↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/90

火の国編14話

一同は訓練場に来ていた。

そこでカグツチとスサノオが木刀を持って対面し、その光景をラムチ達やスサノオの部下達が眺めていた。


「昨日はゆっくり休めたか」


「はい。ありがとうございます。」


「そうか。明日は国王が戻ってくる。今日が最後の稽古だ」


「はい」


「今日はひたすら実戦だ。我と組手をやり続けてもらう」


「はい」


「事前の約束通り、我から1本でも取れれば我が王にならない理由を話そう」


「私が負けたら?」


「何もない。じゃあ始めるぞ」


「はい」


そう言って稽古が始まった。

カグツチ6日前とは比べ物にならないほどの動きでスサノオとの組手を続けていく。

その動きを見てヤサカは驚きの目線で見ている

そんなヤサカを見て、隣のイズモがフッと笑う。


「カグツチの動き中々凄いよな。6日前とは大違いだ」


「………別に。普通じゃないですか?」


「お前には無理だな」


「はぁ!?出来るに決まってるじゃないですか!?」


「あいつは基礎の動きから、重点的に何度も何度も反復してたぞ。それをお前に基礎の反復が出来るとは思えねえな」


「はぁ〜!?そんくらい余裕ですから。基礎の反復なんて余裕に決まってるでしょ!?」


「出来るんだな」


「当たり前ですよ!」


「じゃあ次の稽古は真面目に取り組めよ。さもなくば俺は愚かカグツチにも追いつけないぞ」


「はぁ~〜〜!?何しれっと俺の方が強いアピールしてるんですか!?カグツチにも一回負けたくせに!」


「………」


「第一何で昨日の攻防俺を連れて行かなかったんですか!?陽陽と出てったあんたはあっさり石にされたみたいだし!俺だったらそんなヘマ絶対しなかったもんね!」


「………」


黙り込んでプルプルと震えるイズモ。

それを後ろから恐ろしそうに見ているクマノとツシマ。

ヤサカは気にせず続ける。


「てか何であんたがスサノオ様側近のリーダー面してるのさ!この2連敗が!にーれんぱい!にーれんぱい!」


「黙って聞いてりゃこのクソガキが!」


イズモが我慢の限界を迎え、怒髪天の表情で剣を抜く。


「おぉ!」


「落ち着けって!子供の言葉にカッカすんなって!」


クマノとツシマが必死にイズモを抑える。

そしてヤサカも急に怒りだす。


「誰が子供だこの野郎!この際側近4人で誰が強いか!決着付けようぜ!」


ヤサカも剣を抜く。

一触即発の空気の中、パチンという鋭い音が響く。

一同が音の方角を見ると、そこには尻もちをついて倒れている。

スサノオが尻もちをついたカグツチに手を貸す。


「もう一度だ。行けるな?」


「はい。もちろん」


カグツチは起き上がり再び組手が始まる。

カグツチは確かに比べ物にならないくらい強くなっている。

しかしそれでもスサノオには一本も当てることは出来ず、倒されてはまた起き上がりを繰り返していた。

その光景を一同は神妙な面持ちで見ていた。

アマテラスはイズモに話しかける。


「………ねぇイズモ。」


「はい」


「あんたがスサノオとやる時は何本に一本は勝てるの?」


「………1000回やって1本取れるか取れないか」


「!」


イズモはカグツチの戦いを眺める。

カグツチは華麗なステップで攻撃をしていく。


「確かにあいつは格段に強くなった。加えて昨日の実践を通じて更にレベルアップしたみたいだ。俺とこの前やった時よりも強くなってる。でも………」


しかしスサノオはそれを上回る華麗なステップで攻撃を難なく防いでいく。

そして隙ができたところに木刀を振るい、カグツチの体にクリーンヒットする。


「それでも、スサノオ様の強さはさらにそれ以上だ。」


「………具体的に確率は?」


「多分………5000回やって1本取れるか取れないか」


「!5000回!?今日中に5000回も出来るわけないじゃない!」


「あぁ。だからスサノオ様に一本入れるのは至難の業だ」


しかしカグツチの目は死んではいない。

再びスサノオに向かっていく。

向かっては倒され、向かっては倒されを続けるカグツチを一同は固唾を飲み見守っていた。

そんな姿をラムチは涙ぐみながら見ている。


辺りはすっかり夕方になる。

カグツチは汗だくになりながらも必死にスサノオに向かって行った。

倒されに倒され、息も切れかけているが、よろよろと立ち上がりスサノオ向かっていく。

カグツチの目も少しずつうつろになってきている。


イズモは考える。

(ここまでか。やっぱり根性あるよ)


