火の国編18話
マガハラ王国城下町を馬車の集団が通る。
それを民たちが不安そうに見つめていた。
その馬車の中に、紅の甲冑に身をつつみ、赤髪にの挑発に髭を生やした男が乗っていた。
じっと目を瞑り、座っている。
そんな彼の腰には赤色に輝く剣が一本。
その近くには鳥の巣のようなオレンジ色の紙の男が一人と、年寄りが一人乗っていた。
彼らは無言で城を進んでいく。
スサノオ達は火の国の玉座にて待機していた。
ラムチがアマテラスに質問する。
「そういえば国王はどのような方なのですか?」
「………寡黙な人ね。でも話したことはないわ。」
「え?そうなのですね」
「うちの国王ほとんど城にいないで世界を駆け巡ってるのよ。ほんと困った人よね。」
「………なるほど。いろんな王様がいらっしゃるのですね。」
カグツチはじっと待っている。
じっと待ちながらもカグツチは少し浮足立ってソワソワしていた。
そうして待っていると部屋に2人の男が入ってくる。
鳥の巣のような頭のオレンジ髪の男と年寄りである。
鳥の巣のような男は入るや否や、カグツチの赤髪に目を向ける。
そして近づいてくる。
「始めまして。お会いできて光栄です。私はイザナギ国王の側近のオオカ·ムヅミと申します。オオカとお呼びください。」
そして笑顔で手を差し出すため、カグツチは握手に応じる。
「よろしくお願いします」
オオカはスサノオの方を向く。
「スサノオ様たちもお元気なようで」
「はい。変わりないです。」
老人の方も近付いてくる。
何やら浮かない顔をしている。
「こちらは大臣のオオオミです」
「………よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。」
オオオミが頭を下げたため、カグツチも頭を下げ返す。
その後カグツチは辺りを見渡す。
「あれ?国王は?」
「はい。道場でお待ちです。」
「………道場?何故」
「えぇ。どうやらカグツチ様の力を試したいようでして、」
「………」
カグツチは複雑な表情を浮かべる。
そしてここに来てからの手合わせの日々を思い出す。
そして内心またかと思いつつも返答する。
「………分かりました」
「我々も立ち合いを」
「いや」
スサノオが立ち会いを申し出たところをオオオミが止める。
「イザナギ様はカグツチ様と2人で手合わせをしたいようで。カグツチ様以外は入れるなとのことで。あ、部屋までは私がご案内するのでご安心を」
スサノオはそれを聞き考える。
「えぇ!?私たち王族じゃない!感動の親子の再会くらい見せなさいよ!」
アマテラスが突っかかる。
「申し訳ありませんが、イザナギ様の命ですので」
「えぇ!?納得いかない!」
「アマテラス」
「何よ!」
「きっと家族水入らずで話したいこともあるのだろう。生まれてからずっと会えなかった家族だ」
「………分かったわよ!カグツチ!終わったら聞かせなさいよ!」
「はい。………ただ」
「ただ?」
カグツチはロスカに目線を向ける。
「あぁロスカ姫ですね」
「!なんで姫のことを?」
「部下より情報は聞いております。氷の魔剣により封印されてしまっているとかでしたね。」
「………はい」
「申し訳ありませんが姫の動向も避けていただければ」
「何故ですか?」
「王のご意思です」
何か言いたげな表情をカグツチはするが、それを喉に抑えて、続ける。
「………分かりました。スサノオ様。姫のことをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ。責任を持って守る」
「………ありがとうございます。」
頭を下げた後にカグツチは立ち上がり道場へと向かう。
それにオオカがついていき、他の面々はカグツチを送り出す。
道場への道筋でカグツチは考える。
(姫を俺のせいであんな状態にしてしまってからかなりの時間が経ってしまった。でも………それももうすぐ解決する。火の魔剣があれば………。姫に同行してもらって先に解除してもらいたかったけど、こればかりは仕方ない。ここで揉めて遅くなるくらいなら進んだほうがいい。もうすぐなんだ。力を貸してもらうだけで姫の魔法の解除が出来るんだ)
カグツチはふとあることが頭に浮かぶ。
(………もし。魔剣の力を貸してくれる条件が、俺がマガハラの王になることだったら………俺は氷の国には帰れなくなるのか?)
脳裏に氷の国でロスカと過ごした日々を思い出す。
そしてロスカのカグツチに向けられた、ずっと守ってねという言葉も思い出す。
(………まずは姫を何としても元に戻す。それが俺の責務。そのためだったらどんなことだってやってやる。)
そう考えている内に道場へと着く。
道場からは何やらプレッシャーのようなものを感じる。
(………このプレッシャー。国王からか?………いや………緊張してるのか?)
オオカが口を開く。
「緊張してますか?」
「………はい。少し」
「大丈夫ですよ。死にはしませんから」
「そうですね。」
「ふふ。ではご武運を」
そうしてオオカは去っていった。
カグツチは道場の扉に手を当てる。
(まずは事情を話して相談するんだ。落ち着いて。失礼のないように)
そして道場の扉を開ける。
道場の中央には紅の甲冑に身を包んだ、赤い長髪の髭を生やした男がいた。
目を瞑って瞑想するかのように、中央に正座している。
その座り姿からはオーラやプレッシャーを感じる。
(………あれが。マガハラ国王のイザナギ様。俺の………父に当たる人。)
そしてその腰には赤に輝く魔剣がかけられていた。
(あれが火の魔剣か?………長かった。でももうすぐだ。)
カグツチは敬礼をして大声で話す。
「カグツチです。入ります。」
そう言って中央に座るイザナギに近づいていく。
イザナギは声をかけたタイミングでも、近づいていく際も何も反応しない。
(………寝てるのか?)
構わずカグツチは近づいていく。
そして2歩くらいの距離になったところで話す。
「………始めまして。カグツチと申します。」
しかしイザナギは何も反抗しない。
「私があなたの息子だというお話、イザナギ様がこの国に私を呼んだとお聞きしました。この国に呼ばれたご要件をいただいて目よろしいでしょうか?」
イザナギは全く反応しない。
そんなイザナギを見て、カグツチの脳裏に最悪の想定がよぎる。
「………まさか。」
そう思いイザナギに近づき首に手を当てようとする。
そして触れる前に瞑っていたイザナギの目が開く。
その目は力強く、カグツチは気圧され、後ずさる。
「………失礼しました。それでご要件ですが」
「死んだ」
「………はい?」
「俺はあの時に死んだ」
「………」
カグツチは黙ってイザナギを見ている。
「俺に子はいない」
「………?」
カグツチは状況を理解できず困惑する。
「一体どういう?」
「剣を抜け」
「………はい?木刀じゃなくて?」
「剣を抜け」
異様な雰囲気を感じてカグツチは剣を抜き、警戒を強める。
するとイザナギが剣を抜いて立ち上がっていた。
そして一瞬の風の揺らぎを感じた後に、カグツチの左手から何やら熱い感触を感じる。
その感触の方角を見ると、カグツチの左手について肘から下がなくなっており、地面にはいつの間にか切られたカグツチの左手が存在していた。




