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RE/SONANCE  作者: ねずおあきとし
夏のクラシック編 ― 一年目編
23/26

夏のクラシック開幕! ~最初の数時間と開会式!~

■ 2022年8月14日


 大いなる日が来た。


 この、ためらいを許さない世界で、ジークにとって初めての本当の大経験。


 サザンクラシックが今日、始まる。


 だが、そのためにはもう少し時間がある。


 朝の八時。


 携帯のアラームが鳴り、ジークは飛び起きた。目は開いているが、頭はまだ別の場所にあった。


「――くそっ、遅刻する!」


「八時やで、ジーク」


 魁斗はベッドの端に座り、すでに着替えていた。


 ゆったりとした楽な服。トーナメントのない日なら誰でも着るようなものだ。


 ジークは瞬きをして、状況を処理した。


「ああ。よかったわ」


 彼は息を吐いた。


「おい、緊張しとるんやないか――」


 彼は止まった。


 魁斗の顔を見た。


 固くひそめられた眉。床の、何も面白くない一点に固定された目。そして、この時間と場所には似つかわしくない緊張で食いしばられた顎。


「落ち着いとるで」


 魁斗が言った。


 ジークは答えなかった。


(もちろんやろな)


 魁斗は立ち上がった。


「朝飯を食いに行く。来るか?」


 彼は自分のものではない固さで扉へと歩き始めた。


 途中でナイトテーブルにぶつかり、ランプが揺れた。


「――おい、ゆっくりや! 壊したもん全部請求されるで!」


「後で払うわ」


 ジークは立ち上がり、洗面所へ行き、十分で準備を整えた。


 ゆったりとしたズボン、白いシャツ、紺のジャケット、まだホテルの絨毯以外を踏んでいない新しいスニーカー。


 そして最後に、胸に斜めがけにしたウエストポーチ。


 彼が出てくると、魁斗が上から下まで彼を見た。


「必要なもん全部持ったか?」


 ジークが尋ねた。


「ああ」


 着替えが三着と、携帯の充電器だけだった。残りの荷物はまだシャレーにあった。


 二人は食堂へ降りた。


 訓練のために十分に食べていた以前の日々とは違い、今回は何も残さなかった。


 トレイ一つ一つ、きれいに。


 食べ終わると、魁斗は満足の仕草で椅子の背にもたれかかり、一瞬だけいつもの顔に戻った。


「ふう。全部美味かったわ」


「気に入ってくれて嬉しいわ――」


 固さが戻った。


 瞬時に。まるで休息が最後のスプーン一杯分だけ続いたかのように。


 魁斗は時計を見た。


「グループとの集合は十一時や。それまで何する?」


「少し練習するか?」


「完璧や」


 ペントハウスには戻らなかった。必要なかった。


 二人は直接訓練センターへ降り、離れた隅を選んだ。


「これ、大丈夫か?」


 魁斗が尋ねた。


「昨日、酷い目に遭ったやろ」


「そんなん気にせんでええ」


 ジークはカードを掲げ、タラニスへ導いた。


 リンボで、女神はしていたことを止めて顔を上げた。


「昨日戦ったんじゃないのか?」


 彼女は呟いた。


「まあ。彼の問題じゃ」


 光彩がクリーンに訪れた。ジークはそれがいつものように体に収まるのを感じた。痛みを先送りにする、あの短い熱。


 一方、魁斗は木の武器の棚に近づき、鎌を選んだ。


 ジークはそれを見た。


「ほんまに木の鎌があるんか?」


「専門の施設ではな、ほとんどどんな形でも頼めるんや。一見すると普通の棒や」


 魁斗は最小限の神聖なエネルギーを武器に導き、鎌は最終的な形を取った。


「ジャジャーン」


 いつもの熱意ではなかった。仕草をこなすかのように言った。


 ジークは自分の槍を選び、何も言わなかった。


