31.タパタの想い
エグゼルから渡された蝙蝠の案内で一行は歩を進めた。
蝙蝠は不思議なことに、一行から一定の距離を常に保っていた。
本当に生き物なのか、エグゼルの魔力で作り出された物なのか誰にもわからなかった。
道中は非常に穏やかで、魔物に襲われることもなく順調に進めた。
おそらくこの蝙蝠には、敵対生物に対して寄せ付けない何かがあるのだろうという結論に至った。
道中タパタとポリーは、シバが元気を取り戻したのが嬉しかったのか、今まで以上にはしゃぎ、皆に笑顔を見せていた。
前回の戦闘で心身ともに少なからず傷を負った3人は、彼らに癒される己を感じつつ、その光景を優しい目で見つめていた。
蝙蝠がはじめてキーキーと鳴き声を上げると、どこかに飛び去って行く。
「ここが目的地ということか?」
「おそらくそうだろうな。
それにしてもなんなんだ?ここは。
生物の気配が感じられねえ。」
現在の場所は、街道からだいぶ離れた大きな山の麓にある小さな森である。
そこに存在する植物たちはほとんどが見たこともない形をしていた。
「非常に神秘的な場所だな。
静かで、何というか空気が澄んでいるというか。
心が落ち着く感じだ。」
「わあ、凄く綺麗だね。」
それぞれが感想を口にしていると、ポリーがタパタの腕を抜け出して奥のほうへ飛んでいく。
「あ、ポリーどこ行くの?待ってよぉ。」
残された全員はポリーの後を追う。
ポリーの元に辿り着いた場所は、円形に開けていて、その中央に虹色に輝く光の柱が立っていた。
ポリーはミイミイと鳴き声を上げている。
「そっか。ここなんだね。ポリー。ようやく辿り着いたんだ。」
ポリーを抱き上げたタパタが一歩踏み出す。
「本当にいくのか。タパタ。」
「うん、僕はポリーの願いを叶えたいから。」
「シバどういうこった。話が見えねえ。」
「私もだ。ここがポリーの帰りたい場所ではないのか?」
「ここはポリーが行きたい場所に繋がる入り口なんだ。
この世界とは別の世界、聖獣の世界に僕とポリーはいく。」
タパタは光の柱の中に入っていく。
「ま、待ってくれ!タパタは人間だろう。
帰るのはポリーだけじゃないのか?」
光の中に入ったタパタとポリーは、自身も光を発し始める。
「うんとね。ポリーが僕を助けてくれた時、僕死んじゃったんじゃないかな。
ポリーは僕に自分の命をくれたんだ。」
「ポリーとタパタの間には命の繋がりがある。
一心同体といっていい。
お互いがそれぞれいろんなことを共有している状態にある。
聖獣の世界はわからないが、ポリーが帰ればおそらくタパタもこの世界で生きられない。」
シバの目には出会った時から、タパタとポリーを結ぶ何かが見えていた。
目の前の光る柱からは写魔の消滅する時に近しいものを感じている。
「僕ね。今までつらいことばっかりだったんだ。
生きていることが本当につらかった。
そんな時ポリーが助けてくれて、話をしてポリーのために頑張ろうって思ったんだ。
この命はおまけみたいなものなんだ。
でもね。」
哀しそうな表情を浮かべる3人にタパタは言葉を続ける。
「そのおまけが僕に、最後にたくさんの楽しい思い出をくれたんだ。
ポリーもそう思ってるよ。
ディオのおじさん。」
「なんだ?」
「おじさんには少し謝りたい。
ホントは仲良くなりたかったけどダメなんだ。
おじさんは悪くないのに。」
「ハッ。そんなことか。気にしちゃいねえよ。
この先もっと楽しいことがあるといいな。」
「エシャロットお姉ちゃん。」
「ッ!ゥゥ、な んだ?」
「そんな顔しないで。
僕エシャロットお姉ちゃんの笑った顔大好きだよ。
僕の二人目のお姉ちゃんだもの。」
「そ、そうか。そうだな。
これはタパタが頑張って勝ち取った物の形なんだな。
私はタパタを誇りに思う。
お姉ちゃんもタパタが大好きだぞ。」
「シバお兄ちゃん。」
「・・・・・・・」
「シバお兄ちゃんはすごく強い人だね。
カッコ良くて、僕の憧れなんだ。
僕もポリーもたくさん遊んでもらった。
元気になってほんとによかった。」
タパタとポリーの姿が薄らいでいく。
「みんな、ありがとう!さようなら!」
タパタは最後にいつものようにニパッと笑顔を残して、ポリーと一緒に消えていった。
タパタ達が消えた時、その場に強い風が吹く。
周囲の植物の葉や花びらが、二人を祝福しているかのように舞った。
「さようなら。 タパタ。」




