表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クワセモノ ― 漂白される理想郷と、胎動する泥濘 ―  作者: 四黒葉夏
第四章:『M48:新緑の散開、泥を縒り合わせる翠の糸』
18/19

第十七話『M101:―炸裂する大輪の花―』

「ユキ姉、あんたは何時もやり過ぎなんだよ!私の酒の件もとやかく言えないよ?」


「ごめんなさい!つい夢中で…」

諭す様なリセの声の後、ユキ姉のしょぼくれた声が頭の中を木霊した


「まったく…」

リセのあきれたようなため息で目を覚ました。


「っててて…二人とも何してんだよ、少しくらいゆっくり寝かせろよな」

まだ朦朧とする意識の中、二人の話す声と風に揺らされる感覚で意識も返って来たため起き上がろうとしたが腹部に鈍痛を覚え、幾度か失敗しながらも起き上がった。

まだ痛む腹を抱えながら何度も起きたり倒れたりする様はさぞ滑稽に映っただろう


「まだ寝てな!ユキ姉の鉄拳をもろに食らったんだ、二日は起きなくても不思議じゃない」

意識がはっきりした直後リセの言葉が頭に響く、


「サラッととんでもないこと言わなかった?え?二日?」


「やだ~リセちゃんたら、二日で済んだらいい方よ。大丈夫!手加減したから一時間弱で起きたわね」

つまり一時間弱ハンモックに揺られながら寝ていたということか……うん。考えるのはよそう。


「情けねえな、俺」


「何言ってんのよ!手加減したとはいえ一時間弱で目が覚めたのは凄いわ!」


「確かに、ユキ姉の拳で一時間弱なら早い方さね」


「ということでもう一セット行くわよ?スバルちゃんが寝ている間、リセちゃんから詳細は聞いたけど……スバルちゃん、攻撃技出してないでしょ」


「簡単に言ってくれるなぁ、そんなポンポン打てる技じゃないし、雷牙暴猪(ボルトタスク)を両断できるほどの威力が出る、人に向けて撃っていい代物じゃない」


「あら優しいのね、でもそれじゃあ何も守れないわよ?雷牙暴猪(ボルトタスク)を両断程度なら何の問題もないしね♪」

笑顔でそう答えるユキ姉に若干の恐怖を抱きながらも承諾した


「分かった、もう一セットやろう。それで判断してくれ」


「うんうん♪そう来なくっちゃ!」

ユキ姉が拳を固く握り、姿勢を低くし戦闘態勢に入る

欠かさずスバルも二層と四層を展開し戦闘態勢へ


「じゃ、行くわよ!」

ユキ姉は風のように加速し肉薄する


「 第二層、変形態――『泥岩の盾』!!」

鎧を盾に変形させ、防御体制へと速やかに移った


「さっきよりは本気みたいだけど、それじゃあダメよ」

とりよりも軽々と跳躍し、手から黒い糸を怪しげに広げる

妖艶を思わせる黒糸が宙を泳ぎ、飄々と踊る様は夜空を思わせるほど美しかった

次の瞬間、糸が急速に縮み、編み束ねられ円となる


――やばい!直感でそう感じたスバルは『流泥受容(サーモス)』を前方に集中させ、今できる最大限の防御態勢へと移行した。


「いい判断ね、だけど不正解。それじゃあ30点よ、正解は逃げる事」

糸が擦れているだけのハズなのにまるで金属同士が擦れるような甲高い音と鈍い音が同時に響く

無意識のうちに歯を食いしばり腕に力がこもっていた。


「大技を準備してるって分かったのは良かったけど、今の実力で防ごうとしたのは大幅減点よ、スバルちゃん」

頬を伝う汗が地面に落ちる前にそれは起こった

一つに束ねられ、圧縮された糸の塊は鋭く回転し、


狭央ホライゾン束縁絶(スピンドル)穹・廻(・デンシティ)』」

ユキ姉の言葉と共に、黒い塊が横一閃に弾けた。

それは直径一メートルほどの、中心が盛り上がった「漆黒の円盤」。だが、その外縁エッジを構成しているのは、ナノ単位まで研ぎ澄まされ、超高速回転する黒糸の刃だ。


「……ッ、ガ、アアアア!!」

スバルの『流泥受容(サーモス)』が、熱変換の許容量を瞬時にオーバーする。

衝撃を熱に変える間もなく、超高密度の糸が泥の膜を「削り取って」いく。火花が散り、金属が断たれるような絶叫がスバルの腕から響いた。


「これ、受け流せない……!? 削られてるんだ、防御そのものを!」

回転する銀河の刃は、スバルの『泥岩の盾』をバターのように易々と切り裂き、その中心部へと肉薄する。ユキ姉は着地と同時に、指先をピアノの鍵盤を叩くように動かした。


「だめよ?そんな防御じゃ、直ぐに死んじゃう」

心臓の鼓動をも確実に捉え、今にも貫き鼓動を止めてしまいそうな超高密度の糸。本能的に死を感じる寸前で留め、彼女はスバルの眉間を指先で軽く弾いた。

浮かべた微笑は、残酷なまでに悪戯っぽくそれでいて美しい。


「スバルちゃん、あなたのそれチャージ型カウンターなんでしょ?」


「リセの奴、随分とおしゃべりじゃねえか」

少し顔を(しか)めながらスバルは毒突いた。


「いいえ違うわリセちゃんはカウンターとしか言ってない、長年の経験則ってやつよ」

変わらぬ笑みを湛えながらも、そこにはいつもの陽気さは微塵もなく底知れぬ余裕が立ち込めていた。


「で、もうチャージは済んだんじゃない?」

スバルの体を覆う泥が深紅に染まり、熱を孕んでいくのを見てユキ姉はうっとりとしていた


「ああ、そうみてえだな」

自らを覆う泥が火の粉を吹き、スバルは覚悟を固めた


「…行くぞ」

ユキの口角が不敵に吊り上がる。それが合図となり

削られた盾は瞬時に収束し鋭利な一条の槍へと成り、泥は星火燎原(せいかりょうげん)を体現したかのような高潔な炎へと昇華する。


「第四層、磁場逆転(ポールシフト)――『紅焔暗条(プロミネンス)』ッ!」

踏み込みと同時に放たれた小さな太陽(プロミネンス)は虚空を切り裂き星の軌跡(スタートレイル)に陽炎を残しながら肉薄する


「――花火としては良かったわよ♪」

ユキ姉が指を軽く弾いた瞬間、小さな太陽は漆黒の糸と絡み合い、宙に大輪の花を咲かせた後、静寂だけがその場を覆い尽した。


「嘘だろ…」

目の前で起きた光景は雷牙暴猪(ボルトタスク)との再戦で得た自己肯定感までも静寂の彼方へと沈んで行った。


短期覚醒エフェメラル・アステリズムを使わないなんて、スバルちゃんったら罪な男」


「…なんだそれ?」

ご拝読いただき誠にありがとうございます!

今回はM101が沈む時間……にしたかったのですが、M101は北極星に近く完全に沈むことがほぼないので書き終わって直ぐに投稿しました。

ユキ姉の技名考えるのに時間かかったのもありますがリアルの方でバタバタしており中々執筆の時間が取れず、丸々二か月くらい更新が遅れました。

スイマセン


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