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火の国編29話

少ししてオオカたちは家に到着する。

明らかに急いでいるオオカたちに、クマノとツシマの護衛組は驚く。


「そんなに焦ってどうされました?」


「国王がカグツチを狙ってる!だからカグツチを別の場所に避難させるぞ」


「え?一体どういう」


「話は後だ!とりあえず避難させる。スサノオ様の命だ!」


クマノとツシマはそれを聞いて表情が引き締まる。


「………了解!!!」


そう言って一同は部屋の中に突入する。

そして部屋を進むと、カグツチのいる部屋へと到着する。

するとそこには倒れているカグツチの姿があった。


「カグツチ!!!」


そう言って護衛面々はカグツチに駆け寄っていった。

ラムチは急に入ってきた一同に混乱している。


「えっ?急にどうされました?」


「おいカグツチ大丈夫か?何があった?」


オオカは冷静にラムチの方を見ていた。

ラムチは驚きの反面、駆け寄る護衛たちの姿を見て、穏やかな表情へと変わっていった。


そしてオオカはカグツチの方を見る。

胸を見ると等間隔で上がったり下がったりしている。


「ラムチさん。カグツチ様は眠られました?」


「………あっ。はい。さっき疲れて眠っちゃったみたいで」




時は遡ること、オオカが家を出ていった後。

カグツチは俯いていた。


(俺はどうしたら………。ラグナロクの奴らは信用できない。協力したとて、スサノオ様達を騙すことになるのも少し気が引ける。………姫を救うため、………火の魔剣を手に入れるために他に方法はないのか………?)


そこにドタドタと足音が聞こえ、カグツチは頭を上げる。


「カグツチー!大丈夫だった。」


カグツチの視線の先にはドタドタと駆け寄ってくるラムチの姿があった。

カグツチはその姿を見て少し表情が緩む。


ラムチはカグツチの少し憔悴した表情を見て眉をピクリと動かす。

そしてカグツチをギュッと抱きしめる。


「大変だったわね。でも大丈夫よ。気にしないで大丈夫だから」


「………ラムチさん」


カグツチの目に涙が浮かぶ。

そして若干声も震える。


「もし何か吐き出したいことがあれば何でも聞くし、寝たかったらこのまま寝ちゃっても大丈夫よ」


よしよしと子供をあやすかのごとく、ラムチはカグツチの頭を撫でる。


(………そうだ。今この場にオオカさんはいない。相談したところでバレっこない。ラムチさんにまずは相談を………)


カグツチの脳に強い眠気が走る。

信頼できる人間に会えた安心感が強い眠気へと変わり、肉体的にも精神的にも疲弊していたカグツチの体を襲う。


(………あれ。………すごく眠い。安心してるのか………?………いや………駄目だ………せめて相談した後に…………寝ない………と………)


カグツチはすうすうと寝息を立てて、眠りに落ちる。

それを見てポンポンと優しく頭を叩いた後に、布団にカグツチを運ぶ。


「色々あったからゆっくり休んでね」


優しい目線でラムチはカグツチを見つめていた。




そして今に至る。

イズモが話す。


「眠ってるだけか。よかった」


ラムチは質問する。


「えっと。皆さん急にどうされたのですか?」


オオカは諭すようなトーンで話す。


「落ち着いて聞いてください。国王がカグツチ様の命を狙っている恐れがあります。」


「………え!?それってどういう?」


「詳しいお話は後です。」


「え?え?」


「クマノさんはカグツチさんを運んでもらって、それ以外のメンバーは護衛といきましょう。」


「「了解」」


スサノオの側近組が返事をする。


「ラムチさんはロスカ姫を連れてついてきてください。」


「えっと………分かりました」


困惑しながらも従うラムチ。

クマノはカグツチを抱き上げる。

しかしカグツチは熟睡して起きない。


そしてまずはオオカをオオカの家を出ていく。

そしてオオカは家の外の光景を見て、絶句して動きを止める。

その顔からは焦りが伝わってきた。


「!オオカさん!?」

 

