心境の訓練 ~俺の動機じゃ不十分なのか?~
■ 2022年8月12日
トーナメント開始まであと三日。
眠っているジークの顔に、小さな光の筋が落ち、彼を目覚めさせた。
「おはよう、相棒!」
「おはよう、魁斗」
「何か忘れてるやろ」
魁斗は交渉の余地のない表情で彼を見た。
「おはようございます……師匠……魁斗」
「完璧や!」
朝食は豊富だったが、ミルトンに来てから初めて、ジークは置かれているトレイを全部空にしなかった。
魁斗も同じだった。
静かな、相互の決断。今日からは、満腹になるまで食べるのであって、限界まで食べるのではない。
ホテルの厨房では、スタッフが安堵の視線を交わし、それをプロフェッショナルさで隠そうとした。
朝食後、二人はホテルの内部フロアの一つにある共鳴者訓練センターへ降りた。
広い白いホールで、壁と床はクッション材で覆われ、影を落とさない均一な光で照らされていた。
反対側の端では、二人の共鳴者が訓練していた。
魁斗とジークは離れた隅へ向かった。
「よし、ジーク。心境で何を得たいんや? まず、お前の神具がどう機能するか教えろ。ただの鉄の剣とは思えん」
「ああ、そうや。メレニスは、中に封じられた魂の交換によって姿を変える武器や。今のところ、二つしか知らん」
「で?」
「一つしか使ったことない。でも自由には使えへん。危機的な状況で、俺が制御せんうちに起きた」
「もう一つは?」
「女神が使うなって禁じた。接触しようとしたら、俺の体を乗っ取るかもしれん」
魁斗はゆっくりと頷き、処理した。
「なるほどな。じゃあ今日の目標は、お前が接触できた魂を呼び出すことや。武器を変えられるって言ったよな。仕組みは?」
「魂の声と通信して、その名前を唱えなあかん」
「じゃあ、そこから始めろ」
ジークは共鳴カードを取り出した。
記憶を呼び起こし、それが心の隅々まで満たすのに任せると、メレニスが前夜と同じ柔らかな静けさで彼の前に具現化した。
没入が完了した。
「これがメレニスや。今から戦戟を導いてみる」
「できるって、ジーク」
彼は目を閉じた。
集中はすぐに訪れたが、向こう側で見つけたのは沈黙だった。
空虚な沈黙。存在も、応答もない。
彼は汗をかき始めた。
「張? 張、助けが欲しいんや! 頼む!」
何もない。
ただ彼と、壁のない空間に響く自分の声の残響だけ。
誰も答えへん。もしかしたら、名前を声に出して言わなあかんのか。
彼は目を開けた。
「――変換:張!」
白い煙がメレニスから爆発し、ホールの隅を満たし、居合わせた者たちの視界を曇らせた。
反対側の共鳴者たちが振り返った。
煙はゆっくりと晴れていった。
メレニスはメレニスのままだった。
「ジーク、それ、戦戟か?」
「いや。何も起きへんかった」
「ああ、そう思っとった」
魁斗は失望ではなく、その答えをすでに計算していた者の冷静さで言った。
「まあ、全てが無駄になったわけやない。心境は単なる精神状態以上のものや」
「他に何が必要なんや?」
「心境は三つに分かれる。第一は没入。それはもう達成した」
「残りの二つは?」
「次に必要なのは動機の支配や」
魁斗は腕を組んだ。
「教えてくれ、ジーク。お前の本当の動機は何なんや?」
「世界一の共鳴者になりたい」
魁斗は頭を掻いた。
「それは曖昧すぎるわ」
「曖昧?」
「誰でもそう思うやろ。一般的すぎるんや。本当の動機が必要なんや」
彼は間を置いた。
「魂を持つ神具の話を聞くのは初めてだが、もし俺が張で、そんな答えを聞いたら笑うぞ。それを守るべきだとでも?」
ジークはすぐには答えなかった。
「ほなら考えろ。お前の人生全体で、一番守りたいもんは何なんや?」
「守りたいもの? タラニスか? いや、そうとは思わん……そう言うには早すぎる。事務所か? 知り合ったばかりで、まだそんなに強いもんやない。親父か? あの人は強い、自分を守れる……」