 硬貨を宙に放った。


 地面に落ちた時、二人は動き出した。


 ジークは最初の交わりから全力で行った。本気の強度、手加減なし。槍は角度を探し、圧をかけ、魁斗に落ち着く隙を与えなかった。


 魁斗は慎重に応じた。探り、測り、ジークを動かせて、戦いの内側から観察した。


 長くは続かなかった。


 たった一撃。


 ジークは処理する暇もない力で壁へ吹き飛ばされた。衝撃が息を一気に奪った。光彩のオレンジのオーラが点滅し、消えた。


 魁斗は木の鎌を下ろした。


「――すまん。力を使いすぎた」


 ジークは床で、ゆっくりと息を整えていた。


「気にするな」


 彼は何とかそう言った。だが、頭は別の場所にあった。


(力を使いすぎ? 実際どれだけの力を持っとるんや?)


 彼は床から魁斗を見た。


 背が高い。よく鍛えられている。それを誇示する必要がない体格。そして、戦いの外での人物とまだ一致しない、あの視線。


「今日はもう十分やろ。行こう、ジーク」


「もう一回、光彩を頼めるか」


「やめとけ」


 ジークは口を開いた。


「残っとるもんは、心境で治すために使え」


 魁斗がジークの反論の前に言った。


「こんなことに無駄にするな」


 ジークは口を閉じ、諦めて受け入れた。彼はもうしばらく床に残り、訓練センターの天井を見つめていた。


(まだ、あいつのレベルには達しとらん)


 新しい結論ではなかったが、一撃で、飾りも、和らげる文脈もなく確認されたことは、違う重みを持っていた。


(魁斗の本当の天井はどこや? そして、俺の天井は?)


 答えは見つからなかった。


 彼は立ち上がり、木の槍を拾い、元の場所に戻した。


 ジークはシャワーを浴びに行き、魁斗はホテルの入口に残った。ぼんやりと。


 やがて、ジークが降りてきて、二人は何もない空間を眺めていた。時計が十一時を指すまで。


「時間や、行こう、ジーク」


 ジークが手を挙げると、タクシーが近づいてきた。


 十分の移動の後、タクシーは二人をウォレスビーチ第1闘技場の前に降ろした。


 ジークは車を降りて、動かなかった。


 白い大理石で埋め尽くされ、地面から五十メートル以上の高さ。トーナメントの色をした旗が高所から垂れ、海岸の風にゆっくりと揺れている。


 群衆は記憶を辿る練習をするかのように、入口へと流れ込んでいた。カメラを持った観光客、お気に入りの共鳴者のTシャツを着た地元民で溢れている。大道商人が外周の空きスペースという空きスペースを占めている。


(サッカーの大決勝みたいやな)


 ジークはそう思い、すぐに打ち消した。


(いや、それよりも大きい)


 待ち合わせ場所で、アキ、瞬、華凛と合流した。


「行くわよ、ジーク」


 アキはすでに歩き出していた。一行は群衆の間を進んだ。


 道の途中で沈黙を破ったのはジークだった。


「なあ。なんで魁斗はあんなに固くなっとるんや? 俺が起きてからずっとや。よく眠れとらんかったと思う」


 華凛は彼を見なかった。


「あれが彼の普通よ。緊張しとるの」


(緊張)


 ジークはその言葉を処理した。事務所で一番強い男が、トーナメントの前に緊張している。


「あんたの神についてはまだよく知らんけど、魁斗の場合は普通と違うの」


 華凛は続けた。


「イザナミを知っとる?」


「ああ、でも漠然としか。どんな神や?」


「イザナミは、神道によれば、黄泉の守護者であり、死の女神よ」


「――それが魁斗が共鳴した女神なんか!?」


 ジークは魁斗がすでにそれを言っていたことを覚えていなかった。


「そう。彼女は黄泉の国の守護者であり、死の女神よ」


 華凛は間を置いた。


「瞬によれば、魁斗が島に来た時は、今より大きいバージョンの瞬だったらしいわ」


(同じくらい無気力?)


