支配 ~メレニスの新たな魂~
最初の日は、ほろ苦い結果で終わった。
ジークは張を導くことに成功したが、その経験がないために、共鳴を一度に使い果たしてしまった。
夕食は凄まじかった。
瞬がペントハウスにやって来た。
短い運動、瞑想、そして数回のポーカーで、その日は締めくくられた。
◇
■ 2022年8月13日
サザンクラシックまであと二日。
翌日、ジークはアキからの電話で目を覚ましたが、それを拒否し、その後ベッドから起きた。
「おはよう、ジーク。アキから電話あったか?」
「ああ、でも出んかった。今は些細なことで時間を無駄にしたくないんや」
「出た方がええぞ、少なくとも礼儀としてな。あの女はかなり根に持つタイプやで。一度、食事に誘ってくれた礼を言い忘れたら、寝てる間にマーカーで顔に落書きされた」
「ははは。それは見たかったわ。でもお前の言う通りや。トーナメントで会ったら謝るわ。朝飯、行くか?」
朝食はいつも通りだったが、魁斗はいつもより少し多く食べるように勧めた。
ジークは前日よりも多くのエネルギーを必要とするだろう。
二人は訓練センターに戻った。
「よし、ジーク。初日の夜に没入を越え、昨日は動機を学んだ。今日は何を期待しとる?」
「心境を完成させることや。もういいコンディションに感じる。たぶん明日には近くのトーナメントに出られるやろ」
「その意気や! それに、心境の練習は残響の影響を減らすのにも役立つんやで」
「それはタラニスから一度も聞いたことないな」
「そういえば、前に言い忘れてたわ」
魁斗は間を置いた。
「でも、心境を使っとるのは俺たちだけやないんやぞ」
「そうなんか? 誰が?」
「華凛と、うちの弟や。まあ、瞬は最近、第三段階で失敗しとるけどな」
「神崎さん……?」
ジークは眉をひそめた。
「彼女にこれから訓練するって言ったんや。なんで何も言わんかったんや?」
「お前、具体的に心境を訓練するって言ったか?」
「あ……いや。その時、名前を覚えとらんかった。でも、それにしても、どうやって彼女がそれを導けるんや? 見るからに、やる気のかけらもないのに!」
「お前、華凛の眼鏡をちゃんと見たことあるか?」
ジークはそれを思い出した。
レンズのないフレーム。
いつも風変わりな細部だと思っていたが、完全には処理していなかった。
「近視なんか? なんでレンズなしの眼鏡をかけるんや?」
「それが秘密や。彼女の神具はその眼鏡なんや。道開眼っていう。華凛は常に神具を起動させとかないかん。それがないと、彼女はほとんど盲目やからな。神との契約の副作用や」
「だからあんまり戦わへんのか?」
「たぶんそうや。彼女はちょっと怠け者やけど、それは理解できる。日常生活を送るために、常に心境を維持せなあかんのやからな。島全体でも、これほど高くて一定の共鳴の流れを持つ者は数少ないやろ」
「で、瞬は?」
「それは本人に聞け」
魁斗は仕草でその話題を終わらせた。
「話は十分や。お前の最終段階に集中する時間や」
ジークは心境を導き、メレニスを具現化した。
「よし、ジーク。心境の支配における第三段階は……」
短い沈黙。
「覚悟や」
何かが引っかかった。
「でも……それって動機と同じやないんか?」
「正確には違う」
魁斗は、引き出しを開けるかのような自然さで心境を通じてポータルを開き、そこから黒板と二本のマーカーを取り出した。
「見ろ」
彼は話しながら書いた。
「第一段階は没入、すなわちチャンネル。ここでの目標は純粋な集中や。第二段階は動機、すなわち源。ここでは、自分の願望と武器の意志を調和させる。昨日、張とやったようにな」
彼は振り返った。
「第三段階は覚悟、すなわち支えや。聞かせてくれ、お前の神具に宿る声を聞いた時、気分が悪くなったことはあるか?」
ジークは点と点を繋いだ。
異常なトーナメント。
禁断の声を聞いた後の鼻血。
タラニスがその後で言ったこと。
「ああ。禁断の声を聞いた後、試合の後に鼻血が出た。タラニスは精神的ストレスだって言っとった」
「タラニスは完全な情報をお前に与えなかったんや」
魁斗は黒板をポータルに戻した。
「おそらくメレニスには様々な使い手がおって、誰も第三段階を完成させられんかったんやろう。覚悟とは精神の強さや。自分の神具の重みを理解し、それを支えられるようにならなあかん。それが今日学ぶことや」
彼は手を払った。
「さあ、構えろ」
魁斗は神具を取り出した。金色のクランクが宙に浮かび、その上に看板が浮かんでいた。
ジークはそれが何なのか完全には理解せずに観察した。
「それは……」
「そう。俺の神具や。名前は……歓喜の葬送溜! その名前は俺がつけたんや」
彼は満足げに鼻をこすった。
「へへ」
「イザナミの共鳴者の割には、随分と陽気な名前やないか?」
「まあ、長いこと彼女と議論した末に、自分の神具を作り出せたんや。でも今はそれが重要ちゃう。構えろ!」
ジークは構えたが、混乱は完全には消えなかった。
魁斗は金色のクランクで何をするつもりなのか?
