火の国編20話
イザナギはただ黙って燃え続けるカグツチを見つめている。
そして少しすると火が止まる。
そこには火で丸焦げとなった四肢のないカグツチがいた。
そしてイザナギは再び道場に正座で座る。
オオカはカグツチに駆け寄る。
「うーわっ。これ生きてます?生きてなかったら流石に」
そしてカグツチに手を当てる。
「すごい。辛うじて脈はある。じゃあやりますか。」
オオカは何かを念じる。
すると焦げた肌がゆで卵の殻のように、ペリペリと剥がれ落ちていく。
それがだんだんと広がり、焦げはなくなり赤い肉が露出する。
そして再び念じると、今度は少しずつ身体全体に肌が再生していく。
そして目や唇、髪の毛といった部分にも触れていき、少し立つと腕を切り落とされ、焼かれる前のカグツチに戻っていた。
「よし。肌はOK。次は」
そしてオオカは腕の傷口にも触れる。
すると腕がみるみる内に生えてくる。
その後手足にも触れていき、再生をさせていく。
結果服は焼け落ちてしまっているものの、元のカグツチが戻ってきた。
「ふぅ~。何とか最初は完了。じゃあイザナギ様。一旦運んてしまっていいですか?」
イザナギは答えない。
イザナギは少し憂いを帯びた表情でカグツチを見ていた。
「………一旦運んでおきますので、やるタイミングになったら伝えてくださいね。あと。その格好も道場も。バレたらヤバいんで何とかしてくださいね。封鎖はしておきますから」
そうしてオオカは道場の端にある板を取り出し道場の前にかける。
そこには国王使用中に付き立ち入り厳禁と書いてある。
そしてその後オオカはカグツチを抱え道場を後にした。
玉座の間ではスサノオ達が待機している。
目を瞑って正座をしているスサノオは目を開き、立ち上がる。
「やはり様子を見に行く。少し不安だ」
スサノオがロスカを連れて道場へと向おうとする。
「ですね。カグツチがちゃんと話せてるかも気になりますし!」
ラムチも同じく立ち上がる。
「待ちなさい!」
それをアマテラスが止める。
「あんたら命令を忘れたの?国王の名でしょ!」
「アマテラス。」
「それくらいわけないわよね!早く行きましょ!」
アマテラスも立ち上がり向かおうとする。
それを大臣のオオオミは特にコメントをしていない。
それに気づき声をかける。
「オオオミ大臣さんは止めないのかしら?それとも気になる口?」
「………どうぞ。」
「あら!今日はやたらと物分かりがいいじゃない!よーし行くわよ!」
そう言って出ようとした矢先、カグツチを抱えたオオカが玉座の入口にやってくる。
オオカは赤い綺麗な着物に身を包み気絶している。
それを見て一同はカグツチに駆け寄る。
そして心配そうにカグツチを見つめる。
「カグツチ!」
「オオカさん。何があったのですか?」
「………」
オオカはカグツチを抱えたまま黙り込む。
「オオカさん。」
「申し訳ございませんでしたぁ!!!」
オオカは深く頭を下げる。
「じ、実はイザナギ様とカグツチ様で手合わせをしたみたいで………。それでイザナギ様がヒートアップしてしまい………。失神するまでやってしまったみたいで。ただ生きてはおりますので大丈夫です。大丈夫じゃないですけど」
「なるほど。………なぜ国王はここまで」
オオオミ大臣はそのやり取りを複雑そうに眺めている。
「………さぁ?次期国王を担うカグツチ様を鍛えたいという意図があったのでしょうか?ただこんなことが今後もあってはまずいので、ひとまず私の家にしばらくはいてもらおうと思います。城内だとまたスパルタ食らうかもですから。ロスカ姫達の護衛はスサノオ様達にお願いしてよろしいですか?」
「………そうですか。分かりました」
そこでスサノオはカグツチの衣服に注目する。
「待ってください。どうして服が変わって?」
「………」
「ただの手合わせではないのですか」
「いやー。その。ちょっと大きな声では言うことが出来ず」
