火の国編15話
カグツチとラムチは驚愕している。
そして他の面々はそれをまっすぐと聞いている。
「続けるぞ。………我は元々平民の家の子として産まれた。」
スサノオは脳裏に昔住んでいた家を思い出す。
それは今の城とは程遠い、かなりボロい平屋である。
「明日をも生きるのが厳しい家庭での生活だ。そんな5歳の時だった。国王の養子になれという話が来た。」
スサノオは子供時代に家に兵士たちがやって来た光景を思い出す。
「………なぜスサノオ様を。」
「………さぁな。後継候補がおらず、養子を集めていたらしい。」
スサノオの両親は兵士たちにペコペコと頭を下げていた。
「それを親は承諾した。我は何をするのかも分からないまま、ただ将来的に王になれる。美味しいものもたくさん食べれる。親ともいつでも会える。未熟だった我はそう胸を輝かせ、養子になった。」
そして若かりしスサノオは兵士と共に城へ行く。
泣きながら見送る両親の姿がスサノオの印象に残っていた。
城へ到着すると訓練場に集められた。
そこにはもう2人の子供がいた。
待機していると、そこに老人が入ってきて、話し始める。
「よくぞ来た!今日から君たちはマガハラ王国の王族だ!これから王に相応しくなるよう毎日訓練をする!」
「そこから訓練の日々だ。武芸に学問、王たる物に必要なものすべてだ」
スサノオは武芸の訓練にて、木刀を持った老人にやられうずくまっていた。
うずくまりながら涙を流している。
学問についても、理解しきれず、書物をめくっては頭を抱えるを繰り返していた。
「子供ながらに、軽い気持ちで来たことに後悔したな。………いや。子供ゆえ重さを分かっていなかったのか」
夜中、スサノオは一人部屋で布団を被り、フルフルと震えている。
布団は軽くスサノオの涙で濡れてしまっている。
「もう帰りたいと思った。だがもう会うことは許されないと言われた。王族になった以上な。そう言われて絶望した。父と母に会いたいと毎日のように泣いた。」
スサノオはその中でも、死んだ表情で何とか嫌々訓練を続けている。
「あまりにも成長が遅かったからか、ある日訓練をつけてくれていた兵がこう言った。強さを得れば自由も得られる。王族としてふさわしい素養が身に付けば親に会いに行ってもいいとな。」
それを聞きスサノオの顔に生気が戻る。
「そこからは王族になるということを忘れて必死に毎日訓練した。今のカグツチと同じようにな。そして剣術、学問を数年かけて身につけていった。そして街にに繰出すことも許されるようになった。」
兵士たちと他の連れてこられた2人の子供と、街を歩く。
街の群衆たちは王子ー!王女ー!と歓声をかけている。
「………他の二人は家族という家族がいなかった。我だけだな。そして会いに行ったとき既に元いた家に家族はいなかった。」
スサノオはもぬけの殻となった家を見て膝をつく。
まだ残る生活感はホコリに被っていた。
そしてスサノオは震えて涙を流す。
「必死に会いたいと思ったのにもういない。聞くところによると野盗に入られて2人とも殺されたらしい。一緒に来ていた老人が言ったよ。」
スサノオに訓練をつけていた老人が慟哭するスサノオの肩を叩き語る。
「残念ながら君の家族はもういないようだ。亡きご家族は君が王になることを望んでる。だから王に相応しい火の魔法を身につけよう」
「………子供ながらにもう我は王族になるしか道はない。そう思ったよ。そこからは魔法の鍛錬が始まった。」
カグツチとラムチは静かに聞き続けている。
昔のスサノオは訓練場で目を瞑り、眼の前の葉っぱに何かを念じている。
しかし葉っぱには何も起こらない。
「歴代火の王族は自ら火を起こす魔法を持っていたらしい。だから我もその魔法が出るように鍛錬した」
「………待ってください。でも確か魔法は先天的なものだったはず」
