最も大切な思い出
ジークは部屋の中をぐるぐると歩き始めた。
散歩ではなかった。
脳が同時にあまりに多くのことを処理していて、その間、体に何かをさせておく必要がある者の無意識の動きだった。
ペントハウスに魁斗。
自分のペントハウスで寝ている魁斗。
事務所で最も混沌とした男が、ジークが心境を見つけるために絶対的な静寂を必要としていた唯一の場所に居座っている。
彼は気づかぬうちにベッドの端にたどり着いた。
探していた静寂はどこにもなかった。
そしてそこで、突然、アドレナリンが止まった。
魁斗とアレクサンドロスのパンチ――純粋な誇りで何時間も無視していたものが、ついに借りを返し始めた。
ジークは伐採された木のようにマットレスの上に倒れ、もう動かなかった。
魁斗はしばらく彼を観察した。
ジークの顔は赤く腫れ上がり、ほとんど芸術的な対称性を成していた。
休息に値した。
魁斗は、その部屋の外では誰も信じないであろう優しさでジークをベッドに寝かせ、時間を潰すためにホテルのジムへと出て行った。
静寂が支配した。
五時間後、クイーンシティに夜が訪れた頃、ジークは目を開けた。
彼はしばらく天井を見つめ、状況を把握した。それから、ナイトテーブルの上に何かに気づいた。不器用に折られた手紙。
『ミニバーに氷の袋を二つ置いた。使え。』
その下に、ピースサインをする手の絵。誰も絵の授業を受けたことがなく、気にもしていない者の精密さで描かれていた。
「せめて、気遣いはしてくれたんやな……」
ジークはミニバーを開け、袋を見つけ、両頬に一つずつ当ててソファに座った。冷たさは即座に、静かな安堵をもたらした。
彼は一時間そうしていた。
魁斗がジムから戻った時、ジークはまだソファにおり、氷の袋が顔に当たってゆっくりと溶けていた。
「よお、相棒。腫れはどうだ?」
「ん。まあ、大丈夫やわ」
魁斗はベッドの端に座り、その日一日で初めて、彼を包むエネルギーが少しだけ下がった。
「今日のことは謝りたかった。本当にやり過ぎた」
「大丈夫やで。ただ……お前ら二人には、もっと仲良くしてほしいだけなんやわ」
「ああ」
魁斗は窓の方を向いた。
「知ってるか? こんなこと初めてなんだ。少なくとも、事務所に入ってからは、俺たち一度も喧嘩したことなかった」
彼は短く間を置いた。
「実は、笑える話でな。俺たちが出会ったのはトーナメントだ。もうすぐ一年前になる」
「どういうことかいな?」
「俺は島に住み始めて三ヶ月で、ここ、ウォレスビーチに住んでた。すでにチャレンジャーランクだったけど、寂しかったのを覚えてる。小倉に行ってトーナメントに出たんだが、そこでその大男を見た。今よりずっと大人しいアキを連れてな」
彼は短く笑った。
「料理の制服を着てた。たこ焼きを売るつもりで来てたんだ」
「たこ焼き? 彼女、料理できるんかいな?」
「聞いたところによると、路上で屋台をやってたらしい。三皿食べたが、美味かった。でも他の客は逆で、食中毒になった。すごく笑えたよ」
「で、トーナメントでは何があったん?」
「決勝まで行った。彼と俺でな。それまで彼の試合を見たことがなかったから、彼の神具がどう機能するか知らなかった」
魁斗は、この話を前にしたことがあり、オチがどこにあるか正確に知っている者のタイミングで間を置いた。
「結局、俺は負けた。その時、バナナを持っていたからな」
「バナナ!?」
「そう。彼の攻勢に耐えられなかった。負けた」
彼はその記憶と和解した者の静けさで言った。
「医務室で目を覚ました時、二人がいた。俺が意識を取り戻すのを待っていた。アキが俺に事務所に誘いをかけたんだ。最後の資金を全部使って事務所を作り、アレクサンドロスをトーナメントに出したと言った。俺は強くなりたかったし、彼のような奴がいたら、それが可能だと分かってた。だから承諾した」
「じゃあ、沢蟹はもうお前ら二人で存在してたんか?」
「まあな。繁栄した時期だった。かなりトーナメントで勝ってた。その後、弟が来た。最初は苦労したが、俺たちのリズムに慣れた」
彼は間を置いた。
「それから華凛が来て、そして……まあ。今は貧乏だ。アキは金の管理ができない」
「ああ。うん。分かるわ」
ジークは素っ気なく答えた。
「でも、まあ」
魁斗は立ち上がり、腕を伸ばした。
「お前がいて、もう揃ったってことだな。早くお前の試合が見たい」
「俺も戦いたいわ。でも……まだ残響でボロボロなんや。試合に出る前に心境を鍛えなあかん。説明が難しいんやけど……まぁ、お前には分からへんか」
魁斗は足を止めた。
「今、心境って言ったか?」
「うん……」
「ほう」
ゆっくりとした笑みが彼の顔に定着した。
「お前の隣には師匠がおるで」
「え!? ど、どういうことかいな、師匠って?」
「俺の神具で戦うには、心境を完全に極める必要がある。それがなければ、何もできない」
彼は、それが世界で一番普通の情報であるかのように肩をすくめた。
「実は簡単だ。絶対的な集中状態に入るんだ。それを達成すれば、戦闘外でも心境を具現化して、それと対話できる」
ジークは瞬きもせずに彼を見つめた。
「ま、ボロボロのお前にこれ以上迷惑かけるのもアレだしな」
魁斗はスーツケースを掴んだ。
「下に自分の部屋取りに行ってくるわ。ほな、また後でな」
一つの手が彼の肩に置かれた。
魁斗は振り返った。
ジークが彼を見ていた。その表情には、いつもの無関心は全くなかった。純粋な必要性で、飾り気がなかった。
「頼む。行かんでおくれ。教えて……心境の極め方を」
魁斗は動かずにいた。
相棒の顔を見た。
打撲でまだ赤い顔、完全に真剣な目、誇りも恥もない。
ただ、直接的で盾のない頼み。
断れるはずがなかった。
スーツケースは床に戻った。
あらゆる可能性の中で、ジークは最高のものを手に入れた。
……だろうか?
