する海に興奮を隠しきれない。
3人はとりあえず指示があるまで行動を自由とした。
甲板でシバはエルと通信しながら海を眺めていると、カルアが近づいてきて話しかける。
「どうかしら。初めての海は。」
「上手い言葉が見つからない。すごいとしか言えないくらいだ。」
「そうなの。楽しめているようで何よりだわ。
シバ、あなたのことディストから、ああ、ディオって名乗っているんだったわね。
彼から少し聞いたの。
話がしたいのだけど、いいかしら?」
シバが頷く。
「酒場であなたがパーティーのリーダーって聞いた時には正直驚いたわ。」
「ディオがリーダーじゃないから?」
「それもあるけれど、彼がパーティーを組むこと自体今までになかったからよ。」
「ディオには俺と旅をする理由がある。」
「あなたが特別な一族だからかしら?」
「もしかして知っているのか?」
「はっきりとしたものじゃないけどね。
私たちは未知を探求する一族よ。
海を舞台にしてはいるけれど、内地を捨てたわけじゃないわ。
内地の情報も常に仕入れている。
要は住み分けなのよ。内地は内地の人に任せて、私たちは海へってね。
そして私たち一族の歴史は長いわ。あなた達よりはね。
話を聞いてみればあなた一族の当主だって聞いて話をしたくなったの。
私が知りたいのは一族のことというより、一族の形ね。
あなたと他の人はどんな感じだったのかなって。」
「ウルガの当主は役割としてそうあるだけで、皆を引っ張る存在じゃない。
その本質は誰でも同じものだ。
今までカルアとその同胞達の行動を見てきた。
あなた達を見ていると一族のことを思い出す。
ナージャ族とウルガ族は似ているんだと思う。
皆同じ方向を向いている。
正直カルア。俺は今のあなたが羨ましい。
もう俺と同じ方向に向かってくれる同胞はいない。」
「そう。そうね。
ありがとう。今の言葉で少し前向きになれたわ。
実はね。私今ナージャの頭領として行き詰っていたのよ。
今回のヤマもそれが少し関係しているわ。」
「カルアが今どう感じているかはわからないけど。
ナージャ族としての考え、誇り、生き方は、カルアだけが持ってるものじゃないと思う。
一族一人一人が持ってるものだ。
カルアが全てを抱え込む必要はない。あなたは一人ではないのだから。」
船室に戻るシバにキースが通り過ぎ様に声をかけた。
「感謝する。」