その疑問は、魁斗がそれを引いたのを見て消えた。
頭上の看板が回転し始め、文字が一つずつ現れて完全な単語を形成した。
剣。
「最高や! 準備しろ、行くで」
魁斗は予告なしに襲いかかり、一撃一撃に本気の意図があった。
「ジーク……俺の一撃を避ける方法を見つけろ。本気やで」
彼は天気の話でもするかのような冷静さで、攻撃しながら言った。
ジークは防御の隙を探したが、見つからなかった。
数分間、反撃の余地もなく攻勢に耐えた後、彼は決断した。
「――変換:張!」
戦戟が投入された。その重みが間合いの利点をもたらし、魁斗は一歩後退した。
「素晴らしい。今度は俺の番や」
彼は再びクランクを引いた。
マスケット。
優位は瞬時に逆転した。
戦戟は、遠距離武器を持った魁斗の敏捷さについていくには重すぎた。
ジークは突きを試みたが、魁斗はすでに角度を見つけていた。
一撃は胸に直撃した。
ジークの叫びがホール中に響き渡った。
訓練していた共鳴者たちが、一瞬訓練を止めた。
「言ったやろ」
魁斗は上から彼を見下ろした。
「さあ、次の段階を見つけろ。俺を倒さなあかん」
ジークは床で目を閉じた。
もっと軽いものが欲しい。戦戟はここでは不利や
「――誰か他の助けが欲しいんや!」
魂の平面に一つの存在が現れた。
張とは違う。
三国の戦士の穏やかな静けさはない。
これは別の種類の重みを持っていた。
「戦士よ。あの男に勝ちたいか? 我が名を唱えることを許す。我はシャカ。だが、条件を課す」
一呼吸。
「その首を我に差し出せ」
ジークは黙ってそれを処理した。
(友を殺すことはできへん。でも、殺すふりをせなあかん。最後の瞬間に致命傷を避けるにはどうすればいい?)
答えはひとりでに訪れた。
「シャカ、お前の名において殺す。だが、お前を自由に使う自由を与えろ」
「まず、お前の勇気と献身を見せよ」
ジークは目を開けた。
現実では、ほんの一瞬しか経っていなかった。
魁斗はすでに再び襲いかかっていた。
「――変換:シャカ!」
煙は以前とは異なる強さで噴出し、熱を帯びていた。
魁斗は後退しなかった。
「熱は激しいが、ためらうつもりはない。行くぞ!」
煙が晴れた時、魁斗は槍を見た。通常より軽く、短い間合いだった。
ジークはそれを異なる構えで支えていた。
より自然に、より自分のものとして。
「これは戦戟より軽い」
彼の顔に笑みが現れた。
「魁斗、本気で行くで」
「最高や! 来い!」
ジークは戦戟では決して許さなかった敏捷さで攻撃した。
魁斗がセンチ単位でかわす速い突き。そのうちの一つがマスケットを彼の間合いの外へ吹き飛ばした。
魁斗は離れ、クランクを引いた。
看板が回転した。
ジークはその単語を読み、目を大きく見開いた。
「――剣の形をした風船!?」
「ああ、運が悪いな……」
魁斗はその風船を、読み取りにくい表情で見た。
「まあ、油断するな、ジーク!」
ジークは首へ直行したが、その瞬間――
プゥウム。
風船が爆発した。
「よし。負けを認める」
ジークは魁斗の首から数センチのところで止まり、槍は宙に静止していた。
「何を……したんや?」
「共鳴が切れたんや」
魁斗は心の中で間を置いた。
(本当は切れてへん。でもこのまま戦ったら、本気で傷つけられる……それが起きる前に嘘をつかんと)
「とにかく、よくやった」
「ちょっと待て!」
ジークは槍を下ろした。
「今からこれをシャカにどう説明するんや!」
「ん? その魂と通信できるんか?」
「やってみる」
彼は目を閉じた。
「シャカ。これは計画通りやなかった。でも、殺しに行ったんや。それを知ってほしい」
「で、その首はどこや?」
「それは……体にくっついとる」
「約束が違う。去れ」
「もう一度チャンスをくれ。頼む」
「戦士は決して慈悲を乞わない。消えろ」
「でも……」
「――失せろ!」
シャカは平面に部分的に具現化した。
トライバルな戦士が、槍をジークの頭に直接向けていた。
ジークは後退しなかった。