魁斗はスーツケースを開け、二枚の鉢巻を取り出した。白いのと赤いの。
彼は、大切なものを手渡す者の厳粛さで、それらを宙に掲げた。
「これから、俺がお前の師匠だ」
「分かったわ。でも……本当にその鉢巻、つけなあかんの?」
「つけなければ、話はなしだ」
ジークは一瞬それを見た。
魁斗を見た。
また鉢巻を見た。
「……分かったわ。もうええよ」
彼はそれ以上抗議せずにつけた。観客がいなければ、恥ずかしさの居場所もなかった。
彼は決意していた。それで十分だった。
ピンポーン。
扉がノックされ、返事を待たずに開けられた。
「こんばんは、清掃サービスです」
ジークの首は、錆びた蝶番のように扉の方へ回った。白い鉢巻は、ペントハウスの灯りの下ではっきりと見えていた。
彼にとって、すべてが終わった。
従業員はプロとしての効率で仕事をこなし、自分の責任ではないすべてを優雅に無視し、退出した。
ジークは息を吐いた。
一方、魁斗はリラックスできる音楽をかけ、その日一日中他の何にも向けなかった集中力で、部屋中に香を配った。
香りはゆっくりと空間を満たし、音楽の柔らかな音と混ざり合い、部屋は以前とは別のものへと変わっていった。
「聞け、ジーク。まず最初にやることは、共鳴カードを出すんだ」
ジークは出した。
「よし」
「次に目を閉じろ。自分の共鳴エネルギーを導こうとするんだ。そして、俺の言葉だけを聞け」
クイーンシティの喧騒は外に残った。
香りと音が残りを為した。
「教えてくれ、ジーク。お前が考える一番の思い出は何だ?」
短い間。
「……一つ、あるわ」
「なら、話し始めろ。それについて覚えていることを全部」
部屋は静まり、ジークの声が流れ始めた。
◇
香と音楽の中、唯一調和を感じさせたのは、ジークの声だった。過去の思い出を語る声。
「この思い出を話し始める前に、一つ言わなあかんことがある」
「必要なことは全部話してくれ、ジーク」
「俺は共鳴者の家系の出身や。いや、正確には、親父が共鳴者やった。母さんと姉さんもおったけど、二人はもうずっと前に亡くなった」
魁斗は敬意の沈黙を保った。ジークは目を閉じていたが、それを理解した。そして、自分の物語を語り始めた。
「俺は七歳やった」
ジークはゆっくりと話した。長い間、頻繁には訪れない場所にしまい込んだ何かを掘り起こすかのように。
「家の忘れられた片隅で、俺は一つの箱を見つけた。見知らぬ録画でいっぱいやった。親父はあそこに入るなと言っとった。でも、畑を耕しに出かけるのを待って、テープをプレイヤーに入れた」
一呼吸。彼は記憶に沈んでいった。
「そのテープの一つに、親父が戦っとった。『北風の憤怒』と呼ばれとった。アナウンサーがその名前を言うた。六田弘司、って」
ジークは今度はもっと長く間を置いた。
「俺は衝撃を受けた。毎朝、生きる意味を見失っとったあの男が、伝説の戦士やったんや。若き日のその目に宿る野心を見て、鳥肌が立った。戦いは見事な振り付けやった。でも、親父がとどめを刺そうとしたその時――」
「そこに、親父が立っとったんや。怒りと、深い諦めが混じった目で、ずっと俺を見とった。言うことを聞かへんかったから叱られた。あの時代の暴力、神との契約について、苦々しく語った。でも、なんでそんなに世界を憎んどるのにビデオを取っておくのかと聞いたら――」
「『どのビデオにも、彼女がおる。支えてくれてる。それが、彼女の残した全てや』そう言うて、俺は泣かずにはおれんかった」
「そのテープには、生きとった母さんの記録が収められとった」
沈黙はほんの一秒だったが、重かった。
「その日から、俺の好奇心は執念に変わった。あの世界を知りたいだけやない。その一部になりたかった。ある日、親父が俺に賭けを投げかけて、俺は勝った」
「夕暮れに終わった時、俺は親父の昼寝を起こした。目を丸くして俺のやったことを確かめて、諦めの混じった疲れた表情で、玄関先へ歩いていった」
「突然、空気が少しずつ変わった。重くなり、静電気を帯びて。雲から氷の冷気が完璧な螺旋を描いて降り始め、親父はかすかに光る長方形の物体を取り出した」
「共鳴カードやろ?」
魁斗が、その思い出に浸りながら尋ねた。