「………そうだ。人にどの魔法が宿るかは生まれた時から決まっているのが定説。我は訓練を続けたが火が起こることは決して無かった。指導の者たちも諦めムードになっていたな」
若かりしスサノオの表情も訓練のたびに曇っていく。
「………じゃあ何で。あの青い炎を?」
「………ある日のことだ」
若かりしスサノオは鍛冶工房に来ていた。
「自分用の剣を見繕って貰うため、鍛冶工房に来た。」
そこで長い髭を生やした鍛冶職人と話す。
「おう王子。最高の剣を打ってやるからな」
スサノオはその鍛冶場の奥に立て掛けられた一本の剣が目に入る。
それは今スサノオが握っている剣であった。
「………あの剣は?」
「あぁ?これか?」
鍛冶師は剣を取る。
「こいつはすげえぞ。世界に散らばる25の名剣の1つ。アメノハバキリだ。ちょっと離れてな」
そして何やら剣を強く握る。
そして強く振るう。
すると剣からカチッという音と共に火花が散る。
そして剣に赤い炎が付き、メラメラと燃える。
「!!!」
「こいつは仕掛けがしてあってな。剣についてるスイッチみたいなのを押すと火がつく!もちろん剣としても一級品だ!凄いだろ!うちのご先祖様が作り上げた一品だ」
まだ若かりしスサノオはそれを見てあることを思いつく。
「………その剣。使わせていただけませんか?」
「!」
鍛冶屋の顔が曇る。
「悪いけどな。この剣はうちの家宝だ。それに王子には俺が最高の剣を打ってやる。だからこれは渡せない。」
「………」
スサノオの表情が曇る。
「それに火の国の王族なら、自分自身で火を起こせるんだろ?この剣に頼らずともいいじゃねえか」
スサノオは無言で頭を下げる。
「………悪いがこの剣は渡さない。諦めな」
鍛冶屋はアメノハバキリの火を消し、後ろにある窯に向かう。
窯にある炎は赤色にメラメラと燃えている。
そして何やら作業をしている。
「ちっ。最近温度が微妙だな。こいつも寿命か?」
スサノオは頭を上げる。
そして窯の炎をに見つめる。
(………もう。俺にはこの居場所しかない。ないのに)
そしてスサノオは自分の手のひらを見る。
(俺は………火を起こせない。王族にはなれない)
スサノオから涙がこぼれ落ちる。
掌に涙が落ちる。
(………このまま火が起こせなかったら俺はどうなるんだろう?家族もいなくなった。一人になるのかな?)
スサノオは再び窯の炎を見る。
(あぁ。俺もあんな風に。)
窯の中では赤い炎がメラメラと燃え続けている。
(あんな風に強くて熱い炎を起こせたら)
スサノオは遠くから掌を窯に向ける。
すると窯の炎が、勢いよく青く燃え始める。
青い炎は通常の炎よりも温度が高い。
鍛冶屋は急な出来事に驚く。
「おぉ!?急に熱くなった!しかも青い!なんじゃこりゃ!?」
スサノオも急な出来事に驚く。
そしてあることが脳裏に宿る
「………まさか」
そして再びスサノオは鍛冶屋に頼み込む。
「あの………すみません。一度だけアメノハバキリを貸していただけませんか。試したいことがあり」
鍛冶屋は振り向く。
少年スサノオの表情を見て、息を吐く。
「分かった。」
そうしてアメノハバキリを手渡されるスサノオ。
そしてスサノオは念じる。
(炎を熱く強く)
そうしながらスイッチを押し、剣を振るう。
すると先ほどは赤い炎が出ていたところ、今度は青い炎が出現する。
「!!!」
鍛冶屋は驚く。
スサノオも驚く。
「………なるほどな。」
鍛冶屋がじっとスサノオのことを見つめる。
そして鍛冶屋がスサノオに近づき、肩を叩く。
「その剣王子に貸すよ。今までこんな炎見たことない」
「!!!」
「だが。今のオレには作れねえが。いずれあんたにもっと合う剣を打ってやる。だからそれまで貸しとくだけだ」
「………ありがとうございます」
スサノオは頭を下げた。
スサノオはカグツチをまっすぐと見つめる。
カグツチも真剣に聞いている。
「………俺の魔法は偽物だ。自ら炎は起こせない。カグツチと違ってな」