イズモは止まったオオカを心配する。

そしてイズモも同じく外へ出ると目を見開いて、固まってしまう。

続々と外へ出てくるが、ラムチ以外の全員が外の光景を見て、固まってしまう。


「………何であなたがここに」


そこには表情を変えないまま歩いてくる、イザナギの姿があった。

イザナギは遠くから少しずつ近づいてきている。


イザナギからは強い殺気や憎しみが誰からも感じ取れる状態であった。

一瞬なんで止まっているのか理解できないラムチも、向かってくるイザナギを見るやいなや固まってしまう。


「………」


ラムチは声を発そうとするが声が出ない。


(嘘だろ。なんでここにいるんだよ。何で待ってないんだよ。ヤバいヤバいヤバい。玉砕覚悟で戦うしかないか………?スサノオ様がいないと勝ち目は限りなく………)


イザナギは段々と近づいてきている。

遠くからこちらの動向を歩きながら伺っており、魔剣を抜いた。


緊張の中イズモがゆっくりと口を開く。


「………ヤサカ。カグツチを頼む。」


「………は?」


「………俺とクマノとツシマの3人で時間を稼ぐ。少しでも遠い場所に逃げろ。あれは話し合いが通じる顔じゃない」


「「了解」」


2人は汗をかきながらも了承する。

そしてクマノはヤサカにカグツチを預けようとする。

しかしヤサカは受け取ろうとしない。


「………4人で戦えば何とか」


「無理だ。勝ち目はない。だから時間を稼ぐ」


「………いきましょう。私がカグツチ様を運びます」


オオカがクマノからカグツチを受け取る。


「ラムチさん。動けますか?」


「………えぇ。何とか。……………ごめんなさい」


ラムチは唇を噛み締め、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

そしてオオカ、カグツチ、ラムチ、ロスカの4名は走り去っていった。

ヤサカはまだ現場に残っており、イズモ、ツシマ、クマノの3人は剣を抜いて、イザナギの臨戦態勢を取っている。


「いや………あんたら死ぬ気です?」


「スサノオ様の命だからな」


「………カッコつけてんなよ。俺も」


「カグツチたちの護衛任せたぞ。お前にしか任せられない」


「………分かりましたよ!………負けた後の姿を超煽ってやりますから!」


そう言ってヤサカもラムチたちに向かい走り出した。

その表情には少しの涙が浮かんでいた。

イズモは少し微笑んだ。


イザナギは表情を変えないまま段々と近づいてきている。


「よし。やるぞ。」


イズモはポケットから大量の木のチップを取り出し、イザナギ目掛けて投げる。

するとイザナギ周辺に煙が現れ、辺りが見えなくなる。


そして特に声等は掛け合わずに、カグツチ達の進行方向と、イザナギのちょうど間になる位置で剣を構えている。


(煙と剣術で少しでもここに長く留まらせる!)


そう考えているとうっすら見える周囲を見渡す。

すると既にクマノとツシマの二人はその場に倒れてしまっていた。


(………は?)


そう考えた瞬間、イズモの腹に剣が突き刺さる。


「がっ!?」


つい声を上げてしまう。

そしてその後剣を抜かれ、イズモはその場に四つん這いで倒れ込む。

気付くと目の前にイザナギがいた。


(何で………全く気配を感じなかった。クソ………)


イザナギはイズモに目もくれず、進もうとする。

イズモは力を振り絞りポケットから木のチップを取り出し、投げる。

するとさらに煙は広がって前は見えなくなっていく。


そして何とかよろよろと立ち上がり斬りかかろうとするが、その前に何の前触れもなく脳みそめがけて剣の突きが飛んでくる。

すんでのところでしゃがんで躱すも、すぐさま同じく脳めがけて突きが来る。


それを横に躱すも、急な感じであったために、今度は右腕に直撃してしまう。

利き腕に攻撃を食らい、剣を落としてしまう。

イズモはぶらんと力なく右腕を下ろす。


そして遅れてきた腹へのダメージでやはり膝をついてしまう。

イザナギはそれに構わず前へと進んでいく。 


(クソ………せめて煙は…………)


煙は絶えず出続けている。

そして薄っすらとイザナギの方からイズモ目掛けて何か小さな刃のようなものが飛んでくる。


「………あ」


死を悟った刹那、その飛んできた刃は落とされる。


「………あ」


イズモの眼前には剣を抜いたスサノオの背中があった

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