30.仲間
湖を離れてすぐシバが倒れた。
ディオが意識を失ったシバを背負い、一行はバハラへ急いで戻る。
宿に着いてすぐ、シバをベッドに寝かせ、帰りがけにエグゼルにもらった薬で処置を施す。
「無理もない。このケガであれほど動いていたのだ。
むしろ動けたこと自体が異常といっていい。」
「ねえ、エシャロットお姉ちゃん。シバお兄ちゃん元気になるよね?」
「ああ、当然だ。
エグゼルの話では、魔力で傷口を塞いで出血だけ止まっている。
傷自体はそのままらしいのだが、それもこの薬を使って安静にしていれば回復するだろうとのことだ。
シバの看病は私がやろう。」
「僕もポリーも手伝うよ!」
二人の話を聞きながら、黙ってシバを見つめていたディオが部屋から出ていった。
「ディオ・・」
宿を出て町の人気のない開けた場所を見つけたディオは、大剣で素振りを始める。
(全く情けねえ話だ。
役に立たねえどころじゃねえ。
だが今回のことでわかった。
アイツの隣で戦うには技術や知識だけじゃねえ、揺るぎのない心と覚悟が必要だ。
あのヴァンパイアは言っていた。
あの魔神ですら操られたと。
この怒りは写魔と戦う上で二度と出すことは許されない。)
「わぁ。エシャロットお姉ちゃん、すごいね。
ほら、ポリーも見てみなよ。」
「ハッハッハ。そうか。
私は騎士などしていたものだから娯楽には縁遠くてな。
稽古で敗れた服など自分で直していたんだ。
気付いたら裁縫が唯一の趣味になってしまっていたよ。」
エシャロットは看病の合間を縫ってシバの服を直していた。
「それにしてもこの服は珍しいな。
女性用もあるだろうか。
騎士を辞したら、着てみたいものだな。」
「きっと似合うよ。エシャロットお姉ちゃん綺麗だもの。」
「タパタ、君はほんとにかわいい子だな。
こっちにこい。ほらポリーも。」
エシャロットは裁縫の手を止め、タパタとポリーを引き寄せ、撫でまわした。
タパタはニパッと笑顔でそれに応じた。
それなりに賑わっている酒場の隅で、ディオはいつものように一人で酒を飲んでいる。
基本的に静かに飲むのが最近のディオには好ましかったが、今の自分にはちょうどいいと感じていた。
しばらくして以前見た光景に出くわす。
「またお前か。今の俺は機嫌が悪い。
お前の相手はできねえから、とっとと消えやがれ。」
「儂がどこにいようと儂の勝手じゃもん。」
「チッ。」
ディオはイーダを無視して酒を飲み続けた。
イーダは最初の一言以外言葉を発さずに無言でそこに居続けた。
シバが倒れた日から2日後に意識を取り戻した。
エシャロットとタパタとポリーは大いに喜んだ。
ディオは目線で挨拶を交わす。
とりあえず最低でも10日は休んで、経過を見て旅を再開しようということになった。
シバはいいといったが、エシャロットとタパタとポリーは看病を続けた。
ディオは日中は素振りを続けた。
「ほんとにもういいのか?まだ完全ではないだろう。」
「ああ、大丈夫。皆のおかげだ。ありがとう。
タパタ、目的地にめどが立ったのに足止めしてしまってごめんな。」
「ううん。またシバのお兄ちゃんと旅ができるんだ。
僕はそれが本当に嬉しいんだ。」
「念のためだ。しばらく道中戦闘があれば俺がやる。
お前はまだ動くなよ。」
「うん。わかった。ディオ、頼りにしている。」




