火の国編23話
オオカは家の外に出てくる。
一同は固唾を飲んで見守る。
オオカはポリポリと頭をかく。
「カグツチはどうでした?」
「うーん。ちょっとまだ落ち込んじゃってますね」
「そうですか………」
「いやー。すみません。なので一旦ロスカ姫だけ一緒に来て貰えますか?ちょっとラムチさんは一旦待機で」
「………分かりました」
「すみません!ではでは!」
そう言ってオオカはロスカの車椅子を押して家の中へと入っていく。
そしてカグツチはロスカと再開した。
「姫!!!」
カグツチはロスカに駆け寄り、触れないように手や顔などを確認するが特に傷はなく安堵し、肩で息を吐く。
「これでカグツチさんもひとまず安心ですね」
「………ありがとうございます」
カグツチは渋々お礼を言った。
オオカはパンと手を叩く。
「いえいえ。じゃあこれから作戦会議に至りましょうか。魔剣を手に入れる作戦会議です」
「………」
カグツチは黙って聞いている。
「イザナギ様に満足するまでカグツチ様をボコボコしてもらおう作戦は却下にしましょうか。ロスカ姫にもその過程で影響が及ぶ可能性が高いですし。」
「………」
「となると取りうる案は、戦って勝つか、騙し討ちするか、盗むか………とかかと」
「イザナギ様の側近なら説得は出来ないのですか?」
「無理ですね。多分。話が通じないタイプです。一応やってみます?」
「………いえ」
「戦って勝つ………は、多分自分たち2人でかかっても難しいです。あの人の強さはえげつないですから」
「そうですか………」
「となると現実的なのは、騙し討ちか………盗むか………」
「寝てるときに盗むのは?」
「やろうとしましたけど、あの人気配に超絶敏感ですから難しいと思いますよ。」
「となると残ってるのは………」
「騙し討ちですね。まぁこれもまだマシというだけですけど。」
「具体的にどうやって」
「今思いついた作戦ですけど、イザナギ様はカグツチ様の目の前でロスカ姫を殺そうとする。そこに至る過程で必ず私にロスカ姫を連れてくるように頼むと思います。そこで私がローブでも被って姫のフリをして車椅子で接近する。そし手すきを見計らって車椅子から攻撃を仕掛ける。そんなところですかね?これならロスカ姫への危険は0です。」
「なるほど。それはいいですね」
「ただ確率が低いのと、失敗したら私とイザナギ様の蜜月の関係が終わってしまうのが玉にキズですけどね」
「………ラグナロクの仲間はいないのですか?」
「お、ノリノリになってきましたね」
「いや。そういうのでは」
「いますよ。私の直属で部下が数人。」
「まさかこの前の石の魔法使いも」
「石………?多分知らない子ですね。石に関する子はいませんから。てかちょっと聞きましたけど、2人でここを落とすのは無謀ですよねぇ」
「………ですね」
「その点私の部下は安心ですよ。ちゃんと理性はありますから。それになかなかの強さ」
「その人たちに協力してもらえば」
「案としてはありです。ただこの城に入れるまでがなかなか苦労しそうですね。あの子たちは完全に火の国部外者ですし」
「………その方達はどちらに」
「この前世界を巡ったタイミングで声はかけたので、今向かってるか、もう着いて潜伏してるか」
「その人達を城に入れるには?」
「うーん。スサノオ様の許可が得られれば。ただスサノオ様がすんなり許可してくれないような。」
カグツチはスサノオの顔を思い浮かべる。
(………スサノオ様は敵なのか?スサノオ様がここに俺を連れてきた。でも………)
カグツチは訓練最終日でのスサノオとの問答を思い出す。
(あの人は王になりたくないって言ってた。あの言葉に嘘偽りは見えなかった。それにここまで俺を鍛錬もしてくれた)
「まぁゆっくりもしていられないんですよね。多分イザナギ様から呼び出し食らうまでがタイムリミットです。それがいつになることやら。」
「………スサノオ様に相談するのは?」
「………え?スサノオ様に」
「あの人が俺を騙そうとして連れてきたとは………何となく思えないです」
「うーん。でも人の心の内は分かりませんよ?下手したら自分でも分からない時ありますし」
「でも話してみる価値はあるがと」
「うーん。なんて話します?一応我々ラグナロクなので。スサノオ様の敵ではありますよ。」
「………あ」
カグツチは一瞬脳裏にあることが浮かぶ。
しかしそれを言い淀んでいた。
その姿をオオカは見逃さない。
「お!何か思いつきました?」
「いえ………特には」
「何か思いついたときは話してみるのが一番ですよ。そこからいい案が生まれる可能性もありますし」
「………」
カグツチは葛藤していた。
「大丈夫ですよ。言うだけなら」
「………自分たちが火の魔剣を奪おうとしてることを伝えないで、イザナギ様に襲われて、オオカさんに助けられたということだけを伝えるとか」
「お、それいいんじゃないですか。スサノオ様もしかしたら協力してくれるかも」
「しかし………」
「それ言えばもしかしたらイザナギ様とスサノオ様がぶつかるかも。イザナギ様とこの国でまともにやりあえるのは多分スサノオ様くらいですしね。スサノオ様がいればイザナギ様に勝てるかも」
「しかし」
「嘘は言ってないですよ。カグツチ様が襲われ、それを私が助けた。隠し事はしてますがね」
「………でも」
「八方美人じゃ大切な人は守れない。残念ながら。それに私がいれば基本的に人は死にませんから。それにスサノオ様だってきっと喜んで協力してくれるかもですよ。スサノオ様に協力を打診してみるってのはどうでしょ?」
カグツチは複雑な表情を見せる。
そしてあることを思い出す。
「スサノオ様は信用ならないかもしれないって言ってませんでしたか?であれば相談はしないほうがいいかもしれない」
オオカは顎に手を当てて考える。
(まぁスサノオ様とカグツチ様が結託されるのも面倒ですし、どちらでもいいか)
「あー。確かに。じゃあやっぱりやめときますか」
「………そうですね」
「………せめて確率は上げたいんで、やっぱり私の部下にも協力してもらいましょう。友人と言って自宅に招待出来ないか相談してみます」
「………」
カグツチはそれに対しても憂鬱そうな表情を浮かべていた。
オオカは諭すように言う。
「大丈夫ですよ。私の部下にはこの街とか市民には危害加えませんから。あくまでも国王を倒すための協力です」
「………分かりました」
「よし。そうと決まれば。一旦あなたは休んでてくださいな。あ、他の人にはイザナギ様に襲われたことは言わないようにしてくださいね。他の人を巻き込みたくないのなら。もし他の人に知れたら、平和的に火の魔剣を奪うこともできなくなりますから。最近の一件のように」
「………」
「後一応強烈な稽古で失神したという体で進んでるので話は合わせてください。」
「………はい」
オオカはまた外へ出ようとする。
「どちらへ?」
「イザナギ様に目は覚ましたけど、まともに動けるようになるのはしばらくかかりそうと伝えようかなと。明日連れてこいとかなったら嫌ですし。後は皆さんにもお見舞いに来てもらおうと思います。皆さんお見舞いに来たがってましたから」
そう言ってオオカは外へ出ていった。
カグツチはロスカの方を見る。
「………俺は………」
カグツチは葛藤していた。




