火の国編7話
次の日カグツチ達は同じく訓練場に来ていた。
スサノオがカグツチの目の前に達、遠くでラムチたちが訓練の様子をまた見ていた。
「よし。今日もまずは俺の動きを真似しろ」
「………はい」
そうして昨日と同じく動きを真似していく。
するとまだスサノオには遠く及ばないが、昨日の訓練時とは見違えるほどカグツチの動きは綺麗になっていた。
遠くで見ていたラムチ達も感心する。
「ほぉ~。昨日の夜、外から変な音と思ったけど、カグツチが練習してたのね」
昨日の夜、カグツチはラムチ達も部屋の前でスサノオの動きを真似して剣をゆっくりと振るっていた、
スサノオも驚く。
「驚いたな。昨日と比べかなり良くなっている。」
「ありがとうございます。」
「よし………。では次は目を瞑ったまま同じ動きをしろ」
「!」
「体に動きを叩き込まているか確認したい」
「………分かりました」
カグツチは目を瞑る。
そして先程と同じ動きを繰り返す。
しかし目を瞑ったからか先ほどの綺麗な動きよりはぎこちなく、足の位置もまばらになっている。
その事実は動いているカグツチ自身が気付いていた。
一通り型が終わり、カグツチは俯く。
その姿を見てスサノオが声をかける。
「視覚情報に頼りすぎているな。」
「すみません。」
「気にすることはない。昨日の今日で動きをマスター出来るはずがなかろう」
「………スサノオ様や………国王はこの動きを?」
「あぁ。体が覚えている」
「なるほど………。どうやって」
「反復だ。ひたすらの反復稽古で無意識の攻防を生み出すことが出来る。………昨日自主的に鍛錬したのだろ?」
「はい」
「その意気だ。だが昨日も言った通りリラックスも忘れるなよ」
「はい」
「整った心は人に第三の視覚を与える。そうすることで目を瞑ったままでも戦える」
「………え?」
「第三の視覚だ」
「それってどういうことですか?」
「まぁそれもそうか。」
カグツチは周りを見る。
「この世界には視覚以外にも情報が溢れている。耳で聴く音、肌で感じる感触、鼻で嗅ぐ匂い、口で感じる味。それらを総合すれば目を瞑ってでも戦える。」
「………なるほど」
「それを感じるにはリラックスが必要だ。平静でないものが、情報を感じることは難しいからな。」
「はい」
「感情的になることも大切だ。だが困ったらまずは深呼吸して落ち着け。そして今の状況を考える。それはすべての道に通ずる。」
「………分かりました。」
「よし。今日は目を瞑ったまま動きをひたすら反復していくぞ。」
「はい!」
そうして昨日と同じく猛特訓が始まっていく。
昨日と同じく反復するにつれて少しずつ少しずつ改善されていく。
それを見てスサノオが感嘆する。
(カグツチ。この短期間で凄く良くなっている。中々の才覚を持っている。これは才能故か………。血筋故か………)
スサノオは車椅子のロスカを見る。
(………使命故か)
そうして数時間ずっと続けていき、目を瞑ったままでもある程度様になる動きにはなってきた。
「よし。じゃあ実践だ。今日は我の直属の部下と手合わせしてもらう。ヤサカ!」
そういうと小柄で生意気そうな少年が入ってくる。
年にしてカグツチの少し下くらいの風貌である。
ニヤニヤと笑みを浮かべながらカグツチを見ている。
「どうも。ヤサカです」
その手には木刀が握られている。
「うちの最年少の兵だ。素晴らしい才覚を持っている。」
「いやー。照れるじゃないですか。そんなことありませんよ」
カグツチに嘲笑的な目線を向ける。
「まぁどっかの護衛が出来ない護衛騎士様よりは才覚はあると思いますけどね。」
「………」
「昨日聞いちゃったんですよね。自分の責務も全う出来ない騎士が火の国の次期国王候補だって!しかも!イズモさん不意打ちで負けたらしいじゃないですか!今この場にはいないですけど!なっさけないですね!こんなのに負けるだなんて。それにしたって不意打ちはないですよ!恥ってもんがないんですかね?あぁー。責務満たしてないのにのうのうと生きてる人に責務なんてないかぁー。アハハハハ」
嬉々としてヤサカは話し続けている。
カグツチは特に何も言い返さない。
「ヤサカ。やめろ」
スサノオが静かに怒る。
「正論ですよ!正論!事実そいつも何も言い返せてないじゃないですか!」
「その癖はお前の悪癖だ。若いうちは目を瞑るが、早く直せ」
ヤサカはスサノオを言葉を全く聞いていない。
「じゃあ早速組手始めますか!あ、木刀見ますか?小細工なんてしてないですよ!あんたと違って小細工なしでも余裕で勝てるから!あー!小細工しないと勝てない人にそれ言うのは残酷ですね!ごめんなさーい!」
「大丈夫です。胸をお借りします。」
「………つまんな。もっと顔真っ赤にしろよ。まぁすぐ顔真っ赤になるんだけどね」
そう言って、2人は離れ剣を構える。
「よし!はじめ!」
「ハハッ!」
そう言って軽やかにヤサカが接近する。
(!速い!)
