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火の国編19話

スサノオ達は玉座の間にて待機をしていた。

そこでスサノオの眉がピクリと動く。

そして立ち上がる。

それを見ていたオオカが話しかける。


「スサノオ様?どちらへ」


「カグツチの様子を見に行きます」


「申し訳ありませんがイザナギ様の名ですので。」


「軽く覗きに行くだけです」


「しかし。イザナギ様に怒られてしまいますよ」


「カグツチが王と話せているか不安なので」


「………イザナギ様のカグツチ様を思う気持ちは分かりました。私が一旦見に行きます。それで手打ちとしていただけませんか?」


「いや。我が」


「王子に命令違反の泥を被ってもらうわけには行きませんので。それにもし口喧嘩でも起きてても仲裁できると思うので。どうか!」 


オオカは手を合わせ頼み込む。


「………分かった。よろしく頼む。」


「はい。お任せください。」


そう言ってオオカは部屋を出ていった。

スサノオは少し心配そうな表情を浮かべていた。




何が起きたかも理解できず左手を見るカグツチ。

その後の激しい痛みにカグツチは歯を食いしばり悶絶する。

カグツチから唸り声が漏れる。


そしてカグツチは痛みに悶えながらも、イザナギの方を見ながら片手で剣を構える。

イザナギは震えている。


「この日をどんなに待ちわびたか。」


イザナギはブツブツと何かを喋り続けている。

しかし目線はカグツチから全く離していない。

カグツチは表情を歪め、痛みに耐えながら必死に考える。


(こいつ。何で攻撃を。いやそんなことより。こいつは姫に危害を加える気か………?)


血を垂れ流しながらカグツチは思考を続けていると、鳥頭の国王の側近、オオカの顔を思い浮かべる。


(側近は姫を知ってた。危害を加えるなら一緒に。いや俺を葬った後に姫を?でもスサノオ様が護ってる。そんなこと)


カグツチの脳にスサノオとの出来事を最新から順にフラッシュバックする。

そして最後、氷の国でのスサノオとの問題がよぎる。


(スサノオ様が連れてきたんだ。俺を。この国に)


カグツチの顔からは汗が止まらない。


(いや。そんなことより。この場をどうする?逃げるか、戦う?勝ち目は?こいつの強さはスサノオ様以上。いやそれも本当なのか?スサノオ様は信用できる?挑めば勝てる?いや。太刀筋がまったく見えなかった。強い。それに加えて俺は片手。挑めば勝ちはない。ならどうする?姫を元に戻すまでは死ねない。逃げるか。いや。あの速さだ。逃げ切るのは容易じゃない。対話を試みるか)


少しの間の後カグツチが話す。


「………話を聞いていただけませんか。」


イザナギはブツブツ言うのをやめる。

目線はカグツチから離さない。


「どうして攻撃を。何か失礼があったのなら謝ります。」


「お前は自分の行動を失礼と評価しているのか?」


「………は?失礼?一体何を」


「失礼なんてレベルじゃない」


イザナギは大声で叫ぶ。


「お前は俺のすべてを奪った」


(何か俺が恨みを買ってるのか?)

「それは一体何を」


「覚えていないのか。」


「………?私が一体何を」


「覚えていないのか。」


(駄目だ。話が通じる相手じゃない。)


カグツチは辺りを見渡す。

しかし木刀など燃やせるものは離れた場所にしかなかった。


(燃やせるものも何もない。建物を燃やしても姫が危ない。クソ。逃げるしか)


カグツチは道場入り口の方に後ずさっていく。

するとイザナギが再び剣を構える。

カグツチは警戒しながら後ずさるも、次の瞬間イザナギがカグツチの隣りにいた。

そして強烈な痛みとともに、カグツチはうつ伏せに崩れ落ちる。


「ぐぅ!!!」


あまりの痛みにカグツチも苦しみの声が漏れ出す。

何とか体を起こし、仰向けになる。

痛みの方向を見るとそこにはカグツチの左太ももから下が切り落とされていた。


「ぐっ」


カグツチは苦悶の表情を浮かべる。

(まずい。まずいまずい)