彼は止まった。
「待て。親父」
◇
記憶がひとりでに訪れた。心境を練習し始めてから、他のすべての記憶がそうであったように。
ただ、これはジークが語った記憶ではなかった。
原点の只中で起きたもの。
あの日、そこに存在していたが、ジークが完全には認識していなかったもの。七歳で、それを理解する言葉を持っていなかったから。
父とボレアスの会話。彼が傍らで待っている間の。
――「弘司、我が子よ。どうしてそんな状態になったんじゃ?」
――「ボレアス様……認めます。アグネスが亡くなってから、前に進む動機を見つけられませんでした。自分を随分と疎かにしました。ジークも」
――「ならば、なぜ動機も見つけられずに我を呼べたのじゃ?」
――「正直に言って、分かりません」
ボレアスは小さなジークを見た。大きな目と、純粋な興奮を抑えて体にぎゅっと手を当てて待っている。
――「小さな子を見ろ、弘司。あの子が数年後、世界を見始めた時、何を思うじゃろう? この……残骸を、父親としてどう思う?」
弘司は息子の顔を見た。
その目、そして亡き母を思い出させるそばかす。時々、まっすぐ見られない。
彼はゆっくりと反対側を向いた。ジークに泣いているところを見せないように。
――「分かるか? それがお前の動機であるべきなんじゃ、弘司。あの子には強い父親、守る者、そして何より、信頼を伝える者がおる」
――「分かりました、ボレアス様」
彼は残った力で涙をこらえながら言った。
――「自分の力を疑うでない。我はお前の力を疑ったことはない。あの子が共鳴者になりたいなら、助けろ。世界から孤立させるでない。最高の師匠と、最高の父親であれ。我はお前を信じておる」
――「ボレアス様……私がいなくなった時……あの子を守っていただけますか?」
――「契約をしよう、弘司。だが、小さな子にも言わねばならん」
弘司は涙を拭った。
表情をできる限り整え、ボレアスと共にジークに近づいた。
――「小さなジーク、共鳴者になりたいんじゃな?」
――「はい! 一番になりたいです!」
――「完璧じゃ。三人で契約をしよう。試練と、罰と、絆じゃ」
――「ボレアス様、どういうことですか?」
ボレアスはフィンブルヴィンターを具現化し、庭を瞬時に青みがかった霜で覆う力で地面に突き刺した。
――「試練はお前のものじゃ、ジーク。目標はフィンブルヴィンターを掘り起こすことじゃ。罰はお前の父親のものじゃ、それは別の機会に伝える。そして絆は、それをどう成し遂げるかじゃ。弘司、お前がジークを導け。掘り起こせるように訓練しろ。絆とは、お前たちが共に育む相互の仕事じゃ」
――「わあ! それ、ワクワクする!」
――「そうじゃろう? そして契約が完了した時、お前が選んだ共鳴の島へ行け。我が自ら迎えに行く、ジーク」
◇
ジークは現在に戻った。
結局、老ボレアスは来なかった。親父との絆はそんなに強くなかったんやろか? まあ、もう終わったことや。一番大事なのは契約やなかった。一番大事なのは、その後に来たものや。親父との絆。
「魁斗。動機が見つかった。親父との絆を守りたい」
「それは……かなり高潔な理由やな。それで試してみろ」
ジークは再びメレニスを具現化し、目を閉じた。
今度は、通信の平面を探した時、沈黙は見つからなかった。
「張! この世界に残った唯一のものを守るために、お前の力を貸してほしい! 親父を守りたい! 親父との絆が、命を懸けても守りたい一番のものや!」
一つの存在が彼の前に具現化した。
三国時代の鎧をまとい、戦戟を携えた女性。長い間、誰もが知っているからこそ、何も証明する必要がなかった者の構えで。
「全部聞いた。お前の過去も見た、ジーク」
その声は揺るぎなく、飾り気がなかった。
「これからは、お前が我が戦戟を意思で振るうに値すると認める」
張はそれを手渡した。
「さあ、現実の平面で我が名を唱えよ」