「そう、その通りや」
ジークは出来事を語り続けた。
「親父は目を閉じた。完全な沈黙の後、冷気が幻影の像へと凝り固まった。大柄で筋肉質な男。白い髪は吹雪と溶け合っていた。最初は神の怒りに満ちていたその視線が、親父に留まった」
「『誰じゃ、リンボの外で我を呼ぶとは! 氷の底に沈めて――』そこでぴたりと止まった。『弘司!?』」
ジークはそれを思い出して、小さく笑った。
「ボレアスは怒りから、一瞬で騒がしい喜びへと変わった。親父は敬意を持って挨拶した。そしてボレアスは、完全に真面目に答えた。『会いたかったぞ』」
「近況を報告し合った後、神は俺の方へ向き直った。そして定番の質問を投げかけた。共鳴者になりたいか? と。俺はもちろん、はいと答えた」
「その時の親父の顔は圧巻やった」
「ボレアスは親父を見た。『弘司、その顔をやめろ。それが息子に示す手本か? 彼の目を見ろ。信念に満ちているではないか』親父はため息をついた。俺の熱意と、ずっと後になるまで分からなかった何かに敗北して。『ジーク……本当にそれが望みなんか?』」
ジークの声はわずかにトーンを落とした。
「そして親父はボレアスに何かを頼んだ。神の本質から、後に神具だと知る物体が具現化し始めた。名前はフィンブルヴィンター。神聖な氷の大剣。映像では荘厳に見えたが、実物は恐ろしかった。放つ冷気は肌を焼くようやった。ボレアスは超人的な力でそれを投げ、刃を庭の地面に突き立てた。地面は瞬時に青みがかった霜の層で覆われた」
「『最強になりたいなら、これが最初の一歩じゃ。この剣を引き抜いた日、お前は共鳴に値する者だと証明することになる。鍛錬せよ、ジーク。我はお前に期待を託しておる』」
ジークはしばらく沈黙した。
「そして俺は日々を過ごした。訓練し、その剣を地面から抜こうとして。最後の十年を訓練に捧げた」
リラックスできる音楽はまだ流れていた。香はペントハウスの隅々まで満たしていた。
魁斗は一度も遮ることなく、すべての詳細を聞いていた。
「今話してくれたこと、ジーク。それが心境だ。目を開けろ」
ジークは目を開けた。
そして呆然とした。
メレニスがそこにあった。具現化されていた。彼が試みたわけでもなく、努力も意識的な召喚もなく。
ただそこにあった。まるでずっとその瞬間を待っていたかのように。
「な、何やこれ――?」
「そういうことだ」
魁斗は静かに遮った。
「心境は、お前の精神状態と神具の間の橋渡しだ。あのことを思い出すことで、お前の脳は幸せな記憶で満たされ、それが直接お前の武器に届いた」
彼は短く間を置いた。
「おそらく、お前の女神もその話を聞いたんだろうな」
◇
天界では、タラニスが目を赤くし、眉をひそめていた。聞いたことに影響されまいと全力で努力している者の激しさで。そして、完全に失敗していた。
「おい、小僧……そんなに悲しい話だったのか……?」
彼女は少し震える声で呟いた。
「娘、ハンカチを寄越せ」
ラヴィアナは何も言わずにそれを渡した。
タラニスはそれを鼻水でいっぱいにした。
◇
ペントハウスに戻り、魁斗は続けた。
「ところで、あの日お前の親父が庭でやったことも、心境だったんだ」
ジークは黙ってそれを処理した。
「そうか……親父と話した時、それについて言及しとった」
彼は少し眉をひそめた。
「今なら分かる気がする。あの時ボレアスを呼ぶ前、なんであんなに堅苦しくて、あんなに鬱屈しとったのか」
「きっと、心境を導きたくなかったんだろうな。それをすると、彼女をずっと思い出さなきゃならなくなるから」
魁斗はそれを哀れみではなく、明白なことを述べる者の簡潔さで言った。
「でも見ろ。お前の神具が光っとる。かすかにだが、光っとる。見えるか?」
「ああ……!」
メレニスは緑に包まれていた。共鳴を象徴する色。柔らかく、しかし紛れもなく、ゆっくりと一定の呼吸のように脈打っていた。
心境は発動していた。
この状態への第一歩を達成した後、ジークの一日は終わった。
そして魁斗にとっても、香が眠気を誘い、床で眠ってしまった。
ジークは彼をソファへ運び、毛布をかけた。
公式に、二人は満足したのだった。