「何故ですか?何か都合が悪いことでも」
「いやー。ちょっとカグツチ様の名誉にも関わるので………。ただ負けただけではないというか。何というか。子供がよくやるというか」
それを聞いてあっ!と何かを思いつくラムチ。
そしてスサノオに近づきラムチは耳打ちする。
それを聞いたスサノオは表情を変えない。
「不躾なことを聞きました。失礼しました。」
「え?何々?私にも教えなさいよ」
ラムチが同じくアマテラスにも耳打ちする。
それを聞いてアマテラスは驚きの表情を浮かべ、叫ぶ。
「えぇ~!!!もら」
アマテラスが大声で言いかけたところで、ラムチがアマテラスに手を当てる。
「まぁひとまず今日は私の家に運びますので、後はよろしくです。」
「国王は?」
「今日も今日とて鍛錬してますね。道場貸し切りで」
「我からも国王に一言。」
「いや?訓練に集中してるみたいなんで私からズバっと言っときますよ!じゃ!失礼しますね!」
そう言ってオオカは去って外に出ていった。
スサノオはその後ろ姿をただ黙って見ていた。
カグツチはパチリと目を覚ます。
辺りを見るとそこは見知らぬ部屋であった。
そして自身は布団のなかに入っている。
(あれ………ここは?俺は何を)
少しぼーっとした後にガバっと起き上がる。
(姫!)
辺りを見渡すが家具などがあるばかりで、姫の姿はどこにもなかった。
カグツチは立ち上がる。
「姫!」
大声で呼ぶ。
しかし誰からも反応はない。
そこでカグツチはあることに気づく。
(………あれ。俺は確かイザナギに………。)
そう思い腕や足を見るが、腕や足は問題なく生えている。
(斬られた手足が元に戻ってる。………ここは死後の世界か………?)
「おぉ。目覚めました? 」
声を聞き、その方角に警戒をするカグツチ。
そこにはオオカがいた。
カグツチはすぐにオオカに掴みかかる。
その手をオオカは手で受け止める。
「姫をどこにやった!!!」
「まぁ落ち着いてください。姫様は無事ですよ。」
「姫はどこだ!」
「ここは私の家です。姫は城でスサノオ様達が守ってますよ」
「!あの人は信用ならない!!!」
「ははは。ですよねー。この国に連れてこられて急に殺されかけたんですもん。無理ないですよ」
「あんたも全くもって信用ならない。この家燃やしてやる」
「あなたを直したのは私なんでそこは信用してほしいですー」
「え?」
オオカはナイフのようなものを取り出し自分の指を切る。
そしてその後傷口に手を当てると失った指がみるみる生えてきた。
「!!!」
「この通り!私の魔法で満身創痍のあなたを直したんです。」
「何が目的ですか。あなたはイザナギの仲間ですか」
「うーん。まぁ立場上は?」
「であれば敵でしょう。ここを燃やします。すぐに姫のもとに」
「カグツチさん。火の魔剣が必要なんでしょ?」
「!!!」
「ラグナロクによって氷漬けにされた国と姫を元に戻すために、火の魔剣を求めてここに来た。あなたは触れたものを燃やすことができるロスカ姫の護衛。違います?」
「!!!!!何でそれを!!!」
「だったら利害は一致してます!私と協力しましょうよ。協力して火の魔剣を手に入れましょう」
「!」
カグツチは驚く。
そして質問する。
「信用できません。あなたは何故火の魔剣を。それに何で自分のことを知って」
「あぁ。私ラグナロクの一員なので。火の魔剣が欲しいんですよ!」
「!!!!!」
カグツチは驚愕する。
そして聞く。
「俺達を襲った氷の魔女は………?」
「氷の魔女?あぁフェンリルのことか。えぇ。いますよ」
「!!!」
「我々に協力していただければ、氷漬けにした人達を元に戻すよう私からフェンリルに言います。」
「………」
オオカは黙り込むカグツチを見て微笑む。
「ラグナロクに入りませんか?そうすればあなたの望むこと全てが手に入りますよ」




