火の国編10話
辺りは悲鳴が飛び交うパニックとなっている。
それを後から来た兵士たちが必死になだめ、家に入るようにと忠告している。
そして兵士が物陰の方を一瞬見つめる。
するとその瞬間兵士の一人も石になってしまう。
「!?」
その場面を見てカグツチはロスカの前に仁王立ちし身構える。
アマテラス達面々はその光景を見て表情を強張らせる。
そして民たちは周囲はさらにパニックとなり、次々と急いで自分の家へと入っていく。
一部の人間たちは近親者が石にされたショックで石にすがりついて泣き続けてている。
「一体これは!?」
「説明は後です。馬車を用意してあります。すぐさま向かいましょう」
アマテラスは申し訳なさそうな表情を浮かべる
そうして一同は馬車にすぐさま乗り込む。
そしてクマノが運転し、城へと戻る。
馬車は悲鳴の飛び交う街を横切っていく。
すると突如として馬車は止まってしまう。
「!?」
「どうした!?」
ツシマが馬車を運転するクマノに声をかけるも返答がない。
「様子を見てきます!」
ツシマが外に出る。
カグツチは馬車の入り口を見据え、ロスカの前に立ち警戒し続けている。
「これは!!!」
外に出ていったツシマが声を上げる。
「何で馬とクマノが石に!」
「!?」
馬車の中にいる者たちは戦慄する。
その後コツンと何かが当たったような音がする。
「痛。何だ?」
その言葉を残してツシマの声も聞こえなくなる。
「ツシマ?大丈夫?」
アマテラスの呼びかけに反応しない。
「………見に行かないと」
アマテラスが外に出ようとする。
「外は危険です!」
カグツチが静止する。
「いや。ツシマ達の無事を確認しないと!」
外から聞こえてきていた悲鳴も段々と少なくなっていく。
カグツチは考える。
(どうする?ここに籠城するのが正解か………。それともここから脱出するのが正解か………。石になったのはそもそも何で………?………石?)
石と聞いてとある人間を思い出す。
水の国で水の魔剣を巡り戦ったコカトリスの存在である。
(………コカトリスの魔法は見たものを石に変える魔法だった。あいつか…………?)
コカトリスとの戦いで服や剣が石にされたのを思い出す。
(いや………。あいつが人を石に出来るんならそもそも俺を石にしてれば俺は負けてた。なのにやらないならあいつ以外の魔法?そもそもあいつがなんでこんなところにいるんだ。火の魔剣が目的?………いや。それよりも相手の魔法だ。多分………物音はそこまで無いように聞こえた………となると相手を見ることで石にする………とかか?………であれば)
「アマテラスさん。」
「何?」
「推測ですが相手の魔法は目で見たものを石にする魔法かと」
「あ!あの語尾でいしいし言ってた?」
「…………それはわかりませんが。ひとまず馬車の中にいるのが一番安全かと」
「でもツシマたちが」
「自分たちが石にされたら本末転倒です。………本当に申し訳ないですが………今は自分たちが切り抜けることを考えましょう」
アマテラスは申し訳なさそうに俯く。
「分かった」
カグツチは馬車の入り口の方へ行き、手だけを出して樹の実を外にばら撒く。
「何を?」
「防衛です。入ってきたり足音が聞こえたらこれで燃やして何とかしましょう」
そう話していると馬車が突如として石に変わる。
「!?」
「馬車が!?」
カグツチは入り口をコンコンと触るが、入り口は完全に石となっている。
通常時は柔らかい素材で簡単に出入りできるがそれが石となり簡単に出ることは難しくなってしまっている。
「………壊さないと出られなさそうです。」
「そんな………」
アマテラスが不安そうにしており、それをラムチがツクヨミも巻き込んで肩を組んで励ます。
カグツチは深呼吸する。
「………ひとまずはここで待機しましょう。」
「ここで………?大丈夫なの!?」