 ジークは思った。


(それは大きな驚きや)


「魁斗は、人間には本来できないことをやったの。イザナミの在り方を変えた」


 華凛は眼鏡を直した。


「正確な詳細は知らん。でも、人間がほとんど全能の存在に対してそれを成し遂げるのは、ごく少数しか知らない偉業のはずよ」


「で、今はどうなんや?」


「それは後で話すわ。着いた」


◇


 コロッセオの共鳴本部は、南で最も古く、そしてすべての中で最も重要だった。


 一握りの職員が、何年もの功績と完璧な評価でのみ得られる効率で動いていた。官僚の中の精鋭。


「おはようございます。私、オルランドと申します。皆様のご質問に全力で対応いたします。ご自由に、好きなだけキャンディをお取りください」


 アキは一度に五つ掴み、全部まとめて口に入れた。


「おはよう! オルランドくん!」


 オルランドはその呼び方を黙って処理した。


「最初の要件です」


 アキは噛みながら言った。


「私のカードをどうぞ」


 オルランドはそれを受け取り、データをホログラムスクリーンに投影した。


 ジークはアキのプロフィール写真を見た。若い頃の姿。ぼさぼさの髪、三時間しか寝ておらず、それでも重要な書類にサインをした者の視線。


 彼はそれを避けられなかった。笑い声が、捕まえる前に出てしまった。


 アキは明らかに何かを仕掛ける意図で彼を見た。彼女はやらないことにした。プロフェッショナリズムのため。あるいは似たような何かのため。


「秋田様、どのようなご用件でしょうか?」


「まず、この若者を私の事務所に所属させたいの」


「承知いたしました。若者よ、カードをどうぞ」


 ジークはそれを渡した。オルランドはプロフィールを投影し、何千回もやったことのある者の注意でデータを読んだ。


「六田ジーク様。サービスのポリシーとして、直接お尋ねいたします。貴方は沢蟹事務所に所属することを希望しますか?」


 ジークは口を開いた。何も出なかった。


(今から「入るのをやめる」なんて言えるんか? いや……もう遅すぎるわ)


 彼は思わず、横目でアキを見た。彼女の目はわずかに輝いていた。答えを待ち、それがどれほど重要かを気づかれまいとする者の、食いしばった顎。


 答えはひとりでに出た。


「はい。所属したいです」


 華凛はそれを横から観察し、眼鏡を直した。


(女優やな)


「結構です。この瞬間から、貴方は沢蟹のメンバーです。こちらにサインを」


 ジークはペンを取り、署名した。


 "ZEKE"