「――お前の槍で勝負する! 俺が勝ったら、それを使わせてもらう!」
戦士は彼の顔から数センチのところで止まった。
「お前、よく知りもしない武器で勝てるほど、肝が据わっとるのか?」
「ああ。本当の覚悟を見せてやる」
ジークの視線は揺るがなかった。
シャカはゆっくりと槍を下ろした。
「チャンスをやろう。明日、お前はトーナメントに出る。俺は見ている。俺は張のような慈悲深い存在やない。もし負けたら、お前の体を奪い、お前はここに永遠に閉じ込められる」
「見てみたいもんや、シャカ。明日」
ジークは目を開けた。
すでに鼻から血が流れていた。
「大丈夫か?」
「ああ」
彼は手の甲で拭った。
「明日、勝たなあかんトーナメントがある。訓練を続けよう」
「そうや。でも神具なしでは、もうエネルギーが残っとらん」
「俺もない。でも、どれを使うかは分かっとる」
彼は武器の棚から木の槍を選んだ。
「お前のも選べ」
魁斗とジークはその日の残りを練習し続けた。武器も、共鳴もなしに。
ただ動き、耐え、そして翌日の重みだけがあった。
心境の第三段階は覚悟や。
だが、そこへの道はすでに引かれていた。
◇
二人はいつもの儀式で、朝九時にビュッフェを出た。ただ、ジークの目には何か違うものがあった。重みが減り、明晰さが増していた。
「なあ」
ジークは歩きながら携帯から目を上げなかった。
「小倉のニュースレターによると、二十分後にクイーンシティの第19スタジアムでトーナメントが始まる。チャレンジャーや! 行こう!」
「待て。本当に戦いたいのか? 気分は悪くないか?」
「全然。瞑想と心境のおかげで、残響の痛みはかなり減っとる」
「分かった、チビジーク」
小倉ほど厳しくなかったらええけどな
ジークは思ったが、口には出さなかった。
クイーンシティの第19スタジアムは、サザンクラシックの施設に比べれば質素だったが、チャレンジャートーナメント特有のエネルギーがあった。
あらゆるランクの共鳴者たち。儀礼も、有名な苗字もない。
ただ、戦いだけ。
受付では、プロフェッショナルな笑みとタブレットを持った女性が迎えた。
「おはよう、若者たち。私はクレオ、今日の受付よ。登録する?」
「おはよう。俺だけや。彼は観客や」
「正解」
魁斗が確認した。
「素晴らしい。参加費は15000円よ。ここに預けてちょうだい」
ジークと魁斗は顔を見合わせた。
「おい……金持っとるか? 俺はホテルに置いてきた。参加費が要るとは覚えとらんかった」
「あ? ええと……ある。ほら」
魁斗は迷惑を隠そうとする流暢さで金を取り出した。
ジークは瞬きもせずにクレオに札を渡した。
「結構。共鳴カードを渡してちょうだい」
ジークはカウンターに滑らせた。クレオはそれを読み、その表情がわずかに変わった。
「ええと……六田ジーク、十八歳、スコットランド人……」
短い間。
「おお!」
「何か?」
「ローチャレンジャーの記録がありますが、トーナメントでの功績によりチャレンジャーへの昇格があります」
「はい、その通りです」
魁斗は何も言わずに笑みを浮かべた。
「タラニスとの共鳴、神具メレニス、事務所なし……」
クレオは顔を上げた。
「はい、正式に登録されました」
「事務所なし?」
魁斗とジークが同時に言った。
「ええ。システムに登録事務所がありません。誤ったデータですか?」
魁斗はジークの腕を掴み、外科医のような繊細さでカウンターから遠ざけた。クレオは礼儀正しい好奇心の表情を浮かべていた。
「友よ。何も言うな。このトーナメントを事務所なしで戦えば、賞金の百パーセントを手に入れられる」
「ほんまか!?」
ジークは急に声を潜めた。
「分かった。今日、沢蟹は俺にとって存在せん」
「沢蟹が存在しない?」
二人は同時に振り返った。
アキがそこにいた。腕を組み、笑みとも言えない笑みを浮かべて。
「アキ!? いや、そうやなくて、データを更新しとらんかっただけで……」
「ふん」
