25.聖獣を連れた少年
イーさん出現の翌朝、話題には出したくないディオだったが、そうもいかないのでシバに確認してみた。
「昨日な。イーさんと名乗るなんかでかいやつが俺の前に現れたんだが。」
「そうなんだ。イーさんに会ったのか。」
「え!なに、やっぱお前アイツのこと知ってんのか?」
「うん。彼イーダだから。」
「ちょ!ちょっと待て待て待て。」
(イーダって封印されてんじゃなかったか?
しかもあれって、なんか違うだろ!
里潰そうとしたんじゃなかったのか?あれが?
いやいや、意味わかんねえ、ほんとコイツらわかんねえ。)
「あのよ。封印ってどうなってんだ?」
「恐らくイーさんは模様が統合化された時、封印が解けている。
今までもイーさんは俺に話しかけてきてたし、たまにどっか行ってたりする。
必ず俺のところに戻ってくるけどね。」
「おまえ、そういうことは・・いや、いいや。
それで問題はないのか?
なんか聞いてた感じとだいぶ違うんだが。」
「言葉では説明しにくいけど、イーさん自身が何かするということはない。
としか言えない。
写魔と関わるということは、ある程度リスクもあることだからだ。」
「最後に。なんでイーさん?」
「そう呼べって。なんかディオに名前呼ばれた時、気に入ったらしいよ。」
「俺が呼んだ・・?」
<光栄とでもいえばいいのか?イーダさんよぉ。>
「あ。あれか。」
そんなこともありつつ一行の旅は続く。
次の町に向かう道中、街道をフラフラと歩く少年の後ろ姿を発見する。
「依頼者か。」
シバが呟くと同時に前を歩いていた少年が倒れてしまう。
一行は慌てて少年の元へ駆け寄り、ディオが抱き起す。
「こいつぁ・・」
「まさか!それは聖獣ではないか!」
少年は10代前半と見られ、明るい茶色の髪に緑の帽子を被っている。
シャツの上から体を包んでいるオーバーオールは、少しダボついていた。
そして何より目に付くのは、腕に抱えている物。
それは、普通は目にすることも叶わない聖獣と呼ばれる生き物であった。
少年、聖獣共に意識はなく、一行は少年と聖獣を木陰まで連れていき、気に寄りかからせ、口元にそれぞれ水を含ませてやる。
皆が見守る中、やがて少年と聖獣はほぼ同時に意識を戻した。
「ここは。。」
「お。目覚ましたか。」
「もう大丈夫だ。とりあえず今暫く休むといい。
ほら水だ。良かったらこれも食べるか?」
シバは皆の様子を一歩引いたところからじっと見ている。
ある程度回復が見られた頃少年から話を聞くことにする。
少年の名前はタパタ、聖獣の名前はポリーというそうだ。
タパタはポリーを連れ、世話になっていた商人の家をとびだしてきた。
着の身着のままで出てきてしまったため、ここ3日は何も口にしていなかった。
「ポリーはもうすぐ誰かに売られちゃうところだったんだ。
ポリーは僕の大事な友達だ。
だから助けなきゃって。」
「そうか。そりゃ頑張ったな。」
「しかしだ。これからどうするつもりだったのだ?
行く宛はあるのか?」
「ポリーは帰りたいって言ってるんだ。
だから僕はポリーと一緒にそこに行くんだ。」
「君はその聖獣と話ができるのか?」
「うん。言葉じゃないけど、ポリーの思ってることはわかるよ。
ポリーも僕が喋ってることはわかるんだよ。
すごいでしょ。」
「そうだな。すごいぞ。私は驚いたぞ。」
ディオはシバに目をやる。
それにシバはうなずくことで答える。
「俺らは旅の途中だ。とりあえず適当に回ってるだけだがな。
そこで相談だ。
俺たちもそのポリーっつったか。聖獣を帰すのを手伝ってやろう。」
そういったディオからタパタは、ポリーを後ろへ隠すように抱いて言った。
「オジサン達ポリーをどうするつもりなの?
商人のおじさんが言ってたんだ。
ポリーは珍しい生き物だから高く売れるって。
欲しがる人がいっぱいいるって。
そんなことは絶対にさせない!
ポリーは僕が守るんだ。!」
タパタとポリーは明らかにディオを警戒していた。
シバは困ったように頭をかいているディオを後ろに引かせ、無言でタパタ達の前に立つ。
シバは彼らの前で腕を大きく振って体を1回転させた。
着物の袖が綺麗な弧を描く。
そして最後に掌をタパタではなくポリーに向けた。
その動きは短いが、確かに舞であることをディオは見抜いた。
それを見たポリーはタパタに向かって、話しかけるようにミイミイ鳴いている。
「そうなんだ。ポリーがそういうならだいじょぶだね。
お兄さんは僕たちを助けてくれるんだね。
わかったよ。
僕もお兄さんたちと一緒に行くよ!」
こうして聖獣を連れた少年タパタが旅に加わることになった。




