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火の国編12話

不安そうな表示を浮かべる一同を気にせず、馬車は進んでいく。


「おい!止まれ!おい!」


ツシマは馬車のバジリスクに語りかけ続けている。

バジリスクは煩わしそうにしながら馬車を運転し続けている。

カグツチは考える。


(相手の魔法はさっきのクマノさんとツシマさんの口ぶり………。何かを見てから石になったということから推測するに………姿を見たら石にされる魔法とかか?となると荷台が石になったのは何故?)


カグツチは脳内でコカトリスの存在を思い浮かべる。


(………少なくともあいつではない。語尾にいしもないし。ただ………ラグナロクの連中が魔剣を狙って来た可能性も捨てきれない………。ともかく姿を見るのがNGという仮定なら………)


カグツチは馬車を見渡す。

すると大きめの布があったため、それを拾い上げラムチに渡す。

そして小声で話す。


「………多分相手を見たら石にされます。布をかぶって相手を見ないように。後は目を瞑って。」


ラムチはそれを聞き、指でグッドマークをする。

そしてアマテラスとツクヨミに来い来いとジェスチャーを送り、小声で何かを話した後、4人で布を被った。

続けてカグツチ考える。


(相手の目的が分からない………。………火の魔剣?けど今火の魔剣はこの場にない。となると別の目的?何かから逃げるために馬車を乗っ取った?となるとどこに行く?敵のアジトのような所に行かれたら………。馬車は絶対に止めなくては………。………もし火の魔剣が目的なら………)


カグツチはツシマに声をかける。


「すみません。姫たちを守っていていただけますか?馬車を止められないか試します」


「え?馬車を?一体どうやって」


「危険な真似ではないです。相手の魔法は姿を見た相手を石にするとかだと思います。お気をつけて。」


「え?いったい何を」


そしてカグツチは馬車の隅の方に置いてあった一般的な鉄の剣を拾い、荷台の方を向く。

そしてスーッと息を吸う。


「私は!マガハラ王国王子にして火の魔剣の使い手!カグツチ·マガハラ!」


布の中でえ?とラムチたちが困惑する。

バジリスクは一瞬呆ける。


「王族?………?火の魔剣?」


「賊共にこの魔剣ごと奪われるというのなら、この魔剣投げ捨ててくれる!」


そう言って拾い上げたただの剣を外に投げ捨てる。

カランカランと音を立てただの剣が転がっている。


「賊共に魔剣は渡さん!」


「………は?え?」




バジリスクは混乱している。

一同も困惑している。


(王族が乗ってた?この馬車に?何故?いや。魔剣が捨てられたならすぐに魔剣を拾えばいいだけだ。魔剣がなけりゃ王族も一般兵も対抗なんて出来っこない。俺の魔法は最強だ。俺と目が合えば問答無用で石になるからな)


バジリスクは馬車を止める。

そして馬車を降り後ろへ走り出す。


(バーカ。投げ捨てるくらいじゃ拾えば済むんだよ!)


そう言って遠くを見る。

遠くには普通の鉄の剣があるのみである。


(あ?火の魔剣って随分と普通の剣だな。氷の魔剣はもっと氷のような見た目だったのに)


そしてバジリスクが馬車の荷台を通り過ぎたところでカグツチは馬車から飛び出し、後ろから斬りかかる。

それを咄嗟に気付き手につけたクローで受け止める。


「!てめ。不意打ちか!」


(止められた!)


カグツチが剣を振り抜くとバジリスクは後ろへと下がる。

カグツチは目を瞑っており、相手の姿を音などの聴覚だけで相手の馬車を把握しようとしている。

そんなカグツチを尻目にバジリスクは後ずさっていき、普通の剣を拾い上げる。


「ハハハ!これか火の魔剣!お前はバカだな!魔剣をあっさり手放すなんて!」


「………くっ!」

というふりをするカグツチ。


(こいつの目的は火の魔剣。ラグナロクの奴らか?)


