火の国編13話
(音を感じる。敵の増援?)
そうしてカグツチは一旦止まり臨戦態勢を取る。
しかしその臨戦態勢は不要であった。
バジリスクは後ろを振り向き絶望する。
「クソ!」
向かってきたのは来たのはスサノオである。
スサノオは到着するや否やバジリスクを地面に抑え込む。
そして目隠しを勢いよくつけ、縄で縛り上げる。
「クソがクソがクソが!」
「これで終わりだ。今度こそ逃さない。」
「!スサノオ様!」
「カグツチか。他のみんなは?」
「大丈夫です。皆さん馬車に。でもクマノさんって人が石に………」
「そうか。」
(クソ。ヤバイヤバイヤバイ。どうする?この状況!てか何で火の魔剣から火が出ねえんだ!ふざけんな。どうする。何とかこの剣と一緒に逃げる策を)
「気をつけてください。多分こいつを見たら石になります」
(!)
バジリスクは少し希望を取り戻す。
(俺の魔法は目があったやつを石にする魔法!その勘違いは都合がいい)
「そうだぜ!俺を見たら石になっちまうぜ!」
「やはり………」
「全員が目を瞑って対応なんてしてたら他の仲間が来てやられちまうぜ!俺を解放して、この剣を持って行っていいんってんなら、仲間にここは襲わないように言ってやる!」
「!やはりお前はラグナロクの!?」
「!知ってやがんのか。うちは強大な魔法使いを何人も連れてる!逆らったらヤバいぜ!」
「いやその必要はない」
スサノオが間に入り込む。
バジリスクの体から冷や汗が出る。
「魔法の解除条件は恐らく分かっている。」
「は?そんなもんねえよ」
「お前。さっき一瞬失神していただろ?それでほかの面々の石化が一瞬解けていた。」
「………」
バジリスクは黙り込む。
「だがそれは一瞬の失神だった。だから一瞬で目が冷めたあと、我が後ろを向いている隙に、ほかの面々を石にして去っていった。違うか?」
「………」
「まぁいい。カグツチ。」
「はい」
「我が目を開ける。こいつを失神させれば恐らく魔法は元に戻る。我が石になったときは頼むぞ」
「え?」
「大丈夫だ。石になっていない」
カグツチの返答を待たずスサノオ様は目を開けるが、石化されなかった。
「お前は目があった相手を石にするとかそういう魔法だろう?」
「………」
顔を青くして黙り込むバジリスク。
カグツチも目を開ける。
カグツチの視界に縛り付けられたバジリスクが映った。
そしてカグツチは自分の手を見る。
「本当だ。石にされてない。」
「………」
いよいよもう手が無くなり、バジリスクは言葉を失う。
「ラグナロクのこと。知ってること全部話してもらいます」
「………」
カグツチの問いかけにも黙り込むバジリスク。
「まぁ待て。怪我をしている。尋問はまた後だ」
そう言ってスサノオは首元に平手打ちをする。
するとガクンとバジリスクの意識は無くなる。
「これで石にされた奴らも元に戻るだろう。これでひとまずは一件落着か。」
「そうですね」
スサノオはカグツチの体を見る。
所々に傷がある。
そしてその奥にある止まった馬車。
「すまなかった。危険な目に合わせてしまった。一度取り逃した我の責任だ」
スサノオは頭を下げる。
「………いえ。お気になさらず。………ひとまず馬車に戻ります」
「そうだな。城に戻るとするか。」
そう言ってスサノオはバジリスクを抱え、止まっている馬車へと戻ろうとする。
すると周りから住民が出てくる。
「スサノオ様ーありがとう!」
「さすが次期国王!」
「早く王様になって!」
そう言った歓声をスサノオは浴びている。
そしてその歓声はカグツチにも向けられる。
「あんたも凄かったぞ!」
「ありがとうございます」
「これからも火の国を守ってくれ!」
その歓声に対しカグツチは会釈する。
「すっかり英雄だな」
「いえ、そんなことは。」
「やはり王の素質を持っている。マガハラの王になるか?」
「………なりません。そういうスサノオ様も民にかなり慕われていますね。」
「………そうだな」
スサノオは寂しそうな表情を浮かべる。
そして馬車に乗り込む。