アキは一瞬二人を観察した。
「今日は見逃してあげる。でも明日、変更するからね!」
「はい、アキ。分かった」
「間に合ってよかった」
瞬が彼女の後ろに現れた。予定より長い午前を過ごした者の表情で。
「弟よ!? なんでここに?」
「言いたくなかったんだけど……実は魁斗のスマホに、ずっと前に俺が仕掛けた位置情報チップがあるんだ。正直、まだ生きてるとは思わなかったよ。前はすぐにスマホを変えてただろ……」
「何をしたって……?」
その問いは宙に浮いたまま、アキはジークに、本気かどうか分からない怒りの目を向けていた。
魁斗はアキを見て尋ねた。
「で、アキと来たんか?」
「違う。彼女が勝手についてきたんだ」
瞬は上司を横目で見た。
「他にやることもなかったみたいだな」
アキは、あまり隠そうともしない罪悪感で頭を掻いた。
「まあ」
瞬はジークに向き直った。
「お前の戦いを見るいい機会や。小倉では華凛だけが見とったけど、弟のことで気が散っとったからよく覚えてへんって言っとった」
「まあ、ジーク」
魁斗は彼の肩を叩いた。
「書類を終わらせろ。幸運を祈る!」
三人は観客席へ向かった。ジークはクレオとの詳細を終え、参加番号を受け取った。
一番。
トーナメントの最初の番号である利点は、後に休憩時間が多く取れることや
彼は控え室へ歩きながら思った。
でも今は関係ない。戦略が必要や
◇
リンボでは、光はいつも通りだった。暖かく、起源もなく、影もない。
「ジーク! 調子はどうじゃ?」
「悪くないわ。最近よう眠れとる」
「で、心境は?」
タラニスは彼を注意深く観察し、視線で体を巡らせた。
「わあ。見事じゃ。ほとんど怪我がないのう」
「いい師匠がおったからな。でも今は戦略を考えなあかん」
タラニスは指を鳴らした。ラヴィアナが瞬時に現れ、二杯の水と、人間のどんな言語にも名前のない匂いのする焼きたてのパンを運んできた。
「少し食べてもええか?」
「もちろんじゃ。神の食事は栄養価が高く、お前の能力を高める」
「まるでステータスが上がるみたいトン!」
ラヴィアナが目を輝かせて付け加えた。
「小娘、お前はいつもくだらんことを言うのう。その引用が分からん」
タラニスは間を置いた。
「だが、そうじゃ。助けになる」
天界にも、テレビゲームなるものが存在するのだろうか。
ジークは神聖なブルーベリージャムを二切れに塗り、ゆっくりと食べた。
その味は説明が難しく、誰かが「穏やかな朝」という概念を蒸留したかのようだった。
「なあ、朝飯を食ってきたんやけど、これは軽くて重さを感じへんな」
「当然じゃ。この食事は胃を満たすためのものではない。魂を満たすためのものじゃ」
タラニスは口調を変えた。
「この間、心境で何をした?」
「見てて」
ジークはメレニスを導き、流れるような清潔な動きで戦戟へ変換した。目に見える努力はなかった。
タラニスは瞬きをした。一秒後に平静を取り戻したが、その瞬きがすべてを物語っていた。
「それだけか?」
「今日のトーナメントはシャカを手に入れるためや」
「ああ。あの男か」
タラニスは腕を組んだ。
「殺せとか、馬鹿なことを言ったじゃろ?」
「ああ。でも交渉した。今日は彼の槍だけで勝たなあかん」
「なるほど。まあ、そんなに難しくない」
彼女はまっすぐに見た。
「正直に言うと、お前の最初のトーナメントは異常じゃった。今日は問題ないじゃろう。幸運をやる必要はない、お前ならできる」
ジークは何かが胸に落ち着くのを感じた。傲慢ではなかった。それよりもっと静かなものだった。
「今日は何としてでも勝つ。また後でな、二人とも」
タラニスは小さく手を振った。
ラヴィアナは持てる限りのエネルギーで見送った。それは相当なものだった。
ポータルが開いた。
スタジアムの声がトーナメントの開始を告げていた。
ジークは組み合わせ抽選に間に合うようにアリーナの中心へ戻った。結果を読んだ。
最初の試合は狼毒、中国人の共鳴者だった。




