火の国編16話
ラムチはスサノオの側近4人組に話しかける。
「………皆さんはこのことをご存知で?」
側近たちは迷いなく話す。
「臣下になったときから。全て」
カグツチはスサノオの魔法のことを聞き口を開く。
「………それだけですか?」
「………」
スサノオは黙ってカグツチを見る。
「スサノオ様は強さも素養もお持ちです。血の繋がり、魔法の有無、それだけで王になる資質がないとは言えないと思いました」
スサノオの側近たちはうんうんと無言で頷く。
「………話を続けていいか」
「………はい」
「城に戻った我は青い炎を披露した。剣を振るってな。兵士たちは固まったが、拍手して喜ばれたよ。ついに後継が生まれたとな。」
城に戻りスサノオは兵士たちに向けて、剣を振るって出す青い炎を披露する。
その魔法を見て一同は拍手喝采の状態となる。
それを見て一瞬複雑な表情を浮かべるも、まだ小さな子供であったスサノオはすぐに嬉しそうにする。
「若かりし我は正直安堵した。これで王になれるんだ。居場所がなくならなくて済むんだとな。だが」
時は進みスサノオは大人になっていく。
少しずつ公務等を担うようになっていき、民と触れ合う。
「スサノオ様かっこいい!」
「なんと綺麗な炎じゃ。これぞ王の証」
「こんな正統後継者が生まれるなんて火の国は安泰になるな」
キラキラとした民の眼差しと純粋な称賛が日々ずっと続いていく。
その連続にスサノオの表情は曇っていく。
「民達は我が王に相応しい。早く王になってくれ。そう言ってくれた。疑いもしない純粋な羨望の眼差しでな。それを見て………我は申し訳ない気持ちになった。………民は我のことを信じてくれているのにも関わらず、我は民を騙している。子供の頃なら見えなかったが、大人になるにつれそういう点が見えるようになってきた」
暗い面持ちのスサノオは城で大臣に相談する。
自分は王に相応しくない。
せめて民に真実を話したいと。
しかし大臣は神妙な面持ちで答えた。
「大臣の返答は、この国のためにもそれは話すな、だった。今国王が民の前に出ていない現状がある。その中で国を守るためには象徴が必要。その象徴が外部の子と知られれば国の混乱は拭えないものとなってしまう。だから黙っていてくれとな」
過去のスサノオは渋々それを了承する。
大臣はそれを聞き、スサノオの肩を叩いて感謝していた。
「我はこの国のため………いや。結論自分のためか。民にこの事実を隠し続け今に至るわけだ。そこからは日々罪悪感は募るばかりだ。我に王になる資格なんてない。そう思うばかりだった。せめて我の部下には事実を伝え、仕えてもいいか選ばせるようにしているがな。」
遠くからアマテラスが立ち上がって話す。
アマテラスは神妙な面持ちをしている。
「一応言っとくけど、私とツクヨミも同じくよ!拾われて王族になった。でもそいつと違って罪悪感なんてないから!」
はっきりと言い放つ。
ラムチがアマテラスに話しかける。
「アマテラスちゃんとツクヨミちゃんも拾われて?話しにくければ大丈夫」
「そうよ!スサノオと違って家族はいなかったけどね」
「そう………。辛いことを聞いてごめんなさい。」
「私はむしろラッキーね!偶然王族になれたんだから!国王はごめんだけど!」
そしてその後スサノオにも大声をかける。
「王の資質なんて血や魔法だけで決まるもんでもないでしょうが!この真面目!運も素質のうちよ!王になっちゃいなさいよ!」
「そうですよ!アマテラスの言うとおりです!」
近くに座っていたヤサカが賛同し、声を上げる。
スサノオは野次に表情を崩さない。
「………続けるぞ。そんな時だ。カグツチ。お前が見つかったという情報を得たのは」
「………」
カグツチは脳裏にハッセルのことを思い浮かべる。
「前も話した通り、君は生まれた当日誘拐された。それがつい最近だ。氷の国クリオネッタで騎士をやっているという情報を得た。」
「………爺さん」
「………誘拐され、王妃もその日に亡くなったらしい。跡継ぎ候補がいなくなり我らに話が来たという流れだ。」
「………やっぱり爺さんが俺を誘拐したってことか?だとしたら一体何で………?」
「………さぁな。君の爺さんの思いの丈までは分からない。だが事実、君は火の国で生まれで、君は今までは氷の国にいた。何か事情があるのだろうな。」
「………」
カグツチは困惑して表情が曇っている。
「話を続けるぞ。国は君のことをずっと探していた。国も内心我が王になることは苦肉の策だと思っていたのだろうな。我も君が氷の国にいると聞いたとき安心した。もう民を騙さなくて、偽りの王にならなくて済むとな。そこで我らが氷の国に赴き、君に火の国まできてもらって今に至る。というわけだ。これが我が王にならない理由だ。」
「………」
カグツチは困惑して固まっている。
「………まぁ無理もない。」
「爺さんが………。一体何で………。」
「………それは君が直接聞くといい。」
「………え?」
カグツチは顔を上げる。
「氷の国で兵をやっている者が実は王族だった。その事実があればすぐに食いつくはずだ。君と合う前はそう思っていた。だが、君にはやるべきことがある。強い意志があり守りたいものもいる。だから一度やるべきことを成してから考えればいい」
「………?」
「明日、国王から引き継ぎの話があるだろう。そこで事情を説明し、氷の国に戻り成すべきことを成せ。そこで君の爺さんにも聞けばいい。そこから王になるかを考えるでも遅くはないだろう。」
「………私が王にならなかったら………?」
「その時はその時だ。また考える。」
優しくスサノオが優しく微笑む。
そして深く頭を下げる。
「改めてすまなかった。君の事情も知らずにこんなところまで連れてきてしまって。」
「………いえ。」
「長々と話してしまって済まなかったな。今日はゆっくり休むといい。」
「………はい。分かりました。」
「………さて。改めて。我に一本を与えたこと。本当に見事だった。おめでとう。今日はゆっくり休むといい。」
「………はい。分かりました」
そうして一同は稽古場から離れる。
道中神妙な面持ちを続けるカグツチをラムチは心配そうに見ていた。
離れ際にラムチがカグツチに話し掛ける。
「………ちょっと夜話したいことがあって………。いいかしら?」
「………?はい。分かりました。」
そして一同は美味しい焼き魚定食を食し、温泉で体を癒した後、各自の部屋へと戻っていった。
すっかり夜は更けている。
ロスカとラムチは部屋の中にカグツチはその目の前で警戒をしていた。
クマノ、ツシマの2人の護衛も側にいる。
ラムチが外に向けて話す。
「ねぇクマノさん、ツシマさん。ごめんなさい。カグツチと大事な話をしたくて、席を外しておいていただけませんか?」
「………しかし護衛任務が」
「………お願いします」
クマノとツシマは顔を見合わせて、少しの間が生まれる。
そしてうんと頷き、声を発する。
「………分かりました。話し終わったら呼んでください」
「………はい。ありがとうございます。」
そうして2人は去っていく。
「2人ともいなくなった?」
「………はい。」
「ありがとう。じゃあ。私から。言いたいこととか色々あって話させて。」




