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火の国編8話

翌日の朝。

ロスカ達が寝ている寝室の前で、胡座をかいて眠っているカグツチの前にアマテラスとツクヨミが近づく。


近づくや否や、カグツチはすぐに飛び起き警戒する。

そしてアマテラスとツクヨミと分かり警戒を解く。

アマテラスはびっくりしている。


「びっくりさせないでよ!」


「すみません。おはようございます。」


「おはよう。あんたこんなところで寝てるわけ?ちゃんと休みなさいよ。せめて布団くらい敷きなさいよね」


話しているとふすまを空けてラムチも出てくる。


「あら皆さん。おはようございます。」


「姫は?」


カグツチの問いにラムチは微笑む。


「無事ですよ。いつもご苦労さま」


「よかったです」


「それで朝から何の御用でしょうか?」


「あんた達今日の訓練まで時間あるでしょ?」


「はい。」


「よし!じゃあ街まで遊びに行くわよ!」


「あらまぁ。いいですね!」


「いや。街まで行くのは危険じゃないですか?」


「何?そこの姫様甘いものを食べれば改善するんじゃないの?」


「!」


ラムチに言ったんですか?とジェスチャーを送るとウィンクして返すラムチ。


「はい。そうですが」


「マガハラにもおいしいお菓子はたくさんあるの!だから行くわよ!」


「そうよそうよ。姫のためと思って………」


「………分かりました。ついていきます」


「こんないい女子会についていけること光栄に思いなさい!」


「ははは」


愛想笑いでカグツチは返す。


「スサノオ様は?」


「あいつはいーのよ。結構忙しいし」


「………そうですか。分かりました。」


「よし。じゃあ街に繰り出すわよ!」


そう言って街に繰り出す5人。




街は朝だったが人がそれなりに流れている。

辺りには天ぷら、寿司、串に刺さった焼き魚など様々な食べ物の屋台と平屋の家が並んでいる。

歩いていると男児と女児が話しかけてくる。


「あ、アマテラス様だ!可愛いー!」


「あらあら。ありがとうございます。あなたも可愛いですよ。」


これまでの強い口調が嘘のように女児の声ににこやかに手を振って返す。

アマテラスの慈悲深き巫女のような口調に、カグツチとラムチは少し驚いてアマテラスの顔を見る。


「アマテラスが男と歩いてる!彼氏?」


「彼氏ではありませんよ。お友達です。」


「見て見てー!これ拾ったの!」


「あら?どうされました?」


子供達が手のひらを広げるので、アマテラスが見るとそこには石でできた風車や笛のようなものが握られていた。


「何ですか?これは………石?どうしたのですか?とても精巧な石ですね」


「拾ったんだ!綺麗でしょ!」


「最近こんなすごい石が多いんだよ!」


「これもこれも!」


そう言って男児は石で出来たカエルとバッタを見せる。

カエルとバッタに一瞬表情をしかめるが、すぐに表情は笑顔に戻る。


「とても精巧で綺麗な石ですね不思議な石ですね」


「そうなのー!あ!」


子供達は車椅子のロスカに目線を向ける。


「そこの車椅子の人もかわいいー!姫みたい!」


「喋らないのー?ツクヨミみたい!」


ツクヨミが目の前にいるのにも関わらず男児は話す。

それに対してツクヨミは表情を一切動かさない。


「こらこら。そういう言葉遣いは損をしますよ」


アマテラスが優しく諭す。

いや、アマテラスさんも根暗とか言ってましたよねとカグツチがジト目で見つめる。


「こっちの姫も動かないじゃん!」


男児と女児はロスカの後ろにいたラムチに目線を向ける。


「………この婆さんがまさか姫を!」


「ふふふ。そうよ。婆さんがこの姫の心を氷漬けにしちゃったのよ。」


「「………え?」」


子供達の顔が少し青ざめていく。


「あなた達もいい子にしたいと氷漬けにしちゃうわよー」


少しどすの利いた声で怖い顔をして話す。


「うわーん」


「逃げろー」


そう言って子供達は走り去っていく。

再び一同は進んでいく。