ヤサカは考える。

(………まぁこんなもんか。頑張ったほうなんじゃない?)


スサノオは考える。

(………恐らくこれがこの日最後だな。しかし最後まで油断はしない。)


よろよろと向かってくるカグツチを眺める。

(しかしよくここまで頑張った。カグツチ。間違いなくお前は強い。王として恥じない力を持っていると思う)


カグツチは向かいながら虚ろに考える。

(………強くなるんだ。………姫を守れるくらいに。)


そんなよろよろの姿を見て、祈るようにラムチが強くロスカの手を握る。

(頑張れ………!カグツチ………!)


するとそれに呼応するように。ロスカはゆっくりとラムチの手を握り返す。

(………姫?姫も応援してくれてるのね………)

ラムチは叫ぶ。


「カグツチ!」


「………?」


カグツチは耳だけラムチの話を聞いていた。

そして一同は急に大声を出すラムチに驚く。

ラムチは握られていた手を挙げる。

一緒に握っているロスカの手も上がる。


「姫も応援してる!だから頑張って!」


涙声で叫ぶラムチ。

カグツチは横目でロスカの姿を見る。


「………姫。」


カグツチの虚ろな思考が燃え上がる。


(………姫が見てるんだ。負けは許されない。もう二度と。絶対に守る!)


カグツチは最後の力を振り絞り、速い足使いでスサノオに迫る。

そして流れるようなコンビネーション攻撃を見せる。

スサノオはそれを防いでいく。


(早くなった。姫の声援故か?)


アマテラスはそんなカグツチ攻防を見て歓声を上げる。


「いいよー!いけいけいけー!!!」


カグツチはスサノオ動きに近い動きで、連続攻撃を仕掛けていく。


(素晴らしい動きだ。本当に強くなったな)


スサノオは感嘆しつつも的確に防いでいる。

そして少しカグツチの攻撃が大振りになる。

その大振りをスサノオは見逃さない。


(!隙あり!)


空いた側頭部にスサノオの木刀が迫る。


(!)


しかしスサノオの木刀は空振りする。

カグツチは攻撃をしゃがんで躱していた。

そしてカグツチがスサノオの懐に入ったところで、カグツチは木刀を振るう。


パチンとスサノオの脇腹に木刀が命中する。

その瞬間ドサリと前向きに倒れ込むカグツチ。

スサノオは木刀が当たった箇所を見つめる。

そして微笑む。


「一本だな。よくここまで」


おぉ~という歓声が周囲から上がる。

ラムチはロスカの手を握ったまま涙を流している。

アマテラスもツクヨミに抱きつき喜んでいる。

側近4人衆は信じられないと驚きの表情を浮かべている。


カグツチは仰向けに転がり激しく息を整えている。

そんなカグツチにスサノオが近づいて行く。

そして手を貸す。


「おめでとう。君の一本だ」


「………あ、ありがとうございます。」


よろよろとカグツチは手を握って握手する。


「起き上がるか?寝ていてもいいが」


「いえ………起きます………」


スサノオはカグツチの手を握り起こす。


「しかしこれほど強くなっているとは」


「………いえ。まだまだです。スサノオ様には全く及ばないです。これだけやって1本ですし」


「いや。それでも大きな進歩だ。」


「………ありがとうございます。」


カグツチは笑った。

スサノオも微笑み返す。


「………さて。このまま長話したいのだがいいか?」


「え?はい。なんのお話でしょうか?」


「1本の約束だ。我が王にならない理由を話す」


「………!」


「その理由は、我が王の血を引いてないからだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。