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クワセモノ ― 漂白される理想郷と、胎動する泥濘 ―  作者: 四黒葉夏
第四章:『M48:新緑の散開、泥を縒り合わせる翠の糸』
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第十八話『M67:―記憶の片割れ』

短期覚醒エフェメラル・アステリズムを使わないなんて、スバルちゃんったら罪な男」

わざと手加減したんでしょ♪みたいな笑顔を向けてきてる所、大変申し訳ないがそんな言葉?技?なんかリセからも聞いたことがない。


恐らく星屑(アスタル)に関係が深い言葉なのだろうが星導者(スターゲイザー)になりたてのスバルにそれを理解しろだなんて言うのは酷な事だ。


「…なんだそれ?」

リセに言いたい言葉を押し殺しなんとか絞り出したのは無力な答えだった。

自分なりに記憶の中を掻き回してみるも答えは見つからない


「もしかしてリセちゃんに教えてもらってない?割と大事な事なのだけれど…」


「ふ、ふぃ~」

スバルとユキの視線が同時にリセの事を追った瞬間、彼女はバツが悪そうに顔を瞬時にそらして下手くそな口笛を虚空に鳴らす。


「リセちゃーん?」

ユキ姉は静かに拳を握りしめながらじりじりとリセとの距離を詰めていく。


「な、なんだいユキ姉」

リセの顔色は、生気を失い青ざめていく。額からは滝のような汗が噴き出していた。


「なんでこんな大事な事教えなかったの?」

その唇は間違いなく弧を描いている、だが目は冷たく鋭い光を放っていた。


「い、いや、だって私の方針的にあまり使わないし忘、デメリットもあるから教えてなかっただけで……」


「はぁ、スバルちゃんはカウンター型だしフィニッシュくらいにしか使わないからいいけど」

慌てふためきながら支離滅裂な御託を並べていくリセに重たいため息を零しながらも、ユキ姉は説明を始めた。


「いい?短期覚醒っていうのは使用後しばらく根源(ナディア)すら使えなくなる代わりに、一時的に星屑(アスタル)の力を極限まで引き出すいわば諸刃の剣の事よ」


「めっちゃ強しかっけぇぇ!!」

一時的とはいえ星屑の力を引き出す技に目を輝かせ、少し浮ついているとユキ姉の声が冷徹に突き刺した


「そう、使いこなせば大きな武器になる」


「じゃあそれを――」

言葉を遮る声は静かに諭す様だった


「まだ説明の途中よ、しばらく星導者(スターゲイザー)でなくなるも同然の状態になるの分かってる?」

スバルは思わず口籠る

神都でタイヨウと戦った時を思い出したからだ、あの時よりも筋肉などが多少付き身体能力が上がったにしても、根源すら使えないという事を鑑みれば、短期覚醒中に倒せなければ待っているのは確実な死だけだろう。


