第一話 正式ハンター
チュンチュン――。
小鳥たちのさえずりが朝を告げる。
ホムラの里の朝は早い。
鍛冶場からは槌音が響き、商人たちは店を開く準備を始めている。
そんな活気ある朝。
ナイン・アステリアは目を覚ました。
◇◇◇
「……朝か」
眠気を振り払うように身体を起こす。
窓から差し込む朝日が眩しい。
◇◇◇
今日は特別な日だった。
十六歳となり、養成所を卒業した彼女が初めて依頼を受ける日。
正式なハンターとしての第一歩。
夢の始まりの日だ。
◇◇◇
ナインは鏡の前へ立つ。
白金色のポニーテールを整える。
蒼海を思わせる青い瞳が鏡の中で輝いていた。
◇◇◇
「よし」
小さく頷く。
緊張はある。
でも楽しみの方が大きかった。
◇◇◇
身に纏うのはホムラ式見習装束。
ホムラの里の養成所卒業生に支給される新人ハンター用防具だ。
軽量で動きやすく、初めての狩猟にも向いている。
◇◇◇
そして背中には愛刀。
ホムラノ鉄刀。
新人ハンターへ支給される標準的な大太刀だ。
◇◇◇
ナインは刀の柄に触れた。
「よろしくね」
相棒へ挨拶するように呟く。
◇◇◇
居間へ向かう。
朝食の良い香りが漂っていた。
◇◇◇
「おはよう」
母が笑顔で迎える。
「おはよう」
◇◇◇
焼き魚。
味噌汁。
炊き立てのご飯。
ハンターにとって体力は命だ。
朝食も立派な準備である。
◇◇◇
「今日は初依頼だね」
母が言う。
◇◇◇
「うん」
◇◇◇
ナインは頷いた。
楽しみだ。
けれど少しだけ不安もある。
◇◇◇
「大丈夫」
母は優しく微笑んだ。
「ナインならきっと立派なハンターになれるよ」
◇◇◇
「だといいな」
◇◇◇
食事を終える。
荷物を確認する。
◇◇◇
回復薬。
携帯食料。
砥石。
ピッケル。
虫あみ。
携帯テント。
その他の基本道具。
◇◇◇
忘れ物はない。
◇◇◇
「行ってきます!」
◇◇◇
元気よく家を飛び出す。
◇◇◇
ホムラの里の大通りを歩く。
鍛冶屋。
武具店。
薬屋。
集会所。
見慣れた景色。
だが今日は少し違って見えた。
◇◇◇
正式なハンターとして歩く初めての日だからだ。
◇◇◇
しばらくして。
集会所へ到着する。
多くのハンターたちが集まる場所。
依頼を受ける場所。
夢への入り口。
◇◇◇
ナインは大きく深呼吸した。
◇◇◇
「よし!」
◇◇◇
扉を開く。
◇◇◇
集会所の中は朝から賑わっていた。
ベテランハンターたち。
新人たち。
受付嬢たち。
様々な人々が行き交っている。
◇◇◇
「おはようございます」
受付嬢が笑顔で迎えた。
◇◇◇
「おはようございます!」
◇◇◇
元気よく返事をする。
◇◇◇
「ナイン・アステリアさんですね」
「はい!」
◇◇◇
受付嬢は一枚の依頼書を差し出した。
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鳥竜種討伐依頼
ジャギィ討伐
討伐数:五頭
報酬:三〇〇〇z
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ナインの目が輝く。
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ジャギィ。
新人ハンターが最初に挑むことの多い小型鳥竜種。
だが。
ナインにとっては夢への第一歩だった。
◇◇◇
「受けます!」
◇◇◇
迷いなく依頼書を受け取る。
◇◇◇
いつか全てのモンスターを狩る。
その夢のために。
まずは最初の一頭から。
◇◇◇
ホムラノ鉄刀を背負い直す。
◇◇◇
ナイン・アステリア。
十六歳。
新人ハンター。
◇◇◇
彼女の狩猟人生が今、始まった。




