セントショアとクイーンシティ
上京の疲れるほどの渋滞の後、クリスタルの街並みは徐々に平原と砂漠へと変わっていった。
それは合図だった。一行はついにウォレスビーチ州に到着したのだ。何もないことで知られるが、すべてを持つ都市がある州に。
「アレクちゃん、公式ルートを外れてセントショアで一晩過ごすのはどう?」
アキが提案した。
「海を見るのが好きなんだろ?」
アレクサンドロスは笑みを浮かべて答え、視線は道から離さなかった。
「もちろんよ。私は人生の一部を釣りに捧げたんだから。故郷の新鮮な記憶が蘇るわ。まあ、北海道の寒さはないけどね」
サザンクラシックのコロッセオへの公式ルートは、渋滞を避けるために中央砂漠を横断することを推奨していたが、迂回路はコロッセオから最も遠い海岸の宝石、セントショアから始まる海岸沿いの道を行くことになる。
所要時間は一時間余分にかかったが、夜になると、街の灯りがついに彼らを迎えた。
◇
長い眠りから復帰したジークは、好奇心旺盛な目で、一行が最終目的地前の最後の夜のためにキャラバンから降りるのを眺めていた。
「全員降りて! 今夜はキャラバンでは寝ないわよ」
アキが威厳を持って宣言した。
「助かるわ……もうお尻が痛くなり始めてたんだよな、なあアレクサンドロス?」
魁斗は伸びをしながらため息をついた。
「言うなよ、俺も疲れ果ててる」
運転手が同意した。
アキは傷ついた誇りの仕草で鼻を触った。
「聞いて、今日は各自が宿代を払うのよ! 私が奢るつもりだったけど……まあ、私は名誉ある敗者だからね」
ジークは冗談には無関心で、手すりの前で固まっていた。
「わあ……なんて綺麗な景色や」
彼の目の前に、セントショアの観光エリアが広がっていた。街がビーチと融合する境界にちょうど位置している。
海が岸に打ち寄せる音は空気のように儚く、旅の疲れを洗い流すような潮風を放っていた。
夢のような夜だった。
◇
受付でチェックインした後、一行は不運にも個室が残っていないことを知った。
一行は部屋14、22、63に分かれた。
「はい、これが鍵よ」
アキが配った。
「華凛ちゃんは私と同じ部屋。井上兄弟は一緒。そして……ジーク! あんたはアレクサンドロスと一緒ね」
「行こうぜ、ジーク。眠くて死にそうだ」
アレクサンドロスは鍵を受け取って言った。
「俺、ジークと一緒じゃダメか?」
瞬が抗議した。
「少なくともあいつはイビキをかかない……」
「遅いぞ、弟よ。所長がもう決めたんだ」
魁斗が瞬を部屋へ引きずり込みながら言い放った。
◇
ホテルで時間が動き始めた。
一つの部屋では、魁斗がトラックのような勢いでイビキをかき、瞬が不眠と戦っていた。
別の部屋では、華凛が穏やかに眠り、アキは夜のどこかでベッドから落ちたが、それでも目を覚まそうとしなかった。
部屋63では、アレクサンドロスが休んでいたが、ジークはバルコニーで海のさざなみと、砂の上で休むカモメたちを眺めていた。
「なんて一週間や……」
彼は独り言ちた。
「一ヶ月経ったような気がするけど、島に着いてからまだ四日しか経ってへん。体はまだ痛いけど……それでも、もっと戦いたいという気持ちでいっぱいや」
「落ち着かないのか?」
アレクサンドロスの声が部屋の暗闇から響いた。
「アレクさん! すみません! 起こすつもりは……」
「気にするな、俺は眠りが浅いんだ。それより、お前のことを話してくれ。どうやってここまで来た?」
「残響から回復中なんや」
ジークは腕を擦りながらため息をついた。
「厳しい試合やった。準決勝の負荷と、俺自身の未熟さもあってな」
「新人にはよくあることだ」
アレクサンドロスは笑った。
「また試合に出れば、効果は徐々に減っていく。戦いで余計な問題を抱え込まなければな」