「それに使いこなすのも難しいの、何人も力の制御に失敗して周囲の人を傷付けてしまった人達を見てきたわ」

再びユキ姉の視線がリセを射抜いた。リセはまたしても顔を背けたが、その瞳に宿った気まずい影が滲み出ていた。

恐らく彼女が犯人だろう。


「じゃあ、どうすれば……今のままじゃあいつに、聖王に勝てない」

その名を口にするだけでも感情を漂白されてしまった人々が脳裏をよぎり奥歯が軋むほど強く嚙みしめた


「聖王ですって!?………スバルちゃん、悪いことは言わないわ、やめておきなさい」


「でもそれじゃあ誰が天欺(・・)を救うんだよ!!」

自分でもびっくりする程声を荒げていた。


「その、天欺って人があなたにとってどんな存在かは知らないけど、何か事情があっての事なのね……無神経なこと言ってごめんなさい」

驚くほどの静寂が場を支配した。ユキ姉は即座に、そして深く頭を下げ謝罪した


「ねえスバル、よかったらその天欺って奴がどんな人なのか、教えてくれないかい?」

リセが問いかけた。


「あぁ天欺は、天欺、は、、」


「「?」」


「誰だ?」

感覚だけは、鮮明に覚えている。泥の様な舌触りに、喉を焼くような雑味。不味い粥を食べながら笑い合った、あの少年の事を覚えている。

しかしその少年がどんな容姿で、どんなことを言っていたのか、何をして遊んだのか、全く思い出せない。


「誰なんだ!?俺はコイツの事を知らない!いや、知ってる、、?」

確かにその場に少年は存在していたのに、記憶からそこだけが抜け落ちているような……


「スバルどうしたんだい?なんだか変だよ?」

酷く混乱して頭を抱えているスバルをリセが心配そうにハンモックから降りて背を揺する。


「スバルちゃん?」

ユキ姉の言葉を最後に、意識は急速に奈落へと沈んで行った。



意識が混濁し、罅割れた隙間から覗かせる見覚えのある情景が頭を駆け巡る。

??「ま、待ってよ~」


「どうした、早くしねえとじいちゃんが死んじまうかもだぜ?」


―――誰だ?

「もちろんだとも。■■■■、お主の瞳には、もう一等星が宿っておるわ」


じいちゃん?でも、俺こんな事言われた事ないぞ?

この言葉は俺が言われたんじゃなくて――




「スバル?スバル!!」

リセの声と肩から全身へ走っていく激しい振動が頭にかかった朧に終止符を打ち晴らした。

それと同時に網膜に焼き付いていたはずのあの少年の記憶も陽炎の様に薄れていく。


「ほんとにどうしちゃったの?あ、もしかして疲れちゃった?ごめんなさい私そこまで気が回らなくて」

心配そうに顔を覗き込んでくるユキ姉は珍しく狼狽を露わにしていた。


「いや、いいんだ、俺こそ変なこと言ってごめん」

、、、なにか大切な事を思い出しかけた気がするが、なんだったっけ??


「ならいいんだけど…」

不気味な歯切れの悪さと泥の様な後味だけが残った。


「無理はしないでおくれよ?」


「…分かってるさ」


「話を戻すけど、スバルの言う事にも一理ある、今の練度じゃ訓練を受けてない星導者は倒せても訓練された星導者には勝てないから、結局修行はいるけどね」


「今の実力じゃまだまだ駄目よ?相手がじりじりと削っていくタイプならカウンターで勝てても一撃必殺タイプの人には勝てないわね」


「ぐ、速攻ができないのは認めてる…」


「でも習得するには時期尚早ね、まずは泥の密度を上げないと」


「その事なんだけど、妨害技みたいなのを習得した方が良いと思うんだよね」

スバルだけ蚊帳の外でどんどん話が進んでいく


「そりゃまたどうしてだよ?」

流れに乗るべく会話の隙間を縫うように切り込んだ。


「確かに密度を上げれば確かに防御力も貫通力も上がるけど、時間がかかるだろう?だから小手先でもいいからそういう技を習得した方が良いと思うんだ」


「最悪の事態になっても煙巻いて逃げる事もできるし、良いかもしれないわね!」

そこに誇りなど立派なものは存在しない、泥臭く生き、足掻こうとする意志だけが首を縦に振らせた。


「カッコ悪ぃ様な気もするが、確かにそういう技が一つくらいあった方が便利かもな」


「となれば早速実戦練習ね!」


「え?」

困惑だけが思考を掠めていく


「そうだねぇ、スバルならそれが一番身に付きやすいかもしれない」


「じゃあ早速、行くわよ♪スバルちゃん」


「あ゛ぁ~もう、やってやるよ!」

ご拝読いただき誠にありがとうございます!

今回はある数字にするための時間に投稿しました

次回で答え合わせしたいと思います。

ヒントとしましては日付は関係なくて、タイトルが手掛かりです


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