 名前だけ。


 三人が彼を見た。オルランドはプロとしての好奇心で。アキは優しさと戸惑いの入り混じった表情で。華凛は、ちょうど仮説を確認した者の表情で。


 誰も何も言わなかった。六田弘司のもう一つの不注意を、息子がしばらく背負うことになった。


「第二の要件です」


 アキが再開した。


「トーナメント参加メンバーの確認を」


「もちろんです」


 オルランドは画面を更新した。プロフィールが一人ずつ現れた。


「確認なさいますか?」


「アレクサンドロスレツォスと井上魁斗」


「確認しました。他に何か?」


 アキは最後のキャンディを取った。ゆっくりと噛み、しばらくこれを温めてきた者の静けさで。


「最後に一つ。事務所の取り分を更新したいの」


 ジークは何の話か分からなかった。華凛には分かった。


「90パーセント」


「――90!?」


 オルランド、ジーク、華凛が同時に、まったく異なる三つのトーンで言った。


 アキは瞬きもせずに三人の視線に耐えた。


「何か問題でも?」


 誰も答えなかった。誰もまだ十分な言葉を持っていなかった。


 オルランドは、もっと酷いものを見てきた者の中立性で申請を処理し、コメントなしで進めた。


◇


 共鳴本部の外では、アキが手続きを終える間、魁斗と瞬がコロッセオの正面入口を横切っていた。


 瞬はポケットに手を入れて、前を向いて歩いていた。シャレーを出てから、あまり話していなかった。必要なかった。


 そして別の方向から、アレクサンドロス・レツォスが群衆の間を進んでいた。一人で。


 だが、何かが違った。いつも後ろに流していた長い髪は消えていた。代わりに、清潔で男らしいカットが、その存在感の重みを正確に言い表せない形で変えていた。


 数分後、一行は揃うことになる。


◇


 華凛、ジーク、アキの一行は正式にコロッセオへ入った。


 何千人もの人々。食べ物の屋台。誰も特定できないが、この場所の整然とした混沌に完璧に合うBGM。


(俺もこれの一部になりたい)


 ジークは思った。疑いなく。


 アキはホットドッグを買った。ジークはたこ焼き。華凛はイチゴアイス。ウォレスビーチは真夏で、太陽は交渉に応じなかった。


 ジークはその屋台を称賛せずにはいられなかった。たこ焼きは本当に美味かった。正しい食感で、出汁も絶妙だった。


 華凛が一切れ味見を求めた。結果はほぼ同じだった。


「――これが本物のたこ焼きや!」


 彼女は言った。


「アキのとは違う」


「華凛ちゃん」


 アキは穏やかで、ほとんど厳粛な仕草をした。


「私は神々のためにたこ焼きを作るの。人間のためにじゃないわ」


 ジークは魁斗が話していたことを一瞬思い出した。黙っていることにした。


「ああ」


 華凛は一瞬考えた。


「だから路上の屋台で何も売れなかったの?」


 アキは足を踏み鳴らした。


 やがて、一つの声が彼女をぴたりと止めた。


「あら……何かしら、これ。小さな秋田アキじゃないの」


 アキの耳は、目より先にその口調を認識した。彼女はゆっくりと振り返った。


「リコちゃん。こんな場所で会うなんて、驚きやわ」


 御手洗リコ。小倉実業大学でのアキの元同級生。


 二人は二年間ライバルだった。御手洗は最も優秀な学生の一人で、秋田は最悪の成績の一人だった。それでも二人とも卒業したが、リコがそれを完全に消化したことはなかった。


 アキが島に来てから、路上のたこ焼き屋台と大学での勉強を両立させ、生活費と学費を自分で賄っていた。


 アレクサンドロスは、最初から誰に頼まれるでもなく、彼女の教育費の大部分を払っていた。彼によれば投資。アキによれば、返しきれない借金。


 一方、リコはその間、自分自身のたこ焼き屋台を出していた。必要だからではなく、ただ彼女を困らせるために。必要でもないのに、良い利益を上げていた。


 それが御手洗リコという人間だった。


「ここで何をするつもりなの、小さなアキ? 観客を食中毒にするの?」


 計算された間。


「ああ、そうか。売るには許可が必要よね。物乞いに来たの? はい、どうぞ」


 彼女は、何かを捨てるかのような自然さで一万円札を取り出した。


 アキはそれを掴んだ。瞬きもせずにポケットにしまった。


「そんなんやないわ、リコちゃん。うちの事務所のメンバーの勝利を見に来たんや」


「まだその話を続けてるの?」


 リコは短く笑った。


「哀れな大男を搾取して、その金で大学に通わせてもらっただけじゃないの?」


「彼の名前はアレクサンドロスや」


 アキの口調が変わった。


「搾取なんかやない。彼は私のパートナーや。あれは投資やった。沢蟹は遊びやない、リコちゃん。間もなく、世界最高の共鳴者を抱えることになる」


 リコは本気で笑った。


 ジークと華凛は介入せずに見ていた。必要なかった。アキは本気で話していた。いつもの大げさな仕草なしに。誇張した顔も、芝居がかったジェスチャーもなしに。


 ただ、本気で。


「ところで」


 アキは少し首を傾けた。


「あんたは今日、何しに来たん? 観客?」


 リコはドレスとヒールを身に着けていた。プロフェッショナルな服装で、特に変わったところはなかった。ただし、胸に留めた金色のバッジを除いては。それが、腹立たしいほどの正確さで太陽の光を捉えていた。