「そう願うわ」
「知ってるか? 俺も始めた頃はお前と同じだった」
彼はノスタルジックな口調で続けた。
「キャリアを始めるのに、ものすごい意欲があった。神と共鳴するまではな……その瞬間から、生まれ変わったような気がした」
「アレクさんの神? そういえば、みんなのことを何も知らずに事務所に入ったな。すまん」
「気にするな、ジーク。いずれ全て分かる。俺の場合は……アレスだった」
ジークは目を大きく見開いた。
「アレス!? さぞかし威厳があって厳しい神なんやろな?」
「うーん……そう思うか? 真実を知ったら失望するかもしれないぞ」
◇
アレクサンドロスは目を閉じ、彼が語るにつれて、最初の出会いの記憶がジークの脳裏に浮かび上がった。
――「我が領域へようこそ、若き戦士よ」
力強い声がした。
アレクサンドロスは見知らぬ場所で目を開けた。
「え? ここはどこだ?」
「リンボじゃ、若き共鳴者よ」
「自己紹介をさせてください。私の名はアレクサンドロス・レツォス」
「我はアレス、戦の神じゃ。その名からして、ヘレネスの血筋は明らかじゃな」
「光栄です、アレス師よ」
アレクサンドロスは深くお辞儀をした。
「こんなに重要な神に選ばれたとは、喜ばしい限りです」
「もちろんじゃ、アレクちゃん」
アレクサンドロスは凍りついた。
(……アレクちゃん?)
彼はゆっくりと顔を上げ、アレスが戦士の獰猛さとはほど遠い表情をしているのを見た。
「お前の務めは単純じゃ:勝って、我が名を天界の頂点に刻むことじゃ。お前を選んだのは、この神具をお前と試したかったからじゃ……」
「神具? どういうことですか?」
「お前に絶大な力を与える神の武器じゃ。だが、ふさわしくなければならん。この剣を持て。その間に主武器を具現化する」
アレスは巨大な大剣を出現させたが、それを掴もうとした瞬間、呻き声を漏らした。
「ああ、なんて重いんじゃ!」
アレクサンドロスは衝撃を受けた。尊敬していた神が、自分の武器を持ち上げるのに苦労していたのだ。
「見よ! これがトロイズ・プライドじゃ!」
アレスは大いに努力した末に叫んだ。
「その剣で我を攻撃してみよ!」
アレクサンドロスは従ったが、衝撃の直前、神は必死の懇願を漏らした。
「待て待て! まずこれを持ち上げさせてくれ!」
「何が言いたいのか分かりません、アレス師よ……」
アレクサンドロスは完全な無関心で言った。
「見本を見せたかったんじゃが、持ち上げるのに苦労しとってな……こうしよう、お前の剣を神具にぶつけてみよ」
そうすると、アレスはついに大剣を普通に振るうことができた。
「じゃじゃーん! 単純じゃろ! ははは!」
◇
「そして、こうしてアレスと出会ったんだ」
アレクサンドロスは深いため息をついて締めくくった。
ジークは小さく笑った。
「俺がタラニスと出会った時の方が比べ物に行かんわ。実際、俺の髪は尖ってなかった。ウェーブがかかっとった」
「本当か? 話してみろ。俺のより奇妙だとはとても思えんが」
二人はセントショアの星の下で、しばらく語り合った。神々と戦いの話を共有し、やがて眠りに負けた。
ウォレスビーチ州での最初の夜が、こうして終わった。
◇
■ 2022年8月10日
セントショア到着の翌朝九時、一行は前夜泊まったホテルのロビーで朝食をとっていた。
「ああ……赤ちゃんみたいに眠ったわ! 新しく生まれ変わった気分だ!」
魁斗は元気よく伸びをしながら叫んだ。
「ああ、そうかよ……次は口にテープを貼ってやるから、窒息しても知らんぞ……」
瞬は濃い隈と、睡眠不足による最悪の機嫌で答えた。
「どれだけ眠れなかったんだよ……お前が保存してる写真の親父さんみたいな顔してるぞ」
華凛は皮肉な笑みで言った。
「おい、調子に乗るなよ、この策士なお姉さん……」
