24.ディオの酒と筋肉ダルマ
酒場の隅でディオがいつものように酒を飲んでいる。
テーブルの向かいには、本日も無残に惨敗を喫したエシャロットが伏せっている。
「なぜだ。私のどこがいけないんだ。」
(やってること全部だ、全部。)
聞こえないふりしてディオは酒を煽る。
「確かディオは結婚してたな。」
「昔の話だがな。」
「私のどこが悪い。教えてくれ!」
ガバっと顔をむけてくるエシャロットに、ディオは面倒くさくなる。
早々にお帰り頂こうと思ったままを口にする。
「あのなあ、男ってのは女の尻を追っかけたがるもんだ。
お前さんから尻振ってどうするよ。
器量は悪くないんだ。どんと構えとけ。
それに恋愛なんざ無理にやるもんじゃねえよ。
ロクでもない男捕まえても、そりゃ本末転倒ってモンだ。」
エシャロットはボケーとした顔でディオを見た。
「いい加減な男だと思ってたんだが、なんか意外だな。」
なんとなく落ち着いたエシャロットは部屋へ戻っていった。
ため息を一つついた後ようやく一人になれたと酒を煽る。
何度か瞬きをしているうちに、視界がオレンジ色一色に染まっていた。
まさか酔ったのかと思いつつ視界を広げると、エシャロットが座っていた席に変なものがあった。
(なんだこりゃ!コイツいつの間にいたんだ?)
大きさはディオの倍はある。
肌はオレンジ色で、妙にテカっていて筋肉ムキムキである。
つるっとした頭の上後方に、黒い長い髪が一本に束ねられている。
耳は先がとがっており、目は瞳のない黄色一色。
鼻の下には筆のような髭が、頬に向けて跳ね上がっている。
ソレは腕を組み、視線を誰もいないであろう前方に向けて堂々とした佇まいである、
ディオが現状を整理しようと頭を回転させていると、ソレは急に大声を上げた。
【儂!イーさん!】
ディオは驚きながらも周囲を確認する。
目の前の存在が大声を上げたにもかかわらず、周囲の人間は全くと言っていいほど変わりがなかった。
(コイツはもしかして、俺にしか見えねえ、聞こえねえ存在か?
とするとアイツがらみなのか?)
ソレは先ほどとは変わって、顔だけがチラチラと前方とディオを行ったり来たりしている。
しばらくして先ほどの仕切り直しと言わんばかりに同じことをする。
【儂!イーさん!】
(もしかして、コイツ、、)
【儂!イ】
「だあああ!わかった!悪かった!聞こえてるよ!」
ディオの声に周りの視線が集中する。それに向けてディオは何でもないと手を挙げた。
【なんじゃ、ちゃんと聞こえてるんじゃモン。
返事しないとダメじゃモン。】
ディオはその言葉と言葉遣いにダブルでムカつき、青筋を立てながら小声で話す。
「そいつぁ済まなかったな。で俺になんか用か?」
イーさんはディオの持つ酒の入ったグラスをじっと見ている。
飲みたいのかと思ったディオは、エシャロットが先ほどまで使っていたグラスに酒を注いで、イーさんの方へ置いてやる。
イーさんは無言でグラスに手を伸ばし酒を煽ると、物凄い勢いでテーブルに倒れた。
何が起きたのかディオにはわからない。
しばらく様子を見るもイーさんはピクリともしなかった。
状況整理もかねてトイレに立ったディオが戻ってきた時、テーブルには誰もいなかった。
(なんだったんだ?意味が分からねえ。。)