「一部はね。でも、仕事で来てるの。私は小倉の桜共学園の教師よ。このトーナメントにふさわしい公開演武を行う二人の若き天才を連れて来たの」


 ジークは堪えられなかった。


「共鳴者のための学校があるんか?」


 リコは彼を見た。軽蔑ではなく、正確には。むしろ、当然のことを説明する者の教え諭すような態度で。


「当然でしょ。偉大な才能はただ現れて栄光を手にするわけじゃない。島では、生徒は小学校から鍛えられるの。身体的、精神的、学問的な適性。未来の顔になる準備をして卒業するのよ」


 リコは両腕を広げ、そのいわゆる天才たちを見せた。


 灰色がかった髪の褐色の肌の少女。無理をしているようには見えない姿勢で立っている。


 そして、ジークが特定できないスタイルのマントととんがり帽子をかぶった少年。


「この二人が共鳴の未来よ」


 リコは短い仕草で彼らを指さした。


「もしこのバッジを誰か他の人がつけていたら、それはおそらくどこかのアカデミーの教師か学院長よ。邪魔しないで」


「それだけ?」


 アキが言った。


「はあ」


 リコは笑った。


「そこで這いずり回ってなさい、小さなアキ。また会いましょう」


 彼女は去った。少女が続いた。


 少年はしなかった。彼は一瞬、ジークを見つめて残った。敵意のない、まっすぐな視線。だが、その中に何か、名付けにくいものがあった。


 まるで、彼が誰かを思い出させるかのように。


 あるいは、ジークが彼に誰かを思い出させるかのように。


 そして彼は振り返り、他の二人に追いついた。


「アキ」


 華凛はリコが群衆の中に消えるのを待った。


「今日、魁斗とアレクサンドロスが参加するって言えばよかったんじゃない? 少なくとも、あんな扱いはされなかったわよ」


「言葉の問題やない」


 アキはリコがいた方を見ていた。


「事実の問題や。今日、あの二人は遠くまで行く。分かってる。予感がする」


◇


 正確な場所を数分探した後、彼らは特別室を見つけた。


 広々とした空間で、あらゆる細部に赤が際立っていた。


 一級の座席、プレミアムな食べ物の屋台、指示を待つ執事たち。


 共鳴の精鋭たちがこの場所にいた。


 座席は二列しかなかったが、その二列がアリーナ全体を囲んでいた。コロッセオの中間、死角のない位置に。


 アキは目を大きく開いてすべてを見ていた。ここに来るのは初めてだった。


 華凛は少し感動していたが、取り繕っていた。


 ジークはアキと同じか、それ以上に興奮していた。


「書類によると、私たちはエリア・アルファBに六席あるわ。」


 華凛が言った。


「それは……」


 アキはその位置を平面図で処理した。


「――アリーナの真ん中やん!」


「ほぼ最高の角度よ。」


 華凛が確認した。


「素晴らしいわ。」


 三人は座った。


 アキは携帯を取り出し、かなりの速度でグループに書き込んだ。


「みんな! 特別室のエリア・アルファBに来て! できるだけ早く来れるように位置情報を送るから、遅れないで!」


 メッセージの最後に、たくさんの笑顔の絵文字を送った。


 華凛とジークはそのメッセージを見た。


 何も言わなかった。


 最初に到着したのは井上兄弟だった。


「こいつと一緒に来て正解やった。」


 瞬が言った。


「こんな広い場所やと、迷いかねんからな。」


 魁斗は頭で一行に挨拶した。


 固さはまだそこにあったが、その表情の何かがわずかに緩んでいた。


「みんな、こんにちは。まだ来てへんの……?」


「もうメッセージは読んでるわ。」


 華凛が言った。


 スタジアムの声が、まもなくトーナメントの開会式が始まると告げ、参加者に待機所へ向かうよう促した。


 特別室の扉が勢いよく開いた。


 居合わせた全員が振り返った。


 彼だった。


 アレクサンドロスが登場した。


 視線はまっすぐに彼の頭の上部へ向かった。


 全員が感動していた。


 アキを除いて。


「――アレク! なんで髪を切ったの!? あんたがうちの話を聞かへん時、引っ張るの好きやったのに!」


「皆さん、おはようございます。」


 アレクサンドロスはそのコメントを、習慣であるかのように無視した。


「このイベントの重要性を考慮して、より威厳のある姿であるべきだと。」


 彼は間を置いた。


 魁斗を見た。魁斗は別の方を向いていたが、明らかに横目で見ていた。


「それに、髪にガムでもつけられたら、殺しかねないからな。」


 魁斗は直接見ずに、何か言い返した。


「まあまあ。」


 アキが片手を上げた。


「入る前にそんな風にならないで。ちょっと聞いて。」


 五人のメンバーが彼女を見た。


 その顔には、いつもとは違う何かがあった。大げさな仕草なしに。いつもの溢れんばかりのエネルギーなしに。


 ただ、目に一つの炎が灯っていた。


「アレクサンドロス・レツォス、井上魁斗。あんたたち二人は私の最高の札や。戦闘だけやない。この事務所の心や。そして、あの三人の中にいる炎を煽る者たちや。手本を見せて、できる限り戦って、栄光を手にしなさい。残りの十四人は地獄へ行け。あんたたちが、この新時代を始める者たちや。」


