第十二話 アオアシラ討伐
アオアシラを討伐したナインは、その場で大きく息を吐いた。
まだ身体は震えている。
腕も重い。
足も痛い。
だが。
心地良い疲労だった。
「本当に勝ったんだ……」
もう一度アオアシラを見る。
巨大な牙獣種は完全に動かなくなっていた。
初めての牙獣種討伐。
新人ハンター最大の壁を越えた瞬間だった。
ナインは休憩を終えると解体用ナイフを取り出した。
「いっぱい取れるといいな」
期待を込めて剥ぎ取りを始める。
━━━━━━━━━━
アオアシラの毛皮×20
アオアシラの甲殻×12
アオアシラの爪×8
アオアシラの牙×6
アオアシラの腕甲×4
アオアシラの熊胆×2
━━━━━━━━━━
さらに。
討伐中に壊れた部位からも大量の素材を回収した。
━━━━━━━━━━
上質なアオアシラ毛皮×10
堅牢な熊爪×5
熊牙の大牙×2
上質な熊胆×1
━━━━━━━━━━
「すごい……!」
ナインは思わず笑顔になる。
これだけあれば武器も防具も作れる。
余った素材は売却もできる。
全部アイテムポーチへ収納した。
容量は無限。
持ち帰れない心配などない。
キャンプへ戻ると、討伐記録板へ素材を提出する。
光が走った。
━━━━━━━━━━
緊急依頼達成
牙獣種アオアシラ討伐
━━━━━━━━━━
討伐確認完了
━━━━━━━━━━
「よしっ!」
これで正式な討伐記録となった。
そのままホムラの里へ向かう。
夕暮れの山道を歩き続け、里へ到着した頃には夜になっていた。
門番がナインを見つける。
「おっ、帰ってきたか!」
「ただいま!」
「アオアシラはどうだった?」
ナインは笑顔で答えた。
「倒したよ!」
門番は目を見開く。
「本当にか!?」
その声に周囲の人々も集まり始める。
「アオアシラを?」
「新人がか?」
「すごいじゃないか!」
ナインは少し照れながら集会所へ向かった。
集会所へ入る。
すると長い茶髪を揺らしながら受付嬢のカエデが立ち上がった。
茶色の瞳が驚きで大きく見開かれる。
「ナインさん!」
「ただいまです!」
「まさか……本当にアオアシラを?」
「うん!」
ナインは素材を取り出した。
巨大な爪。
分厚い甲殻。
立派な牙。
カエデは確認しながら何度も頷く。
豊かな胸元が揺れるほど興奮している。
「間違いありません!」
「アオアシラ討伐達成です!」
集会所が歓声に包まれた。
新人ハンターによるアオアシラ討伐。
それは十分に里中の話題になる快挙だった。
カエデは満面の笑みを浮かべる。
「おめでとうございます!」
「ありがとうございます!」
そして討伐報酬が支払われた。
━━━━━━━━━━
アオアシラ討伐報酬
50,000z
━━━━━━━━━━
「五万ゼニー!?」
ナインの目が丸くなる。
カエデは楽しそうに笑った。
「大型モンスター討伐ですから」
「これでも特別報酬込みなんですよ」
ナインは大事そうに報酬袋を抱える。
その額に周囲のハンターたちも感心していた。
翌日。
ナインは里長の屋敷へ呼ばれた。
「失礼します!」
部屋へ入ると里長が穏やかに頷く。
「よくやったな、ナイン」
「ありがとうございます!」
里長は大きな袋を差し出した。
━━━━━━━━━━
里長特別報奨金
50,000z
━━━━━━━━━━
「またお金!?」
思わず声が裏返る。
合計十万ゼニー。
新人ハンターとしては破格だった。
里長は笑う。
「ホムラの里の名を上げてくれた褒美だ」
「好きに使うといい」
そして。
さらに一冊の古びた本を取り出した。
━━━━━━━━━━
太刀秘伝書
気刃大回転
━━━━━━━━━━
「気刃大回転……!」
ナインの瞳が輝く。
桜花気刃斬に続く新たな狩技。
大型モンスターを討伐した者だけが与えられる秘伝だった。
「これからも励め」
「はい!」
ナインは力強く頷いた。
アオアシラ討伐。
十万ゼニー。
そして新たな狩技。
新人ハンターだった少女は、確実に次の段階へ進もうとしていた。