「弱い。弱すぎる」


イザナギはカグツチを冷たく見下ろす。


「こんな奴のために15年の鍛錬したのか?」


(くそ。どうする。逃げるのは無理。俺はここで死ぬ?いや死ねない。姫を元に戻すまでは………。ここで死ぬならせめて………)


「………どうか話を聞いてください。」


「?」


「………国王に対してとんでもないことをしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。私の命を差し上げます。差し出がましいと思うのですが、1つお願いを聞いていただけませんか?」


イザナギは黙って見下ろしている。


「私の主君である。クリオネッタ王国の姫君。ロスカ様をどうか助けていただけないでしょうか?氷の魔剣により意思疎通が取れない状態となっており、どうか」


「そうか。お前には大切な人がいるのか」


カグツチに悪寒がよぎる。


「俺から全てを奪ったのにも!!!関わらず!!!お前は!!!」


イザナギの表情は初めて歪み、怒髪天となる。

イザナギが剣を振り下ろし、もう片方のカグツチの足もきり落とされる。


「ぐぅっっっ!!!」


カグツチは更に強い苦痛で表情をにじませる。 

そしてカグツチも感情を爆発させる。


「俺が一体何をしたって言うんだよ!いきなり!」


「お前は俺の全てを奪ったんだ………」


「それは一体!」


「奪ったんだよ!!!!!」


「だからそれは何を!」


「だからお前の大切な人も奪う。お前の前でな」


「………は?」


「お前の姫君を君の前で殺す」


「………」


カグツチは怒りで震える。

そして残っていた片手でイザナギ目掛けて剣を振るう。

しかし残っていた手もイザナギに切り落とされてしまう。

握っていた剣とともに手が地面に落ちる。


「っっっっっ!!!クソが!」


(クソ!クソ!クソ!まずい!姫だけはなんとしても!)


カグツチの思慮の最中イザナギはカグツチの真上に立つ。

カグツチは怒りに満ちた表情で、痛みに耐えながら、イザナギを睨みつける。

そしてイザナギはカグツチに向けて剣を振り下ろす。

カグツチの体を剣が貫通する。


「ごふっ」


カグツチの口から血が溢れる。

それに構わずイザナギは剣を刺し続ける。

怒りに満ちた表情でカグツチを刺し続ける。


(く………そ…………)


カグツチの意識も段々と虚ろになってくる。

その時道場の入口から人が入ってくる。

イザナギはそれに気づき、剣をカグツチに突き刺したまま手を止めた。


(誰か………来たのか………?)


そしてカグツチもその方角を見る。

そこにはイザナギの側近の鳥頭のオオカがいた。


(側近の人………?)


オオカはその光景を見ても何も反応せず、笑顔のままである。


「イザナギ様。やってますね」


むしろ事前にそうなることを知っていたかのように振る舞っている。


「どうですか?スッキリしますか?」


オオカの声かけにイザナギは反応しない。

そこでカグツチは悟る。


(………こいつら。………敵だ。俺を殺すためにここに………。スサノオ様達も………クソ。………姫を守らないと………いけないのに。)


カグツチの脳裏に走馬灯のように姫との日常や姫の笑顔がよぎる。


(姫を…………元に戻せていないのに………)


満身創痍のカグツチの目から涙がこぼれ落ちる。


(………死ねない。…………まだ死ねない。………姫を………)

カグツチは歯を食いしばる。


「燃えろ」


イザナギの声と共に突き刺した剣から炎が上がる。

同時にカグツチの身体が激しく燃え出す。


「うあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


燃え上がり激しい苦しみでカグツチは絶叫する。

そして脳裏にはロスカの姿が常に映っていた。


(くそ………死んで…………たまるか………死ん………で………)


そしてそのすぐ後にはカグツチの意識はなくなった

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