瞬は呟いた。
「はっ! 少なくとも、うちは兄貴の後を追うつもりで来たわけじゃないわ」
彼女は片眉を上げて反撃した。
「何だって、この魔女!」
瞬は歯を食いしばって吐き捨てた。
ジークは瞬の言葉を処理していた。
(まさか……神崎さんがレナを唆して、この島に来させて、貯金を使わせて、共鳴者にさせて、辱めを受けて、家に帰りたくなるように……全部わざとやったんか? いやいや、そんなん考えるんは失礼やな。……でも、あの人やったらやりかねんわ、ははは)
◇
事務所の天才たちの小さな衝突は、所長の陽気な声で中断された。
「ねえ、この素晴らしいベーグルを食べてみて! ここの食事に感動してるの!」
アキが口を食べ物で膨らませて口を挟んだ。
「いくつ食べたんだ、アキ?」
アレクサンドロスがパンくずの山を見て尋ねた。
「六個くらい、へへ……」
彼女はぎこちなく笑いながら答えた。
「選んだ分だけ請求されるって、知ってるよな? 予約には含まれてへんぞ」
ジークは至って自然に言い放った。
アキはそれを聞いて、パンくずで喉を詰まらせた。
「えええ!? ああ、神様……」
アキの叫びがロビー中に響き渡り、追加料金を処理した。
◇
この短いが温かいシーンの後、一行は再びキャラバンに乗り込んだ。
彼らは聖なる街を出発し、この旅の中心軸――クイーンシティに本拠を置くサザンクラシックへと向かった。
ビーチと都市に満ちたルートは、チームの目を楽しませた。
彼らは驚嘆の目で、目の前に繰り広げられる絵葉書のような光景を眺めた。
岸辺で遊ぶ人々から、自然と人類が同じ周波数を共有するスペクタクルの中で荒波に乗るサーファーまで。
二時間の移動の後、孤独な道は軽い交通量へと変わった。
州の主要都市への到着は、ジークの前に近代性と部族の起源の魅力的な均衡を明らかにした。クイーンシティは本物だと感じられ、これまで見たものとは違っていた。
遠くには、巨大なスタジアムの堂々たるシルエットがそびえていた。トーナメントを開催する施設だ。
アレクサンドロスと魁斗は、明白な勝利への飢えを持ってコロッセオを見つめた。
◇
そしてついに、彼らは目的地に到着した。クイーンシティのレンタカーだ。
事務所のメンバーはキャラバンから降り、忠実な旅の仲間に別れを告げた。
検査官が車両を丹念に調べる間、アキの神経は限界だった。
彼女は内心、検査官が彼らが急遽交換したタイヤに気づかないことを祈っていた。
安堵したことに、検査官は承認を与え、所長の機嫌は一瞬で変わった。
「よしみんな、行く時間よ。私が借りた場所まで歩くわ」
アキが先導して宣言した。
(お願い、ろくでもない場所じゃありませんように、お願い、お願い……)
ジークはこめかみに冷や汗をかきながら思った。
「どれくらい遠いんだ?」
アレクサンドロスが尋ねた。
「徒歩五分よ。コロッセオに近いからここを借りたの。それに、予算に一番合ってるし……へへ」
彼女は説明した。
「ああ、そうか、忘れてたわ。アキ、住所を書いて渡すか、LINEで送ってくれへんか? 先に共鳴本部に寄りたいんや」
ジークが頼んだ。
「いいわよ、ジーク。行ってきなさい」
彼女は承諾した。
「なんかあったんか、ジーク? 先に場所見に行かへんか? 俺、キャリアの前半ここウォレスビーチ州で過ごしたから、頼れるガイドやで」
魁斗が熱意を持って申し出た。
「緊急の用事やけど、悪いことやない。心配するな、魁斗。戻ったらガイドしてくれ。じゃあな……」
青年はそう言って、一行から離れていった。
沢蟹事務所の長い旅が、ついに終わりました!
無事にウォレスビーチ州へ到着……したはずです、たぶんwww。
次回からはいよいよ、新たな街での物語が始まります。お楽しみに!