 短い間。


「うちは沢蟹や。簡単には負けへんで、なあ、みんな?」


 アキは拳を突き出した。


 ジーク、華凛、瞬が続いた。


 魁斗はその固さの中で笑みを浮かべ、拳を突き出した。


 アレクサンドロスは、いつもの冷静さで、その約束を締めくくった。


「全力を尽くせ。」


 アキが言った。


「信じてるから。」


 一体感がその場に満ちた。


 島に来てから初めて、ジークはこのグループが自分とも一つであると感じた。


 魁斗はついにアレクサンドロスを見た。


 そして、固さが一気に消えた。


 いつもの顔で彼を見た。


 あんなに陽気に、あんなに熱心に、あんなに彼らしく。


「ゴリ助。決勝で会おうぜ。」


 彼は手を差し出した。


 アレクサンドロスは真面目なふりをしようとした。


 できなかった。


「ああ、そうなるさ。幸運を祈る、魁斗。」


 二人は握手を交わした。


「結局、緊張を隠していただけやったんやな。」


 華凛が呟いた。


「ああ。」


 瞬はアリーナを見ていた。


「でも、本当の挑戦はここからや。勝者は誰になるんやろな?」


「勝者は誰か……」


 ジークは小声で繰り返した。


 *いつか、俺もこれの一部になりたい。*


「若者よ、すみません、食べ物を頼みたいのですが!」


 アキは近くの執事に手を挙げた。


「かしこまりました、お嬢様。」


 男はペンと紙を取り出した。


 残りのメンバーはそれぞれ好きなものを頼んだ。


 アレクサンドロスは来た方向へ出て行った。


 魁斗は大きく息を吐き、そして去った。


 沢蟹は公式に戦い始める。


 数分後、ゴングが鳴り、トーナメントの開会式が始まった。


 期待は天を超えていた。


 アキは明らかに緊張していたが、背筋を伸ばしてアリーナを見ていた。


 瞬は参加者リストの冊子を分析していた。


 華凛はコロッセオの自分の角度から写真を撮り、インスタグラムに上げた。


 ジークは食べ物を頼んだ。


 彼のゾーンの執事は、何年もこれをやってきた者の効率で注文をさばいていた。


 やがて、スタジアムの声がコロッセオの隅々まで満たした。


「――皆さん、こんにちは! 私の名前はスペンサー、大西洋の常連コメンテーターです! ですが今日は、この特別なトーナメントのコメンテーターを務めます!」


 ジークは耳を澄ませた。


「この世界が初めての方のために説明しましょう。クイーンズ・トーナメント――正式名称です。別名サマークラシック、そして地元の人々にはサザンクラシックとして親しまれています。年間四大トーナメントの一つです。優勝者は多額の賞金と、エリート共鳴者に挑戦する機会を得ます。さあ……開会式を始めましょう!」


 スタジアムの周囲から花火が打ち上げられた。


 音楽が最大音量に上がった。


 その地域の伝統的な演舞と踊りが、あっという間に過ぎる十分間、アリーナを満たした。