バジリスクは大きく高笑いをする。


「ハーハハハ!!!この魔剣と俺の魔法があれば最強だ!付け入る隙はない!上から目線のあの女をずっとボロにしてやる!」


バジリスクは氷の魔女を思いかべる。

その後カグツチの方を見る。


「………お前目瞑ってる。俺の魔法に気づいてやがんな。」


「………」


カグツチは何も返さない。

カグツチは考える。


(修業を思い出せ。今使うしかない。全力で肌で感じるんだ)


「まぁいいや。可哀想だし魔剣は使わないでおいてやるよ。目を瞑って倒せるほど俺は甘くねえからな!」


バジリスクは普通の剣を地面に置く。

そのあとバジリスクがカグツチに接近する。


(多分踏み込んだ。)


カグツチはバジリスクの方向に樹の実を投げる。

樹の実が一斉に燃え始める。

眼前に火が迫り、バジリスクは燃えた樹の実をクローではたき落とす。


「お前火の魔法か!カス魔法だな!」


(多分当たってない)


そしてバジリスクは近づき、クローでの連続攻撃をカグツチに仕掛けていく。


(クソ。分かんない。痛み以外!)


気配を元に防いでいくが、すべてを防ぐことは難しく、身体に生傷が少しずつ増えていく。

カウンターで剣を振るって対抗するも、いつもの剣筋よりも弱く難なく防がれてしまう。

カグツチはなんとか剣で突きを繰り出すと、驚いたようにバジリスクは後ろに下がる。


「ふーん。多少は心得があるんだな。まぁ弱いけどな」


カグツチは考える。


(クソ。どうする?動きが大分精錬されてる。視覚情報以外だけじゃ読めない………。どうする………?)


カグツチはスサノオとの鍛錬、そしてその時の言葉を思い出す。


(………困ったらまずは深呼吸して落ち着く。)


スゥーハァーとゆっくり深呼吸をするカグツチ。

そして状況を整理する。


(こちらは目を空けられない。相手の動きを視覚以外で全て取り入れるの難しい。でも………相手は必ず攻撃してくる。攻撃したところにカウンターを仕掛ければ………)


そして稽古での目を瞑った状態での素振りを思いだす。


(火の国の剣術は烈火のごとく止まらない連続の剣術。目を瞑ったままでも!やるしかない!)


「あんまりゆっくりはしてられないんでな!」


再びバジリスクがカグツチ目掛けて進んでくる。


(来た!)


そしてカグツチは剣を構え前神経を聴覚と触覚に集中させる。


(まだだ)


バジリスクは近づいてくる。

まだ音も風の感触も感じない。


(まだだ)


バジリスクは近づいてくる。

音と風の感触は未だない。

そして近づいたところでクローをカグツチ目掛けて振るおうとする。

そこで始めてカグツチは風で攻撃を感知する。


(そこ!)


そうして勢いよく剣を振るう。


「!?」


急な鋭い攻撃にバジリスクは上体を反らして躱す。


(何だこいつ急に。一旦距離を)


上体を起こそうとするも、すぐさま二撃目が飛んできてそれも一歩後ろに下がって躱す。


(クソ)


その後も考える前に3撃目4撃目が流れるように繰り出され、何とか躱したりクローで受け止めたりしているが、先程とは立場が逆転してしまっている。


(こいつ急に。ゆっくりしてたら追いつかれちまう。)


バジリスクは反撃をしようにも、攻撃が来て中々転じれない。

無心で剣を振るうカグツチを見て恐怖する。


(ちっ!めんどくせぇ………あっ)


攻防のさなかバジリスクは思い出す。


(そうだ。俺には火の魔剣があるじゃねえか。それさえあればここを焼き払えれば)


バジリスクの後ろには火の魔剣と称して投げた普通の剣が転がっている。

そして攻撃を受け続けている関係上、少しずつ後ろに下がっていっているため普通の剣との距離は段々と近づいていっている。


(ハハハ。やっぱり俺が最強だ。これを使えば負けっこない。)

そうしてカグツチの攻撃を受け止めながら少しずつ後ろに下がっていく。


(お前の行動で負けに近づいていってるぜ。)


内心ニヤニヤしながらバジリスクは後ろに下がっていく。

そして剣を拾い上げられる距離まで来た。


(俺の勝ちだ。)


そう言って何とか片手で生傷覚悟で攻撃を受け流し、

もう片手で剣を拾い上げる。


「燃えろ!」


バジリスクは念じる。

しかし普通の剣からは何も出てこない。


(は?何で?)


その困惑の隙にもカグツチの攻撃は止まらない。

そしてついにバジリスクさカグツチの攻撃を喰らってしまう。


「ぐわっ」


(当たった!)


上半身を斬られ、バジリスクは後ろに倒れる。


「くっ」


起き上がろうとするも、背中の痛みがぶり返し、起き上がれない。


(くっ)


(動きが止まった?)


カグツチはゆっくりと接近していく。

バジリスクは後退りする。


(クソ!クソ!)


万事休すのバジリスク。

後退りする後ろより何かが猛スピードで向かって来ていた。

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