33.踊り子
一行は港町マリナードに着くとすぐに港に向かう。
町の中は来る前にディオが話した通り、多くの人で賑わっていた。
ただ港に近づくにつれて人は多いものの、何やら険悪な表情を浮かべた人が増えていく。
「なあ、アンタ。ちょっといいか?何かあったのか?」
「ん?ああ、俺は仕事でここに来たんだがな。
今さっき船が出せねえって話を聞いてよ。
全くまいったぜ。この辺にいる連中も俺と同じで、予定が狂って困ってるんだろうよ。」
そう言って男は頭を掻きながら、港を後にした。
「船が出せないか。当てが外れてしまったな。」
「まあ、ここで油売っててもしょうがねえ。
酒場に行って飯でも食おうぜ。」
「わかった。その後にでも今後について話し合おう。」
「何なのだ!あの女性は!ほとんど裸ではないか!」
酒場に入ったエシャロットはまず目に映った光景に声を荒げた。
この酒場は今まで旅で訪れたどこよりも一番大きかった。
酒場の中央奥にはステージがあり、その後ろで五人が楽器を演奏している。
ステージ中央ではメルダと同じくらいの年の女性が、音楽に合わせて踊っている。
紫の波打った長い髪、口に薔薇を咥え、小麦色の肌には胸と腰辺りだけ申し訳程度の布を着けていた。
そんな彼女の情熱的な踊りに、店内の客は酒を片手に大盛り上がりである。
ディオはステージに少しだけ目を向けた後、シバと一緒にショックを受けているエシャロットをテーブルへと連れていく。
「とりあえず飯食って落ち着け。
ここの飯はちょいと珍しいぜ。」
「う、うむ。済まない。少し驚いただけだ。」
「ここはディオの言った通りいろいろと変わってるね。
俺は楽しいと思う。」
「だろ?世の中は広い。てめえが知ってる世界がすべてじゃねえ。
いろいろ見て、体験して、そうして自分の世界が広がっていく。
それが人の生ってもんなのかもな。
その形は様々だが、お前さん達の世界が素晴らしいもんになることを祈ってるぜ。なんてな。」
「ほんとに時折貴殿はすごいことを言うな。自分の未熟さを痛感させられるよ。
だが、そうだな。我々の作る世界に乾杯しよう!」
3人は食事を終え、何人かの客から情報をもらいこれからのことを話し出す。
「船がいつ出せるようになるかもわからねえか。」
「これでは今は南東の島にいけないな。いっそのこと私のことは後回しにしてはどうだ?
前にも言ったが私自身は急いでいるわけではない。」
「あら?あなた達船をお探し?」
「君はさっきまで踊っていた・・」
「久しぶりだね、ディスト。やっぱり生きてたんだ。」
「ああ、久しぶりだな。カルア。」
「ディオ。彼女と知り合いだったのか。」
「以前コイツらから依頼を受けたことがあってな。
で、俺になんか用か?
どうせお前のことだ。知り合いの顔見に来たってわけじゃないんだろう?」
「つれないわね。まあ、いいわ。
あなた達の話が少し聞こえてね。船がいるんでしょ?
私が出してやってもいいわ。ただし条件がある。
どう?少しは聞く気になった?」