 すべてが静まると、スペンサーが再開した。


「――さあ、十六人の参加者です! 名前を呼ばれたら中心へお進みください!」


 観客が爆発した。


「――最初の参加者です! 大仏守《おさらぎ まもる》! ゼウスの共鳴者、ランキング一位、虎事務所の顔!」


 大仏が現れた。


 大きい。オレンジの髪。袖なしの茶色の胸当て、額にティアラ、革のブーツ、そして明らかに引き締まった脚。太陽のように輝く笑み。急ぐことなく、大きな仕草で観客に挨拶していた。


「――第二の参加者! 古井健! 白鷺に入ったばかりの新鋭! ホルスの共鳴者、ランキング二位!」


 古井は大仏ほど体格は良くなかったが、そのオーラは別物だった。ほぼ全身を覆う茶色のスーツ、ベルト、ブーツ。誰にも挨拶せずに入場した。


 スペンサーは列挙を続けた。


 第三:長友涼、ケツァルコアトルの共鳴者、朝獅子事務所所属。


 第四:高田梁山、プロメテウスの共鳴者、虎の顔。


「プロメテウス……あれは神なんか?」


 ジークが呟いた。


「あれはティタンよ。」


 華凛は顔を上げずに言った。


「でも天界に属してる。あっちでどういう分類になってるかは知らんけど。」


「――第五の参加者! 李芳! ランキング五位、仏陀の共鳴者!」


「彼や。」


 華凛が言った。


「お爺さんが見せてくれた写真とは少し違うわ。」


「お爺さん?」


 ジークが尋ねた。


「あんたが寝とった時にあったんよ。」


 アキが言った。


「ウォレスビーチに着く前や。」


「ああ……もっと知りたかったわ。」


「ちなみに。」


 華凛が付け加えた。


「魁斗はチャレンジャーサーキットで彼に三回負けとる。」


 ジークはゆっくりと身を起こし、防護ガラスに両手を置いた。


 *三回?*


 李芳は中心へ進んだ。服装は周中で一行が見た写真と一致していた。


 素晴らしい肉体コンディション、僧侶の衣。だが、髪は写真よりも伸びていた。


 スペンサーは続けた。


 第六:セファー。偽名、アメリカ出身、ハデスの共鳴者。カウボーイハットと衣装、そして奇妙なことに彼の神具はリボルバーだった。観客は彼をどう扱えばいいか分からなかった。


 第七:ハーパー、ヘルの共鳴者、イギリス出身。事務所なし。


 第八:サエ・ガオラン、アヌビスの共鳴者。中心に着く前に、その態度で観客の大半からブーイングを浴びた。


 第九:メタルメイデン、明芙《メイ・フー》の偽名、チユウと結ばれた中国の共鳴者。観客の人気者の一人。


 第十:ハル、日本人共鳴者、ヴィシュヌとの関連。儀礼的な衣装だが、存在感は決して見過ごせなかった。


 第十一:アイアントレイン、アメリカ人共鳴者、オシリスとの関連。プロボクサーのようなリズムで入場した。ジークはすぐに気づいた。――その動きは、最初の対戦相手の一人であるジョーダン・スミスを強く思い出させた。