馬車に乗り込むとスサノオは気絶したバジリスクを置く。
「戻りました。」
「カグツチ!」
カグツチの声を聞き、布を羽織って隠れていたラムチ達が出てくる。
「スサノオ様!」
ツシマもスサノオの存在に気付に驚く。
「すまない。敵は制圧した。馬車の運転を頼めるか?城に戻る!」
「はい!ただいま!」
ツシマは外に出ていく。
「全く。スサノオあんた遅いのよ!怖かったじゃないの!一回取り逃したんでしょ!」
「………すまない」
「まぁいいけど。ありがと。来てくれて。てか聞いてよ」
「何だ?」
「こいつのこと!」
アマテラスがカグツチを指指す。
「相手との戦いでマガハラ王国王子を名乗ってたのよ!王になる気が出てきたんじゃないの?」
カグツチは驚きアマテラスの方を見る。
小悪魔じみた悪い笑みを浮かべるアマテラス。
「いや。それは戦いの中で必要だったので」
「そうか。王になる気が出てきたか」
「いや。違いますって。」
馬車は出発し、城へと進んでいった。
城に戻り、途中で元に戻ったクマノやイズモとも合流。
城に到着した後、バジリスクとコカトリスを牢に入れ応急処置を施す。
コカトリスは離せと騒いでいたが、バジリスクについては特にまだ眠ったままであった。
その後、マガハラの兵士達で街を回り、不審者のチェックを行った後に、民たちに外出許可を出す。
そうしてマガハラの民の日常は戻っていった。
カグツチも怪我を負ったことからその日の訓練については中止。
この日についてはゆっくりと休息を取ることに。
座ったまま寝ることを固辞し続けたカグツチであったが、ゆっくり休めと言うスサノオと対立が発生。
アマテラスのポロっと発した、こいつ座って寝てるという言葉で一気に一悶着に。
話し合いの結果、ロスカたちの部屋の前に布団を敷きそこで寝ること、そして今回の一件を共にしたクマノとツシマを夜間帯に同時に2名護衛に付けることでカグツチは合意。
こうして波乱の一日はあっという間に進んでいった。
その夜スサノオはイズモと自室にて話していた。
「今日はすまなかったな。」
「こちらこそ本当に申し訳ない。不覚です」
「いや。こちらこそすまなかった。兵士たちの様子は?」
「はい。今回不覚を取ったことを相当課題と感じ、余暇時間も訓練に励んでます。」
「そうか。ヤサカは?今回は城の防衛に配置したが」
「カグツチとの一件でずっと落ち込んでますね。今度こちらからも話してみます。」
「そうか。すまないな」
「いえ」
「しかし。カグツチに助けられてしまったな。」
「………そうですね」
イズモはカグツチとの訓練を思い出す。
「あいつ真面目で上達も早いし、やられてもすぐ起き上がるし、根性あるし凄い奴ですよ」
「あぁ。」
「まぁ明日の稽古でスサノオ様に一本当てるのは難しいと思いますがね」
「そうか?分からんぞ」
スサノオは微笑む。
「しかし。あいつが王になってくれれば安泰なのだがな」
スサノオは穏やかな表情でカグツチを思い浮かべる。
それを見てイズモは複雑そうな表情を浮かべる。
「………スサノオ様。失礼ながらよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「確かにカグツチはいいやつです。剣の腕はまだまだですけど、まじめに取り組んでますし。正直自分も舐めてました」
「あぁ。」
「でも。俺達はあんたに王になってもらいたい。火の国の次期国王はスサノオ様しかいない。」
「………」
「あんたの意思が固いのは分かってる。心情だって分かる。でも!それでも!火の国の次期国王はスサノオ様だけだ!これは火の国の兵士達の総意だ!」
「………そうか」
「俺はカグツチのことは人としては認めてる。でも次の国王としては認めない!あんたが適任だからだ!だから頼む。次の国王になってくれ」
「………」
スサノオは言葉を返さない。
そしてイズモは部屋の外に出ていった。
そうして朝になる。
火の国に来て6日目。
国王が戻ってくる前、最後の稽古が始まる。




