12.はじめてのクエスト
「俺は今日はこのままメルダと武器製作の打ち合わせをする。
今日一日別行動するぞ。お前さんも偶には息抜きしたいだろ。
王都を見て回るもよし。
クエスト受けるもよし。
ああ、クエスト受けるなら採集にしとけ。丸腰だからな。
あと、俺がいないんだから何するにしても自己責任でやれよ。
明日の朝食で落ち合おう。」
シバはまず王都を回ることにする。
ここで隠密行動が得意なウルガ族の能力がいかんなく発揮される。
その行動は観光とは程遠い。
土地勘のないシバはまず一番高い所へ行って王都を見下ろした。
そこで王都の全体像を把握し、興味を惹かれた場所を記憶する。
後は最短で目的地に行くだけ。当然のように遮蔽物のない屋根を伝っていく。
エルを具現化してやり取りを通信で行いつつ王都を回った。
目ぼしいものはすべて回っても今日という日はまだまだ終わらない。
仕方ないのでクエストで時間をつぶそうとギルドへ向かった。
「なんっかやらかしそうな気がすんだよな。」
「おやおや。だいぶ子守が板についているようじゃないか。」
「ばっか。そんなんじゃねえよ。
お前はアイツの非常識さを知らねえからそんなこと言えんだよ。
そこだけならおりゃアイツの足元にも及ばねえよ。」
「アハハ、天下の魔神殺しも片なしだねえ。」
シバはギルドに入るとカウンターに向かい説明を聞く。
自分が受けることが可能な依頼書を片っ端から取っていく。
それを見た周囲の人間は呆れたり、馬鹿にしている様子である。
受付の女性も笑顔が凍り付いていた。
道具屋でかなり大きめな袋をディオから渡された金で購入すると目的地へと向かった。
ウルガ族当主として学んだ知識は多岐に渡る。
写魔が人の感情を研究するのと同じく未知である写魔を研究する必要があるからだ。
シバが取った依頼書の採集物は既に知識にあるもの、そして一般的には知られていない法則性のあるものだ。
シバは外の世界に出たのはこの旅が初めてといっていい。
学んだ知識を実際に目にしたいという欲求から非効率ではあるが、まず一通りの依頼達成の最低基準から潰していくことにする。
余った時間で売却額の高いものを優先的に採取していく。
袋が満杯になり帰り道を歩いているとなにやら騒がしい音が聞こえてきた。
近くまで行ってみると魔物と対峙している数名の人影が見える。
元来た道を引き返そうとして足を止めるシバ。
「依頼か。」
シバは高い木の枝に採集物の詰まった袋を引っかけた後、最速で戦闘領域へ駆けていった。
「リンダ!マルローの容体は?!」
「急所ははずれていますが出血が酷いです!」
「団長!擬態をするやつがいます!」
「クッ」
(魔物の数が多い。血に引き寄せられたか。厄介な奴も一匹いるな。)
「リンダ!ロドリゲス!マルローを挟んで盾で左右の攻撃に備えろ!
私の後方五歩の距離を維持しろ!
徐々に後退し森を抜けるまで何としても耐えろ!」
対峙していた猪の魔物が先頭の団長に突進する。
大盾で突進を防いだタイミングで後方へ蝙蝠の魔物が襲ってきた。
ヒュッ!
蝙蝠が何かにぶつかって左に飛ばされていく。
「!」
「援護する。」
「かたじけない!」
シバを視認した団長は大盾を押し込み猪を弾き飛ばす。
「俺は飛んでる2匹と擬態してるやつを牽制する。止めは後ろにいる二人に任せたいんだけど。」
団長は瞬時に判断しシバの提案を受け入れた。
(リスクはあるが時間もないのも事実。)
シバは団長の後ろの3人と魔物を結ぶ直線状に定期的に体を通しながら魔物を弾いていく。
彼が何をしているのか。
「嘘でしょ。小石をとばしてるの?」
弾かれた魔物にダメージはほとんどない。が体重の軽い物の体を動かすことはできた。
森の木を利用して立体的に動くシバは上から一匹の蝙蝠を地面に落とした。
「リンダ今だ!」
団長の指示でリンダは蝙蝠を殺した。
「まさか、見えるのか?」
擬態しているはずのカメレオンの魔物が何度も姿を晒していた。
ウルガ族に擬態は通用しない。
こうして団長が猪を抑えている間に他の魔物を殺すことに成功する。
「あれは無理。撤退したほうがいい。殿は俺がするから。」
「わかった。恩に着る。総員撤退!一気に森をぬけるぞ!」
その後殿のシバは小石を当て注意を引き大木に猪を突っ込ませた後、荷物を拾って森を抜けた。
先に森を抜けた一行をじっと見た後荷物から採取した植物をすり潰してマルローの傷口に塗った。
「これで少しは出血収まるけど急いだほうがいい。もう俺はいくから。」
「ちょっとまっ、貴殿名」
ものすごい速さでシバは王都へと戻っていった。