「ひたまず馬車に乗ってる我々を石にしたいのなら襲ってくるはず。それをせずに石にして閉じ込めたということは、恐らくひとまず我々を狙うつもりはないということ………だと思います。だからここはひとまず待機を」
「待機してどうするの?」
「………スサノオ様たちを待ちましょう。」
一方その頃スサノオ達一行は町中を軍団を結成し進んでいた。
そして定期感覚で大声で周知をしている。
「緊急事態です!今は家の中に避難してください!」
そういって大半の民たちは家に入っていくが、一部入らない者たちは兵士が近づき説得していく。
イズモが話す。
「………相手の目的は何でしょうか?」
「分からんが我々でこの国を守らねばなるまい」
「後は相手の魔法は………?」
「分からん………が、あんなに石像が増えているとなると気軽な魔法だろう。恐らく………相手を見たらとか目があったらとかそう言う。」
「はい。」
「相手の視線には気をつけろ」
「はい」
そして始まりは突然だった。
「………来るぞ」
スサノオがつぶやくと前に並び立つ家屋が次々と石に変わっていく。
「イズモ!」
「はい!」
イズモはポケットから大量の木のチップを取り出し地面にばらまく。
するとそこからみるみるうちに煙が出現していき周りが見えなくなる。
スサノオは目を瞑り立ち尽くす。
腰に掲げた剣だけに手だけを添えて立ち尽くす。
そして周囲の喧騒に耳を傾ける。
「………そこだ」
そう言うと一瞬で踏み込み、前へと一気進む。
そうして剣を振り被る。
「いし!?」
その剣の導線上にいたのはコカトリスであった。
コカトリスは自分の服を事前に石にしており剣を受け止める。
しかしコカトリスはその事実に気づかぬうちに左頬に衝撃を感じ、横に吹っ飛ぶ。
そして理解出来ぬままに再び右半身に衝撃を感じ、今度は逆方向へと吹き飛ばされる。
そしてスサノオが自身の剣を突き出すとコカトリスは大きく後ろに吹き飛ばされる。
それをものすごいスピードで追うスサノオ。
追っていくにつれ煙も晴れていく。
そうして追いつき、剣を振り下ろすことでコカトリスを地面に撃ち落とす。
「いじ!?」
鈍い音と共に地面に叩きつけられるコカトリス。
そして倒れたコカトリスの真上にスサノオがいた。
「くっ!?誰でいし!?こんなところでやられられないんでいし!」
そう言ってスサノオを見ようとする。
しかし
「あっついし!」
スサノオの剣から青い炎が出現する。
その剣をコカトリスに近づけており、熱で目が空けられない状況となる。
そしてスサノオは目を瞑っていた。
「こいつを捕らえろ!」
そう言うと全速力で煙の中から兵士が二人飛び出してくる。
そしてコカトリスに近づきコカトリスに目隠しをつけて、動けないように縛り付ける。
「やめろ!離せでいし!俺はこんなところで!」
「まずは一人。他は?」
コカトリスの嘆きに一切耳を持たずに煙の方角へ進んでいく。
そして目を瞑ったまま耳を澄ます。
煙の中ではイズモがまた同じく目を瞑って、耳を澄ましていた。
そして剣を抜き警戒を強めている。
「みいつけた」
何者かにイズモは肩を叩かれ、剣を振るうも手応えはない。
イズモは目を開く。
「誰だ!」
煙は絶えずで続けている。
そして目の前からクローのようなものでの連続攻撃がイズモに飛んでくる。
それを煙が視界が悪い中何とか捌いていく。
「くっ!」
捌いていく中突如として煙の中からモワッと男の顔が飛び出してくる。
「ばぁ。」
そこには水の国の一件後、ゴーレムを石にしたモヒカン頭のバジリスクがいた。
バジリスクと目があってしまうイズモ。
「くっ」
イズモは目を瞑ろうとする。
しかしバジリスクはにやりと笑う。
「遅え。俺を見ろ」
次の瞬間イズモはみるみるうちに石像へと変わっていく。
「そこか」
スサノオはその攻防の音から煙の中を見据えていた。