そうしてあっという間にカグツチの眼の前まで接近したヤサカは、スサノオから習ったのとかなりにたステップで素早く剣を振るっていく。
スサノオと違いかなり荒削りなステップではあるが、その分スピードに乗っている。
カグツチはその攻撃を防いでいく。
「あぁ!多少は心得があるんだ!でもまだまだ遅い!」
そう言うとヤサカのスピードは更に上がる。
それを何とかカグツチは防いで行く。
「ほらほら遅い遅い!」
カグツチは攻防のさなか考える。
(………確かに速い。物凄く。でもこれなら………)
そう言って攻防の最中目を瞑る。
「は?」
ヤサカは目を瞑ったことに気付き笑いながらも少し怒りのトーンで声を上げる。
「何だ?何だ?諦めたの?それとも舐めプ?舐めプじゃないか!諦めちゃったかー!これだから半端者は!」
カグツチは耳を澄ませる。
(相手の動きはかなり大振りだ。故に予備動作が大きい。)
ヤサカから大振りによる服の音、踏み込みの音などが大きく響いていた。
続いて肌も澄ませる。
大振りにより大きく空気がカグツチの体に当たっている。
(これなら………)
カグツチは剣で受け止めるのをやめて躱し始める。
「!」
ヤサカは怒りで感情を歪ませる。
「舐めんな!!!」
そう言ってさらに大振りで剣を振るっていくが、カグツチには躱され一切木刀は当たらない。
(クソ!クソ!)
ヤサカは思い出す。
(あのクソ雑魚イズモがほざいてた。基礎を固めろって!ふざけんな。俺は誰よりも速いんだ!何が基礎だ!お前はこの雑魚に負けたんじゃねえか。ふざけんな!ふざけんな!ぶっ倒して証明してやる!)
そう言ったカグツチに勢いよく木刀を振るうも、腹に強烈なカウンターを貰ってしまう。
「がっ」
そうして一瞬動きが止まったところに、すかさず木刀を振るう。
木刀はヤサカに直撃しヤサカが倒れる。
「そこまで!」
スサノオの大きく掛け声をかける。
カグツチはヤサカに近づき手を差し伸べる。
ヤサカは目を逸らしている。
「凄く速くて強かったです。ありがとうございました。」
「………」
ヤサカはそっぽを向いて座ったまま無視している。
「自分が言えた口ではないのですが、多分大振りで動きが見えやすくなってるんだと思います。お互い頑張りましょう」
ヤサカの顔がみるみる赤くなっていく。
そして目には涙が浮かんでいく。
「く、くそ」
そして立ち上がり走り去っていく。
「覚えてろよーーー!!!」
スサノオがカグツチに近づいていく。
「すまない。後で注意しておく」
「いえ。気にしていないです。」
「ヤサカは才能はあるが、少し精神が熟しきってはい。これで成長のきっかけとなればいいが」
「なるほど」
「しかし成長著しいな。次はイズモ達とも組手をやってもらうとしよう」
「はい。是非お願いします。」
そうして訓練は続いていく。
そして翌日、その翌日も訓練が続き少しずつ少しずつカグツチは成長していった。
肝心の組手だがイズモとの組手は思った以上にカグツチが一本を取れる確率は低く10本に1本程度であった。
しかし倒れても実直に向かってくるカグツチを見て、少し微笑んでイズモも対応していた。
そんな日の夜。
スサノオはろうそくの光しかない、薄暗い執務室で座る
そしてカグツチとの訓練を思い出し、少し微笑みながら各種書類の確認を行っていた。
その時扉が何者かに空けられる。
見るとイズモが近づいてくる。
「スサノオ様!」
「………何だ?」
イズモはスサノオに近づき、報告する。
「報告します。本日マガハラ武士団の一人が石にされて発見されたとのことです!」
「………何?兵が石化しただと?」
スサノオの表情は険しくなっていった。