「みなさま。朝ごはんはまだですよね?」


「………え?」


自分たちにもその口調で話すの?とアマテラスを見つめる。


「まだですよね?」


カグツチは一旦疑問を飲み込んだ。


「………はい」


「そうですか。ではお食事をしてからお菓子としましょう!」


「おぉ~。朝ご飯から!いいですね!」


「まずはおすすめの店にご案内いたします」


そう言って少し大きめの平屋に到着する。

平屋の看板にはダシウマ蕎麦と書かれている。


「蕎麦です。ここのかけそばが美味しいのです」


そう言って暖簾をくぐっていく。


「大将様。お久しぶりです。5人ですが入れますか?」


店番のおばちゃんがアマテラスに気づき嬉しそうにする。


「あぁ。アマテラス様!入れるよ!何にする?」


「かけそば5ついただけますか?」


そう言って5人は蕎麦を待つ。

少しすると5人分の蕎麦が出てきたので啜る。

琥珀色のつゆに沈んだ蕎麦。

その上にネギとワカメがのったシンプルなかけそばである。

湯気が立っており、そこから芳醇な出汁の香りが漂ってくる。

そして一同は美味しい蕎麦を堪能し、店を出る。


「蕎麦美味しかったです!」


「それは良かったです。。私マガハラ1の蕎麦だと思っています。それでは次はスイーツとしましょう」


そう言って向かったのは、茶屋である。

朝というにも関わらずかなりの人が茶と菓子を楽しんでいた。


「こちらです。こちらは私一番のお菓子があるのです。持ち帰りをやってないからお店で食べるしかないのですが」


「おぉー!そのお菓子は!」


「どら焼きです。実は先祖代々ずーっと変わらぬ味を提供し続けてる老舗です。もちもちの食感がたまらないのです」


「おー!いいですね!」


店の前まで進むとアマテラスに向けて、黄色い声であふれかえる。

その声に対してにこやかに手を振っている。


「人気ですね」


「そんな事ありませんよ」


普段と違うキャラで謙遜するアマテラスをカグツチはジトッと見ている。


「大将様。やっていますか?」


「アマテラスちゃん!いらっしゃい!」


「お茶を5個と。どら焼きを7ついただけますか?」


「7?5人しかいないと思いますが?」


「たくさんあったほうがいいと思い」


「なるほど」


「は~い。」


「あと、よろしければいつもの部屋も………」


「はーい!喜んで!」


そう言って一同は店の奥にある個室に案内される。

個室に入ると先ほどまで聞こえていた店の奥喧騒が聞こえなくなる。

そうして全員入り、扉を閉めるや否や、アマテラスが大きく息を吐く。


「はー。疲れたー。王女も大変だわ。」


「やっぱり」


「やっぱりって何よ。」


「何でそんなキャラを作って」


「民は完璧な王女様を求めてるのよ!それにおしとやかな王女様って最高じゃない?頑張らないとでしょ!」


「そうですか。大変ですね。ここは?」


「あぁ。防音の個室よ!」


「防音?」


「ここならほかの民に見られることも聞かれることもないわ!」


「そうですか…………。っていうかスサノオ様とか兵士の方の前では普通に話してませんでしたか?」


「アイツラはいいのよ!どのみち比較的近い人間には隠し通せないから!」


「そうですか………」


「ほんと王女って疲れるわー」


そう言って嬉しそうにため息をついていると、ガチャリと個室のドアが空けられる。


「失礼します。お茶をお持ちしました。」


すると途端に王女モードに切り替わる。


「あらありがとうございます。そこに置いておいていただけると」




一方その頃城の中ではイズモがロスカ達が眠っていた寝室の前に訪れていた。

その表情には焦りが見られる。


「あいつらはどこに行ったんだ?こんな時に。アマテラス様とツクヨミ様もいない」


イズモはぐっと歯を食いしばる


「緊急事態だ。今外にいるのはマズい。チっ!まずはスサノオ様に報告だ」


そう言ってイズモは走り出した。

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