ジークは目を開けた。
「――変換:張!」
白い煙が再び爆発したが、今回は短かった。
そして晴れた時、ジークは戦戟を手に立っていた。異常なトーナメントでの最初の相棒。
「ジーク! やったな! なんて堂々とした戦戟や!」
信じられなさは一秒続いた。
自信は後から、ゆっくりと、しかし躊躇なく訪れた。
やったのだ。張との適合は完全だった。
彼は武器を掲げ、空気を打った。
一度、二度。
そして戦戟は消え去った。
ジークは空の手を見た。理解できずに地面に崩れた。
「よし」
魁斗が彼のそばにしゃがんだ。
「それが第二段階や。動機」
ジークは地面から彼を見た。
「あとは第三段階が残っとる。だが今日は終わりや。共鳴を使い果たした」
「でも……なんでこんなに早く共鳴がなくなったんや?」
「普通のことや。戦闘では、神聖なエネルギーは人間とはるかに強く共鳴する。戦闘外では、かなり限られるんや。それに、まだ導き方を学んだばかりや。普通のことやで」
「お前はもっと長く維持できるんか?」
「ああ、でも俺は毎回短時間だけ導くんや。維持する必要はないで。時間が経てば、維持できるようになるわ」
「すごいな。とりあえず、何をするんや?」
「簡単や、チビジーク。身体訓練をしよう。何しろ、俺も訓練せなあかんからな」
最初の訓練の日が、こうして終わった。
◇
訓練の後、魁斗は瞬を誘いに行った。夜にジークとカードゲームをするためだ。
ジークは一人になったが、だからといって何もしないわけではなかった。
訓練中、父とボレアスの出来事を思い出した時、何かが引っかかった。それで深く考えず、弘司に電話することにした。
ププ……
ププ……
「もしもし?」
「よう、親父」
「ジーク、嬉しい驚きや」
「なんでや?」
「ああ、ちょうど街でアイスを買ったんや。冷たすぎて、お前の訓練を思い出してな」
ジークはそれを聞いて嬉しくなった。
「信じられるか? ちょうどその話をしとったんや」
「そうか?」
「まあ、そんなとこや。今、事務所の仲間と心境を訓練しとる。没入を越えて、動機を育てとるところや」
「へえ、随分早く進んでるやん……で、電話の用件は?」
「毎日電話したらあかんのか? 嫌ならせえへんけど……」
「お、おお、そういう意味やない」
「……まあ、思い出したことがあって電話したんや」
「何を思い出した?」
「ボレアスに会った時、試練と罰と絆の契約を結ばされたやろ」
弘司はスマホの向こうで、ジークの言葉に期待していた。
「覚えとるよ。ようやった、息子よ」
「うん、まあ……疑問はボレアスが課した罰のことや。結局言わんかったやろ? 親父は知っとるんか?」
「覚えてへんのか? ボレアスは俺に、お前がフィンブルヴィンターを掘り起こせるようになるまで、それを起動させたままにする罰を与えたんや」
「おい、でも……共鳴って戦闘外では限られとるんやないんか?」
「どれだけ強かったか分かるやろ、この親父は! ははは!」
「それで、ずっと心境を維持しとったんか?」
「ああ……あの罰はかなり助けになったと思う。うつを乗り越えて、お前にもっと集中できるようになった。お前がボレアスの共鳴者やないとしても、俺はお前を誇りに思っとる、息子よ」
「その言葉、ありがとう、父さん。そう言われると嬉しいわ……ああ、そういえば、ベッキーはどうしとる?」
「ベッキーはめっちゃ大きくなったぞ! もう何匹か子どもを産んだ……」
「おお! すごいやん、後で写真送ってくれ!」
会話は何時間も続き、いろんなことを話したが、疑問は解決した。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ベッキーはジークが農場で一番可愛がっていた牛なんです。遠く離れていても、スコットランドの動物たちのことを忘れないジーク。普段は図太いのに、意外と優しい一面もありますよね(笑)。