 第十二:トーマス・フェルブルッヘン、コアルハウ出身の共鳴者、シヴァとの関連。映画から出てきたように見えた。観客席の女性セクションがそれに応じた。


 第十三:真琴、名前だけ。日本人共鳴者、猿田彦大神との関連。


「可愛いな。」


 ジークが言った。


「私の先輩よ。」


 華凛が言った。


「先輩?」


「猿田彦大神様に紹介された時に会ったの。私と同じように扱ってる。彼女の神具は知らないけど。」


「で、それはどういうことや?」


 華凛は沈黙した。


 答えなかった。


 スペンサーは列挙を続けた。


「――第十四位! ギリシャの戦士、アレクサンドロス・レツォス! アレス師の最も偉大な弟子の一人! そして……ええと……事務所の名前は大丈夫か? ああ、そうそう……沢蟹事務所から!」


 アレクサンドロスは、言葉を必要としない表情でスピーカーの一つを見た。


 アキはスペンサーを、どこにいても軽蔑の目で見た。


「――第十五の参加者! ソラリス! アテナの共鳴者、虎の顔、そして男性ファンと子供たちの人気者!」


 ソラリスは中心に着くと大仏に挨拶し、彼の近くに立った。


「――そして最後! 井上魁斗! イザナミの共鳴者、そして沢蟹事務所でアレクサンドロスの同僚!」


 ジークは初めて魁斗の服装を注意深く見た。


 いつもの服ではなかった。


「なんでスーツなん?」


「クラシック用の戦闘服や。それに、魁斗は戦闘で奇抜なのが好きなんや。」


 華凛が言った。


「みんな彼の戦い方を楽しむわ。小倉ではかなり有名やで。それに、ウォレスビーチでは生きる伝説やねぇ。賭博師たちは彼を神のように崇拝しとるわ。」


「は? 神? ……そんな奴と一緒に住んどったんか、俺……。」


 魁斗はマイクを手にアリーナへ入った。


「――皆さん、こんにちは!」


「――おい、注目をさらうな!」


 スペンサーが口を挟んだ。


「――皆さんの大きなご支援に感謝します! 今日は必ずスペクタクルをお見せします! ありがとうございます!」


 観客が爆発した。


 彼の名前を唱え、魁斗は四方八方に会釈で応えた。


「……ええと。井上魁斗で、十六人の参加者が揃いました。さあ、メインスクリーンにご注目を。これが第一回戦の組み合わせです。」


 組み合わせがスクリーンに現れた:


 大仏守(1)vs 井上魁斗(16)

 サエ・ガオラン(8)vs メタルメイデン(9)

 李芳(5)vs トーマス・フェルブルッヘン(12)

 真琴(13)vs 高田梁山(4)

 長友涼(3)vs アレクサンドロス・レツォス(14)

 アイアントレイン(11)vs セファー(6)

 ハーパー(7)vs ハル(10)

 ソラリス(15)vs 古井健(2)


「――参加者の大仏守と井上魁斗、アリーナに残ってください! 第一試合です!」


 特別室では、沈黙が一秒続いた。


 魁斗は間違いなく、最も厳しい相手と踊ることになった。


今回はかなり長いお話になりましたが、最後までお読みいただき本当にありがとうございます!


ここまで読んでくださったということは、それだけこの物語にハマってくれたということで……作者としては感無量です(泣)。


いよいよ夏のクラシックが開幕しました!新キャラクターたちも続々登場しますので、これからもゼークの戦いをぜひお見届けください!

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