14.一族の末路
シバとディオは王宮へと向かっている。
今朝ディオが昨夜の話で王宮へ行くと言ったらシバも王宮に用があるという。
王宮に着くと入り口には直立不動の女性騎士が待ち構えていた。
「やあ、来てくれて何よりだ。貴殿が来るのを朝から待っていたぞ。」
(今は昼過ぎだ。何やってんだ、コイツ。)
「おや?君は。。」
「コイツのこと知ってんのか?昨日話した旅の同行者なんだが。」
「そうであったか。あの時は礼を言う暇もなく君は行ってしまったからな。
申し遅れた。
私はアルメキア王国近衛騎士団団長エシャロット=フリューゲルという者だ。」
昨日は君のおかげで助かった。礼を言わせてほしい。ありがとう。
良ければ名を聞かせてもらえないだろうか?」
「シバ」
「そうか。ではシバ殿、ディスト殿、謁見の間に案内しよう。」
「ようディスト久しぶりじゃねえか。
見かけねえから、野垂れ死んでんのかと思ったぜ。
ダーハッハハッハハッハ!」
「アンタも相変わらずで何よりだ。」
「まあな。とりあえず顔見れたってことでもうお前に用はねえ。
ヒルダがまたお前の武勇伝を聞きたいってよ。
おい、ロザリー案内してやってくれ。」
「お待ちを。折角ディスト殿が」
「あ、まだお前がいたっけな。」
「王よ、お人払い感謝いたします。ですがもうその必要はございません。」
「シバ殿?」
「私はミフネの息子シバと申します。」
「ミフネの!やつは元気でやっているか?」
「我がウルガの里は一年前に滅びました。
一族の技を使えるのはもはや私だけとなりました。
あなたは父上の友であると伺っております。
故に本日参上しました。」
その場にいるものは二人の会話を見守っている。
「もうすでに口伝の必要がないということだな。
それにしてもアイツは逝っちまったのか。
なにがあった?」
「1年前こちらの世界からあらゆる種の謎の大群に里が襲われました。
父上は勿論里のほとんどの者が討ち死にを果たしました。
その時生き残った者達のイーダの模様が消え、一族としての能力を失いました。
里に存在していた写魔も一体残らず消滅しています。」
「今後はお前たちの恩恵なしで世界は動かなくてはいけないんだな。
シバお前は今後どうするつもりだ?」
「ウルガ族の使命を果たすのみでございます。」
「エシャロット!」
「はっ!」
「お前の辞表はいったん取り消しだ。
お前は今後シバと行動を共にしてくれ。
安心しろ。それ以外はお前の自由にしていい。
どのみちここじゃあお前に惚れる男は現れないだろう。」
「うっ。」
「ディスト。お前は既に噛んでいると考えていいんだな?」
「ああ。」
「すまんな、シバ。ミフネの息子であるお前に今はこんなことしかしてやれん。
なんか力になれることがあったらエシャロットを通していつでも言ってくれ。」
謁見を終えた二人は騎士団宿舎のエシャロットの部屋にいる。
ここに来る道すがらエシャロットにはディオがシバとその一族についてザックリと説明している。
「シバ、さっきの話は正直驚いた。
それで、お前さんにいくつか聞きたい。
カッシュが死んだのはその時か?」
「そう。相手は外の世界で生きる者たちだ。
野獣、魔獣、妖精、魔族そして人間。
以前ディオに指摘された通り、俺たちではあの群れを相手にするには力が足りなかった。
唯一対抗できたのは幾つかの写魔と兄上だけだった。
彼らがいなければ誰も生き残れなかったはずだ。」
「相手は結局何だったんだ?お前は何か知ってるんじゃないか?」
「推測に過ぎないけど俺はあの群れが結界を超えてきたことから写魔の仕業と考えている。」
「なに?写魔はウルガ族がいないと自我が保てないはずだろ。」
「基本的にはそう。
人の身で写魔と繋がりをもてるのはウルガ族だけだ。
一族の禁忌に写魔との同化というものがある。
人が写魔の能力を宿すというものだ。
その逆が起きた可能性がある。
もし写魔ならそれは人を喰ったと考えられる。
直接感情を取り込むなら相手が人間であれば問題はない。
それが外で起きたとなるとかなり長寿で知性が高い個体だろう。
正直人がどうこうできる存在ではないかもしれない。
そして一族の管理の目を掻い潜っていることから怒の写魔である可能性が高い。
怒の感情のない俺たちは怒に対しては感知が難しいんだ。
里を襲うという事実と、群れの統一性のなさから写魔に操られたと推測している。
1年前の里の滅亡の真相究明は旅の目的の一つでもある。
原因が写魔ならばウルガ族として使命を果たさなければならない。」
「それ以外のことはどうだ?模様のことと写魔の消滅だな。」
「あれは間違いなくイーダの仕業だ。
皆の模様は俺の模様に一つ残らず統合された。
結果生き残った者は写魔との繋がりを絶たれ能力を失ってしまった。
写魔の方は戦闘で相手によって消滅したものもいるがほとんどが戦闘後に消滅している。
理由はわからない。
俺は生き残ったものにちりじりになって外の世界に向かってもらった。
能力がなくとも知識がある。
俺たちはどんなことがあってもウルガ族なのだから。」
「まだすべてを理解したわけではないが、凄まじい一族だな。」
「お前さんも覚悟しとけよ。
今までの常識は捨てろってのが先輩のアドバイスだ。」
「心得た!」




